映画

動物はどのように新型コロナウイルスに感染するのか?なぜヒトと症状が違うのか?を解説するムービー


ネコやトラが新型コロナウイルスに感染する事例が報告されており、さらにはミンクからヒトに新型コロナウイルスが感染した事例も確認されています。そこで気になるのは、なぜ「動物からヒトにウイルスが感染するのか?」や「新型コロナウイルスは動物にとって危険なものではないのか?」という点です。これらの回答に専門家が答えるというムービーを、VoxのYouTubeチャンネルが公開しています。

Why tigers get coronavirus but your dog will be fine - YouTube


ニューヨークにあるブロンクス動物園の「ナディア」というマレートラが、新型コロナウイルスの検査で陽性と判定されました。報道では新型コロナウイルスに感染した飼育スタッフが感染経路であるとされています。


ナディアのほか、ナディアの姉妹である同じマレートラのアズール、2頭のアムールトラ、3頭のライオンで、乾いたせきなどの症状が確認されたと報じられました。


記事作成時点でナディアはすでに新型コロナウイルス感染症から完治していますが、この事例は新型コロナウイルスが人獣共通感染症であることを広く知らしめるキッカケとなりました。


ナディア以降も複数の動物が新型コロナウイルス検査で陽性と判定されており、2020年4月にはパグが新型コロナウイルス検査で陽性判定となったと報じられ……


2020年5月にはネコからネコに新型コロナウイルスが感染することが確認されました。パグは詳細な検査により最終的に陰性と診断されていますが、複数の事例から動物が新型コロナウイルスに感染することが広く知られるようになり、ペットの飼育放棄が相次ぐ事態にまで発展しました。


ここで浮かぶ疑問は「ペットはどのようにして新型コロナウイルスに感染するのか?」という点です。


この問いに答えたのが、野生生物保護学会(WCS)で獣医学プログラムのディレクターを務め、獣医学者や動物の感染症の専門家としても知られるウィリアム・カレシュ氏。カレシュ氏は「我々の知るほとんどの動物の場合、新型コロナウイルスに感染する可能性があるものの、深刻な症状には至りません」と語りました。


インタビュアーが「私は犬を飼っているのですが、犬の心配をする必要はありますか?」と問いかけると……


「いいえ、犬について心配する必要はありません。犬の感染は極めてまれなケースで、犬は新型コロナウイルスに感染するものの、体内でウイルスが増殖することはあまりないようです。外出自粛により家の中に長く飼い主がいるため、偶然犬が新型コロナウイルスを持っているという事例もあります」とカレシュ氏。


さらに、カレシュ氏は「とても重い症状が確認された犬に新型コロナウイルス検査を実施したところ、ウイルスを保有しているものの感染症を発症しているとは診断されませんでした」と語っています。続けて、「ただし、犬よりもネコの方が新型コロナウイルスに感染するリスクが高いようで、ネコからネコに感染したという事例も存在します。しかし、ネコの場合も犬と同じように人間のような重症をきたすケースはありません」と、動物は基本的に新型コロナウイルスに感染して重症化することはないと述べました。


実際、アメリカにおける感染症対策の総本山であるアメリカ疾病予防管理センター(CDC)も、「現時点では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こすウイルスの拡散に、動物が重要な役割を果たすという証拠はありません」と記しています。これらの情報をまとめて、ムービーは「ペットの新型コロナウイルス感染症について心配する必要はなくなったはずです」と語っています。


しかし、新型コロナウイルスが人間から動物に伝染する事例は複数存在しているため、研究者はそのメカニズムを詳細に理解し、「ウイルスが体内に侵入した場合、最も影響を受けやすい動物は何か?」を解明しようとしています。


新型コロナウイルスが動物の体内に侵入すると、人体の標的細胞のタンパク質受容体であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)と、ウイルス表面のスパイクタンパク質が結合することで発症します。新型コロナウイルスのスパイクタンパク質とACE2が結合しやすいほど、その動物が新型コロナウイルスに感染する可能性が高いということになります。


動物ごとに細胞内のACE2は微妙に異なるため、すべての動物が等しく新型コロナウイルスに感染するわけではありません。新型コロナウイルスの場合、人間・ラクダ・ネコ・センザンコウ・コウモリの細胞と結合する可能性が高いものの、ラット・ネズミ・ニワトリ・モルモットといった動物の細胞と結合する可能性は低いです。


カレシュ氏は「例えば、豚は新型コロナウイルスに感染しても重症化することはありませんが、細胞内のACE2が新型コロナウイルスと結合することは確認されています」と語り、多くの動物が新型コロナウイルスに感染しても重症化しないとしています。


続いて、新型コロナウイルスは武漢の卸売市場で発生したという説があるように、「動物からヒトにウイルスが感染した」と考えられている点について。


カレシュ氏は「今のところ、新型コロナウイルスの起源が何かはわかりません。しかし、新型コロナウイルスとよく似たウイルスは多く存在しており、これらは新型コロナウイルスの兄弟やいとこのようなものです」と語りました。


そもそも、ウイルスの多くが動物由来のもので、例えば風邪はラクダが由来です。インフルエンザの多くは豚や鳥に由来しており、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)はチンパンジーからヒトに感染したもの。そして、エボラウイルスSARSコロナウイルスマールブルグウイルスニパウイルス・新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はコウモリ由来とされています。


多くの感染症を引き起こすウイルスがコウモリからヒトに感染している点について、カレシュ氏は「コウモリには1400種類以上の種が存在しているため、コウモリ全体でみると多くのウイルスを保有しているといえます。また、コウモリは遺伝的にヒトとそれほど遠くない関係にあるため、コウモリが感染するウイルスがヒトも感染しやすいという特徴があります」と語りました。


インタビュアーが「なぜ新型コロナウイルスのようなウイルスが動物からヒトに感染する際に、元の宿主動物にとってはそうではないのに、ヒトにとっては致命的なものとなるのでしょうか?」と問いかけると……


カレシュ氏は「動物は体内にウイルスや細菌を保有しており、それと共に何千年も暮らしてきました。長い年月の中で動物の体内で進化したウイルスが、他の動物に感染した際に、まったく異なる反応をみせることがあります」と語りました。


過去100年間で人獣共通感染症の数は増加し続けています。平均すると、人獣共通感染症は4カ月に1つのペースで新しいものが発生しており……


その75%が動物由来のものです。


カレシュ氏は「人獣共通感染症はヒトと動物が共生する長い歴史の中で確認されてきたものです。そして、その中の一部を我々は新興感染症と呼び、新型コロナウイルスもそのひとつであると言えます。こういった新興感染症は今後より一般的になっていくでしょう。なぜなら、我々人類が自然を開拓し、より多くの野生生物と遭遇する機会が今後も増えていくはずだからです」と語り……


最後に「感染症がパンデミックになるまで待たず、すぐに対処する必要があります」と述べています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
新型コロナウイルス初の「動物からヒトへの感染事例」が報告される - GIGAZINE

ネコからネコに新型コロナウイルスが感染することが確認される、症状は出ないため「静かな中間宿主」となる可能性も - GIGAZINE

ペットから新型コロナウイルスに感染する可能性はあるのか?飼い主が知っておくべきポイントまとめ - GIGAZINE

動物園のトラで新型コロナウイルスの感染が確認される、無症状の飼育員から感染か - GIGAZINE

「ネコが新型コロナウイルスに感染した」というニュースに慌てるのはまだ早いとの指摘 - GIGAZINE

in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article here.