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「ウイグル人が自ら迫害を否定するプロパガンダ動画」はどのようにTwitterやYouTubeで拡散されているのか?


中国の新疆ウイグル自治区では少数民族のウイグル人に対する迫害が行われていると指摘されていますが、中国当局はこれを否定しています。そんな中、非営利の報道機関であるProPublicaがニューヨーク・タイムズと共同で、「中国当局はウイグル人が迫害を否定する数千もの動画を撮影し、TwitterやYouTubeで拡散している」と報じました。

How China Spreads Its Propaganda Version of Life for Uyghurs — ProPublica
https://www.propublica.org/article/how-china-uses-youtube-and-twitter-to-spread-its-propaganda-version-of-life-for-uyghurs-in-xinjiang

How China Spreads Propaganda About Uyghurs in Xinjiang - The New York Times
https://www.nytimes.com/interactive/2021/06/22/technology/xinjiang-uyghurs-china-propaganda.html

ProPublicaのジャーナリストであるJeff Kao氏が取り上げた「ウイグル人が迫害を否定する動画」の1つがこれ。

1/ It started in late Jan. when we noticed odd videos like this one on YouTube and Twitter.

Today, my latest for @propublica and @nytimes uncovers one of the most elaborate efforts to date by the CCP to deny its ongoing oppression of Uyghurs in Xinjiang.

How we got here: pic.twitter.com/1SvwRoEEOM

— Jeff Kao (@jeffykao)


「職業技能教育訓練センター」の元生徒であるという経営者の男性は、アメリカのマイク・ポンペオ前国務長官がウイグル族の迫害について「ジェノサイド(集団虐殺)」だと認定したことに触れ、ポンペオ氏の発言はナンセンスであると主張。


男性は訓練センターで中国の法律や技能を習得し、過激な宗教的思想を取り除くことができたそうで、今では店を経営してお金を稼いでいるとのこと。


動画の最後には、「今、私たちは自由です。私たちの生活はどんどんよくなっています。共産党や政府は私たち、そして生活を気にかけてくれます。人々はもはやポンペオ氏の言うことを信じません。彼はうそつきです」と述べました。


上記と類似した動画が、繊維会社の労働者やタクシー運転手、80代の老人などのさまざまなウイグル人によって撮影・投稿されており、動画に登場するウイグル人はそろって「私たちは自由です」という発言をしているとのこと。新疆ウイグル自治区に住む人の生活を垣間見せるように意図されたこれらの動画は、中国当局によるプロパガンダ目的で撮影されたとみられています。ほとんどの動画には公式の宣伝であることを示すロゴやテロップがないものの、ProPablicaはニューヨーク・タイムズと共にこれらの動画を調査し、中国当局によるプロパガンダキャンペーンがどのようになっているのかを探りました。

ProPublicaが調査したところによると、新疆ウイグル自治区に住む人々の自撮りという形式で投稿される動画のほとんどが中国語またはウイグル語であり、全て基本的な形式に沿った内容になっているとのこと。基本的な形式は、まず動画投稿者が自己紹介を行い、続いて自分の生活がどれほど豊かで幸せなものであるかを訴え、最後に新疆ウイグル自治区に抑圧的な政策が存在しないと主張するというもの。Kao氏が取り上げたウイグル人店主の動画も、同様の形式に沿ったものと言えます。

また、複数の動画で同じフレーズが多用されていることもProPublicaは指摘しています。たとえば、「土生土长(その土地で生まれ育つ)」という言葉は、YouTubeやTwitterで発見されたポンペオ氏を非難する2000本以上の動画のうち、実に280本以上に登場するとのこと。また、「胡说八道(根拠のないデタラメを言う)」という言葉やそのバリエーションは、ポンペオ氏の発言を否定する600本以上の動画に登場していたそうです。


ProPublicaは、こうしたプロパガンダ動画の1つを投稿した中古自動車販売店の店主に電話で接触し、動画は地元のプロパガンダ当局が作成したという証言を得たとのこと。店主からは関係する役人の電話番号を聞き出すことに成功したそうですが、その番号に電話をかけても応答はなかったとProPublicaは述べています。

YouTubeやTwitterは透明性を促進するため、政府に関連するアカウントや投稿にラベル付けを行っていますが、新疆ウイグル自治区の人々が登場するこれらの動画にはタグ付けがされていません。この理由についてProPublicaが問い合わせたところ、YouTubeは「動画はコミュニティガイドラインに違反していません」と回答し、Twitterは動画に対するコメントを避けたとのことです。


