強力な差別対策を実施しているAirbnbで人種差別が発生している原因とは?
民泊サービスのAirbnbは、サービス内での差別を撲滅するために専門チームを常設しています。しかし、テクノロジー関連のライターであるハイデン・フィールド氏は、Airbnb内で人種差別が発生している現状を指摘しています。
Can an AI Algorithm Mitigate Racial Economic Inequality? An Analysis in the Context of Airbnb by Shunyuan Zhang, Nitin Mehta, Param Vir Singh, Kannan Srinivasan :: SSRN
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3770371
How Airbnb failed its own anti-discrimination team—and let racial disparities slip through the cracks
https://www.morningbrew.com/emerging-tech/stories/2021/06/15/airbnb-failed-antidiscrimination-teamand-let-racial-disparities-slip-cracks
Airbnbは差別を「会社の前に立ちはだかる最大の課題」と位置付け、差別対策専門チームを常設し、差別の撲滅に取り組んでいます。また、2016年からAirbnbのシニアアドバイザーを務めるローラ・マーフィー氏は「Airbnbは、人種に基づく差別に対して、シリコンバレーのどの企業よりも多くのことを行っています」と述べ、Airbnbの差別撲滅に対する取り組みをアピールしています。
しかし、カーネギーメロン大学やハーバード大学の研究チームが、「Airbnbの宿泊料金自動調整サービス『スマートプライシング』が人種間の経済的不平等の緩和に寄与しているかどうか」を調査した結果、スマートプライシングを利用した白人と黒人の収益差は71%減少したものの、黒人の貸し手(ホスト)のスマートプライシング採用率が白人のホストよりも41%低く、黒人ホストと白人ホストの全体的な収益差は20%拡大していることが明らかになりました。
また、研究チームによると、黒人のホストはスマートプライシングの導入によって年間866ドル(約9万6000円)の収益を逃した可能性があるとのこと。フィールド氏は「つまり、黒人のホストは2015年~2020年の6年間で、5196ドル(約58万円)の収益を逃したということです。これは、アフリカ系アメリカ人の純資産の中央値の5分の1に相当します」と述べ、Airbnbでは黒人ホストと白人ホストの間で人種による差別が生じていると主張しています。
フィールド氏は強力な差別対策体制を築いているはずのAirbnbで人種差別が生じている理由について、Airbnbの差別対策チームに聞き取り調査を実施しました。その結果、差別対策チームにはフルタイムの従業員が5人しかいないことが判明。加えて対策チームの1人は「私たちは素晴らしいチームです。しかし、人員不足によって多くのことに取り組むことができていません。もっと多くのメンバーがいれば素晴らしい仕事をすることができますが、そうではありません。私たちはかろうじて水面に浮かんでいますが、沈没寸前です」と述べており、差別対策チームが深刻な人員不足に陥っていることが明らかになりました。
さらに、差別対策チームの1人は、Airbnbが2020年にマーケティングに6億3000万ドル(約700億円)、製品開発に20億ドル(約200億円)を投じたことを挙げ、「明らかに、Airbnbは差別対策チームに資金を投じる余裕がありました。この人員不足は、Airbnbによる人為的なものです」と主張しています。
Airbnbの広報担当者は、「パンデミックの間、Airbnbは会社全体での採用を一時停止していました。しかし、2021年1月には差別対策チームへの求人活動を再開し、最近新しいメンバーを獲得しました」と述べています。一方で他のAirbnb社員からは「私たちは、差別対策チームが求められていることの大きさと、投じられている資金の少なさを知っています。その両方の観点から、差別対策チームに参加するのは難しいです」という声も挙がっています。
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