人が暗闇を恐れるのは光に対する脳の反応が関係しているかもしれない
暗闇に対する恐怖心は子どもにおいて一般的で、怖い話を聞いた後やホラー映画を見た後などに「暗闇」が怖いと感じ、電気を付けっぱなしで寝た経験のある人も多いはず。脳と心の健康を専門とするモナッシュ大学ターナー研究所が新たに、人が暗闇を恐れるのは「光に対する脳の反応」が関わっているという研究結果を発表しました。
Afraid of the dark: Light acutely suppresses activity in the human amygdala
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0252350
Afraid of The Dark? Blame Your Brain, Not Monsters Under The Bed
https://www.sciencealert.com/small-study-on-the-brain-s-fear-center-gives-hints-on-why-some-of-us-are-afraid-of-the-dark
新たな研究は、情動反応の処理と記憶に主要な役割を持つと示されている脳の一部・扁桃体が光から受ける影響に関するもの。扁桃体は不安や恐怖などの感情によって活発化することは知られてきましたが、今回の研究では光が扁桃体の活動に抑制効果をもたらすことが示されています。
ターナー研究所に所属するエリーゼ・マクグラシャン氏らが行った研究は、部屋の光量を変えた際の扁桃体の活動をfMRIで記録するというもの。マクグラシャン氏らは被験者23人の脳の状態をfMRIで測定しながら、30秒間隔で「薄暗い(10ルクス)」「明るい(100ルクス)」「暗闇(1ルクス未満)」と部屋の明るさを切り替えるという実験を行いました。
30分に及ぶ測定の結果、「暗闇」条件下に比べて、「薄暗い」条件下では扁桃体活動がわずかに抑制され、「明るい」条件下においては扁桃体活動が大幅に抑制されることが観察されました。さらに光量の変化に応じた活動量の増減に加え、明所では扁桃体と腹内側前頭前皮質の間に機能的な接続が存在するという有意な兆候も確認されました。
今回の研究結果は、言い換えれば光は脳の恐怖管理機能を稼働させ続ける効能を有する可能性があるとのこと。マクグラシャン氏らは「今回観察された効果が恐怖に関連するネガティブな感情自体を軽減したりネガティブな感情の処理を促したりした結果、『光が気分を良くする』という現象に一役買っているかもしれません」と記しています。
今回の研究を報じたサイエンス系ニュースサイトScience Alertによると、光量と脳の活動に関わりがあることは十分に立証されており、光量の変化が入眠時刻や起床時の覚醒度だけでなく、「気分」にも影響を与えることが知られているとのこと。この現象を利用して日照量の少なくなる冬にうつ病を発生させる季節性情動障害ではLED白色光を浴び続けるという光療法が広く採用されています。
研究チームによると、光が扁桃体に与える影響は、光から得た電気的信号を眼から脳の各部位に伝達する内在性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)がカギになっている可能性があるとのこと。研究チームは今後の研究ではipRGCと扁桃体の間の相互作用に焦点を当てる予定だと語っています。
・関連記事
月の満ち欠けが人間の睡眠時間に影響を及ぼすという研究結果 - GIGAZINE
夜中にスマホの光を浴びたマウスはうつ病のような症状を見せることが判明 - GIGAZINE
TVや電気のつけっぱなしで夜の睡眠中に光を浴びることが体重増加を引き起こす可能性 - GIGAZINE
スマホの「夜間モード」は逆効果で眠りを妨げてしまうかもしれない - GIGAZINE
24時間明るい「白夜」で生物の睡眠サイクルはどんな変化を遂げているのか? - GIGAZINE
睡眠をもたらす「メラトニン」についてあまり知られていないことまとめ - GIGAZINE
・関連コンテンツ