一連のプロパガンダキャンペーンは、ポンペオ氏が2021年1月19日に「中国が新疆ウイグル自治区でジェノサイドを行っている」と主張した後に起こりました。ポンペオ氏の主張が報じられてから数日後には、中国共産党の機関誌・人民日報が所有する地域のニュースアプリ「石榴云(Pomegranate Cloud)」にポンペオ氏を批判する動画が投稿され始めたとのこと。そして中国国内のソーシャルメディアなどに転載された後、TwitterやYouTubeなどの国際的なソーシャルメディアにも投稿されたとProPublicaは主張しています。

ProPublicaやニューヨーク・タイムズの調査によると、Twitterではプロパガンダ動画が300以上のアカウントで共有されていますが、これらのアカウントは一般のユーザーではないとみられています。以下の「李曉桐」というアカウントがウイグル人の動画を共有した投稿と……


「盧祉丞」というアカウントが投稿したものは、末尾の5文字以外が共通しています。こうした文字列はウイグル人の動画を共有したアカウントの4分の3で見られたそうで、末尾の数文字だけをランダムな文字列に置き換えることにより、スパムだと判定されるのを避けているとのこと。


他にも、全てのTwitterアカウントがここ数カ月で登録されたものであり、ほとんどが誰もフォローしておらず、フォロワー数も5人未満だったとProPublicaは指摘。ツイートの大部分が北京時間の10時~20時に集中していたことや、YouTubeに動画が投稿された30分以内にTwitterアカウントが反応する割合が4分の3を超えた点から見ても、これらのアカウントは中国当局によって操作されていたとみられています。

なお、TwitterはProPublicaとニューヨーク・タイムズが問い合わせる前の2021年3月と4月に、これらのアカウントの多くを一時凍結しました。Twitterによると、これらのアカウントはプラットフォームの操作とスパムに関するポリシーに違反していたとのことです。

中国当局によって投稿されているとみられるプロパガンダ動画は、ジェノサイドを否定するものだけではありません。中国外交部の報道官である趙立堅氏が共有した以下の動画では、ウイグル人女性が中国当局による強制労働を否定し、「私は5つの温室を持っていて、誰も温室で働くように強制してきません」と述べています。この動画は元々、国営新聞の環球時報によって中国のショートビデオアプリ・快手に投稿されたものだとのこと。

Listen to what local people in #Xinjiang say about the "forced labor". Hotan resident: "I have 5 greeehouses and no one forces me work in greenhouses." pic.twitter.com/6i6eWC1mbc

— Lijian Zhao 赵立坚 (@zlj517)


また、ウイグル人を強制労働させていると指摘された中国企業との取引を停止したアパレル大手のH&Mに対し、「新疆ウイグル自治区産の綿を使っていながら新疆ウイグル自治区の悪口を言う」と非難する動画や、海外亡命したウイグル人活動家の家族が、「あなたが悪い外国人にだまされないことを祈っています」と訴える動画なども投稿されています。

孫娘がプロパガンダ動画に出演して自分に訴えかけてきたというウイグル人活動家のRebiya Kadeer氏は、「一部の人々はこれらのビデオを見て、ウイグル人が幸せな生活を送っていると信じるでしょう」「彼女らがこの動画で言っていることは真実ではありません。彼女らは自分が真実を言っていないと理解していますが、中国政府が彼らに言わせたいことを言わなければなりません」とProPublicaに語りました。

これらの動画を投稿しているYouTubeチャンネルの総再生数は48万回を超えているとのことで、その他のプラットフォームも含めればより多くの再生回数を稼いでいることになります。ProPublicaの電話インタビューに応じたポンペオ氏も、自身の友人や家族がこれらの動画をオンラインで発見し、ポンペオ氏に送ってきたことがあると認めています。それぞれの動画は雑なものに見えますが、ポンペオ氏は「多くのメディアにアクセスできない場所では、それらのビデオが繰り返し再生され、定着する能力を持っています」と指摘し、影響力を甘く見るべきではないとの見解を示しました。

なお、ProPublicaとニューヨーク・タイムズの記事が公開された後、YouTubeはウイグル人のプロパガンダ動画に関連するいくつかのチャンネルを削除したとのこと。広報担当者のIvy Choi氏によると、チャンネルは新疆ウイグル自治区の動画をアップロードする際に「協調して行動した」とのことで、プラットフォームで影響力を行使する試みとの戦いの一環としてチャンネルを削除したと述べています。また、スパムや欺瞞行為に関するポリシーに違反したとして削除されたチャンネルもあったとのことです。

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