サイエンス

運動するタイミングによって体内時計を意図的にずらせる可能性が実験で示される


ほとんどの生物には「体内時計」あるいは「概日リズム」と呼ばれる、24時間周期で変動する生理現象が存在します。体内時計によって、生物は外部の明暗のサイクルに対応して行動が活動あるいは休止し、カロリー消費を調節して空腹になったりしますが、この体内時計が運動によって進んだり遅れたりすることが、マウスを使った実験で明らかになりました。

Time of day dependent effects of contractile activity on the phase of the skeletal muscle clock - Kemler - - The Journal of Physiology - Wiley Online Library
https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1113/JP279779

Study: The timing of exercise could help reset a misaligned body clock
https://www.inverse.com/mind-body/realign-body-clock-with-exercise

マウスは夜行性で、外が暗い時に活動期を迎え、外が明るい時に休止期を迎えます。フロリダ大学の研究チームは、30匹のメスのマウスに1時間の運動を、「休止期の途中」「休止期の終わり頃」「活動期の途中」の1日3回実行させました。

すると、休止期の途中で運動をしたマウスでは、体内時計がおよそ100分ほど進んだことが判明。逆に、休止期の終わり頃に運動したマウスは体内時計に遅れが生じました。そして、活動期の途中で運動したマウスには体内時計の狂いがみられなかったそうです。

by sualk61

実際に筋肉の収縮によって体内時計にズレが生じるかどうかを確かめるため、研究チームは、体内時計を形成するタンパク質「BMAL1」に注目。マウス体内のBMAL1量が最も多い時と少ない時に、マウスの筋肉を電気的に刺激して運動を模倣する実験を行いました。

すると、BMAL1量がピーク値を示した時に刺激を受けると体内時計に平均27.2分、BMAL1量が最低となるトラフ値を示した時に刺激を受けると平均64.6分の遅れが生まれたことが判明。また、BMAL1がピーク値からトラフ値に減っている途中に刺激を受けた場合、体内時計がおよそ49.8分進んだことがわかりました。

今回の実験結果はあくまでもマウスのものですが、BMAL1は人間にも存在する因子であることから、人間であっても同じ結果が出る可能性があります。運動で意図的に体内時計をずらすことができれば、たとえば徹夜が続くことで昼夜逆転してしまった生活リズムを戻したり、海外旅行による時差ボケを修正したりすることが可能になるかもしれません。


フロリダ大学の研究員であるクリストファー・ウルフ氏は「この研究は、運動が体内時計に及ぼす影響を示すもので、非常に重要です。体内時計と運動の関係が人間にも当てはまる場合、たとえば夜勤の労働者が運動で体内時計を意図的にずらすことも可能になります。また、規則正しい睡眠ができなくなる『概日リズム睡眠障害』の治療法としても応用できるかもしれません」と述べています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1i_yk

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