夜中にスマホの光を浴びたマウスはうつ病のような症状を見せることが判明
「PCやスマートフォンのディスプレイから発せられるブルーライトを夜間に浴びると悪影響が出る」という可能性が近年指摘されています。中国科学技術大学の研究チームが、夜にマウスに光を浴びせるとうつ病のような症状を見せるようになることを確認し、そのメカニズムを解明したと報告しています。
A circadian rhythm-gated subcortical pathway for nighttime-light-induced depressive-like behaviors in mice | Nature Neuroscience
https://www.nature.com/articles/s41593-020-0640-8
Staring at a phone screen before bed can cause depression | Daily Mail Online
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-8377011/Staring-phone-screen-bed-make-depressed.html
Staring at your phone at night could be linked to depression, study finds | The Independent
https://www.independent.co.uk/life-style/gadgets-and-tech/news/phone-night-depression-mental-health-light-a9538801.html
光は動物にとってさまざまな生理機能を調節するための要素であり、特に概日リズムは光によって形成されるといわれています。そのため、寝る前にベッドの中でスマートフォンを眺めるなど、夜間に強い光を浴びてしまうと概日リズムに乱れが生じ、メンタルヘルスに悪影響を及ぼすと指摘されています。
そこで、中国科学技術大学の研究チームはマウスに対して、スマートフォンから発せられるものと同じようなブルーライトを夜間に1日2時間照射する実験を行いました。すると実験開始から3週間が経過した段階で、マウスにうつ傾向を示す行動が見られたとのこと。
研究チームは、マウスの網膜にある「メラノプシン」と呼ばれる光受容器から、外側手綱核と呼ばれる脳領域を経て、前脳にある側坐核という脳領域につながる神経経路を特定しました。外部手綱核はセロトニンを、側坐核はγ-アミノ酪酸(GABA)を神経伝達物質として産生する脳領域で、うつ病発症に深く関わっているとされています。
研究チームが特定した神経経路は概日リズムによって活性の強さが変化し、日中よりも夜間に浴びた光に強く反応することがわかりました。そこで、マウスの神経経路の伝達を阻害した上で、同じようにブルーライトを照射する実験を行ったところ、マウスにうつ傾向を示す行動が見られなくなったとのこと。このことから、「夜間の光に強く反応する神経経路がマウスのうつ傾向を生むメカニズムになっていた」と研究チームは主張しています。
また、今回の研究結果から研究チームは、「昼間に光を浴びることは抗うつ作用があると知られていますが、夜に過度の光にさらされると、うつ症状が出る可能性がある」と述べ、「マウスが光から受ける影響は昼と夜で大きく異なる」と論じています。さらに研究チームは、今回のメカニズムが、仕事で夜遅くまで明るいところで働き続けるとメンタルヘルスに悪影響が出る原因である可能性を示唆しました。
ただし、研究チームは「今回の実験結果はあくまでもマウスの実験で示されたものであり、人間にそのまま当てはめるには注意が必要」と述べ、「マウスに見られたものと同じ神経経路とメカニズムが人間にも存在するかどうか」を将来の研究課題としています。
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