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偽の部屋の写真・偽のレビューを使って粗末な部屋に宿泊させお金をむしりとる詐欺行為がAirbnbで横行していた

by Sidekix Media

現地の人から部屋を借りることができるAirbnbはホテルより安く、また地元に密着した体験ができるとして人気を集めていますが、一方で部屋に無断でカメラが設置されていたという苦情があったり、都市部に悪影響を与えたりといった問題も指摘されています。そして新たに、Airbnbを利用した詐欺行為がアメリカの複数の都市で横行していたという実態が明らかになっています。

I Accidentally Uncovered a Nationwide Scam on Airbnb - VICE
https://www.vice.com/en_us/article/43k7z3/nationwide-fake-host-scam-on-airbnb

ライターのアリー・コンティさんは2019年の夏、シカゴ旅での宿泊にAirbnbを利用しました。「ベッキー&アンドリュー」というカップルが貸し出す部屋は、プラットフォーム上では広々として光に満ちた美しい写真が掲載されていたとのこと。

しかし、旅行中、チェックインの10分前に貸し主であるアンドリューという男性から電話がかかってきました。アンドリューさんは電話口で、コンティさんが借りる予定だった部屋の配管に問題があったことを説明。コンティさんが「今から別のホテルを見つけるのは大変だ」と考えているのを見透かすように、アンドリューさんは、修理の間、別の部屋を提供できると提案してきました。悩んでいるコンティさんに、アンドリューは代わりの部屋が予約の部屋の3倍の大きさであると付け加えました。実際にアンドリューさんが送ってきた「代わりの部屋」の写真は、スマートフォン上で見ると素晴らしいものでした。


慣れない土地で限られた時間の中で新しい宿を見つけるのは難しいと判断したコンティさんは、アンドリューさんの提案を受け入れました。この時、条件として、自分たちが代わりの部屋を受け入れることを書面として残してもらったそうです。アンドリューさんとコンティさんは、最終的にAirbnbのアプリを使用して予約の変更を行ったとのこと。

しかし、実際に代わりの宿に向かってみると、借りた部屋は「誰かの家」というよりは安宿のような雰囲気で、写真とは全く違うものでした。キッチンの棚にはしょうゆが一瓶入っているだけ、ベッドルームには奇妙な配置で複数のベッドが並び、壁には穴が開いていたとコンティさんは述べています。しかし、旅の初日で疲れていたコンティさんは、そのまま宿に泊まることにしました。翌日になりアンドリューさんから「まだ配管は直ってないけど、今泊まっている代わりの宿には、明日から別の人が来るから」と告げれたコンティさんはなすすべもなく、別のホテルを予約して移ることにしました。


その後、払い戻しについてアンドリューさんに連絡を取るも返信はなし。仕方なくAirbnbに連絡すると、マネージャーと名乗る人とやりとりを数日をかけて行った後に、宿泊代金1221.2ドル(約13万円)のうち399ドル(約4万3100円)のみ返金を受けたとのこと。なお、この料金の中にはAirbnbが受け取ったサービス料金は含まれていません。

ベッキー&アンドリューのカップルは、予約時のやり取りで「Airbnbがアルゴリズムを変更したからレビューは星5つの評価をしてほしい」とメッセージを送ってきており、コンティさんは一連の出来事が単なる「不運」ではないのでは、という思いを募らせました。旅を終えてからコンティさんがじっくりとベッキー&アンドリューカップルの部屋のレビューを読んでいると、肯定的なレビューの中に奇妙な点を見いだしたとのこと。

例えば、ケルシーとジャンというカップルは、ベッキー&アンドリューに対し、「親しみやすく、素晴らしい人々」だというコメントを残していました。しかし、ケルシー&ジャンはシカゴに2つ物件を持っています。なぜ自分たちの物件をシカゴに2つ持っておきながら、別の人が持つシカゴの物件に泊まる必要があるのだろうか、と考えたコンティさんは、さらに調査を進めました。

すると、シカゴで部屋を貸し出すクリス&ベッキー、ケルシー&ジャン、アレックス&ブリタニー、ベッキー&アンドリューという4カップルがAirbnb上に掲載している写真が、同じものだと判明。


さらに、コンティさんは、ベッキー&アンドリューの部屋に否定的なレビューを残した人を追跡しました。その一人が、ミシガン州で暮らす弁護士のジェーン・パターソンさんでした。パターソンさんも、コンティさんと同じで、チェックインの直前に部屋の変更を余儀なくされたとのこと。実際にパターソンさんは泊まった部屋を写真に残しており、破れたソファーや削れたテーブルの様子が記録されています。


「こんな場所には泊まれない」とパターソンさんは、すぐに近隣に住む友人の家に移り、返金の処理を始めました。

Airbnbの払い戻しポリシーには、「全額返金には書面による証拠が必要である」とは書かれていませんが、「ゲスト返金ポリシーに関するAirbnbのすべての決定は、Airbnbの裁量においてなされる」と記されています。コンティさんによると、Airbnbのルールに基づくと、1泊でも宿泊をしてしまうと全額返金は難しくなるとのこと。Airbnbは、部屋の変更を提案されても納得がいかない時はキャンセルするようにアドバイスしていますが、見知らぬ場所で、泊まる部屋も決まっていないのに、突然夜にキャンセルするようユーザーに強いるポリシーは、詐欺師たちを優遇するものであるとコンティさんは指摘しています。

このような背景があり、パターソンさんの場合も、コンティさんと同様にAirbnbから一部返金の申し出があったとのこと。多くの人は長い争いを避けるために提案を受け入れますが、弁護士であるパターソンさんは戦うことをやめませんでした。そして最終的に全額払い戻しを受けたとのこと。

パターソンさんは全額払い戻しを受けるまでに、ベッキー&アンドリューの部屋に対して厳しいレビューを行いました。Airbnbでは、借主と貸主が双方をレビューする仕組みであるため、報復としてパターソンさんもベッキー&アンドリューから厳しい批判を受けることになったそうです。これもAirbnbのレビューが甘くなる理由の1つであり、自分自身の評判を傷つけることを恐れて相手への批判を避けるため、Airbnbでのレビューはホテル予約サイトでのレビューよりも高い評価を受ける傾向にあることが調査で示されています

コンティさんは、パターソンさんの他にも、ベッキー&アンドリューの被害を受けた複数のAirbnbユーザーと連絡を取りました。そして最終的に、8つの都市にわたる約100個の不動産が、偽の部屋・偽のレビューを用い、Airbnbのルールを悪用して、詐欺行為をはたらいていることがわかりました。

by Pedro Lastra

コンティさんは調査により、ロサンゼルスで「Abbot Pacific LLC」を名乗る高級法人レンタル会社を営む「シュレイ・ゴエル」という人物の存在を突き止めます。またLinkedInにはゴエルさんを手伝っているというという「ショーン・ラヘジャ」という人物についても記載がありました。

コンティさんは、何度もゴエルさんに連絡をとろうとしましたが、うまくいきませんでした。そこで、コンティさんは、ゴエルさんの営むAbbot Pacificの電話番号に繰り返し電話をかけ留守電を残し、Gmailにメールを送り、最終的には「Abbot Pacificの電話係」を名乗るパトリックという人物から連絡を受けることに成功しました。パトリックという人物は、「あなたをGoogleで検索したところ、基本的にはネガティブな記事を書いていることがわかりました。そこで、何がお手伝いできるのだろうかと考えているのですが」と話を切り出しました。コンティさんは「ゴエルさんと話したい」と伝えましたが、パトリックさんはゴエルさんへと引き継ぎませんでした。

いったんコンティさんがパトリックさんとの電話を終えた30分後、奇妙なことに、30分前には存在したはずのAbbot Pacificのウェブサイトが消えてしまったとのこと。コンティさんはパトリックさんに再び電話すると、パトリックさんは「ウェブサイトは昨日ダウンしました。新しいページを準備しています」と説明。コンティさんが「30分前にアクセスしたところだ」と返すと、パトリックさんは「おかしいですね」と述べたそうです。

by Quino Al

コンティさんは、Airbnbで起こった「詐欺事件」を調べていることを説明し、リンクを送るからメールアドレスを教えて欲しいと告げましたが、パトリックさんは決してメールアドレスを告げず、「ペンとノートで書き取る」という姿勢を崩しませんでした。そして最後の方でコンティさんが「実は、このような事件は私の身にも起こったのですが」と言うと、パトリックさんは数秒沈黙した後に「納得しました」と呟きました。

パトリックさんによるとAbbot Pacificはいくつか物件を持っているものの、パトリックさん自身はAirbnbの物件についてほとんど知らないとのこと。「なぜ問題が起こったのか理解するために、いくつか電話をします」と述べ、パトリックさんは電話を切りました。

その後、コンティさんはクリス&ベッキーカップルのアカウントに「今記事を書いているのですが、ゴエルさんに電話してもらえるよう頼めますか?」とメッセージを送りました。4時間後、コンティさんは「こんにちは、アリー。あなたはきっと間違ってメールを送っていますよ。部屋の予約は必要ですか?」という返信を受け取りました。さらにその6時間後、クリス&ベッキーの貸し出す部屋の価格は一晩あたり1万ドル(約108万円)と、旅人が借りられないだろう価格に変更されたとのことです。


Airbnbに自分の主張を送る証拠がそろったと感じたコンティさんは、Airbnbの広報に長いメールを送りました。

24時間後、Airbnbは「部屋を別の部屋で代用することを利用したこのような詐欺行為は、私たちのコミュニティ標準の侵害です。私たちはこれらの部屋を削除し、さらなる調査を進めています」とメールを送ってきました。コンティさんは送信したメールの中で、どのようなプロセスで詐欺を見つけているのか、どのように部屋を貸し出す人が本物であると確証しているのか、などについて質問しましたが、これら質問については回答されなかったとのこと。

Airbnbがこれらの詐欺アカウントを削除したとしても、同じ人物が別のアカウントで詐欺行為を働く可能性は否定できない、とコンティさんは問題の根本がいまだ解決されていないことを指摘しています。

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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