メモ

Airbnb利用者が300%増加したユーザー紹介プログラムの仕組みとは?


世界中の人と自分の部屋を貸し借りできるネットサービスの「Airbnb」が成長を続けています。いまや世界190か国以上でサービスを展開しているAirbnbですが、その成功の原動力の一つとなったのが、実際の利用者の口コミを元に新規ユーザーを獲得する「紹介プログラム」で、じつに300%もの利用者の伸びを見せた効果もあったとのこと。その手法が実際にどのようなものだったのか、Airbnbのブログで詳細に解説されています。

Hacking Word-of-Mouth: Making Referrals Work for Airbnb - Airbnb Engineering
http://nerds.airbnb.com/making-referrals-work-for-airbnb/

この紹介プログラムの仕組みは、既存のユーザーが知人にサービスを紹介し、その新規ユーザーが1回目の利用を完了した時点で両者に25ドル(約2600円)分のクーポンが与えられるというものになっています。実はAirbnbがこのようなプログラムを実施するのは2回目とのことで、初めて実施した際には全く効果が得られずにボロボロの結果を出してしまっていたとのこと。今回の取り組みでは、そんな前回の反省を踏まえ、より詳細な仕組み作りと評価システムが設計されました。

◆1:評価軸の設定
実際に評価システムを作成する前に、まずは「どのような成功を目指すのか」を明確にする作業が行われました。何をもって成功と評価するのか、Airbnbでは紹介プログラム評価の基準として、以下の数値項目を設定。上から順に対象となるユーザーの数が減少するじょうご状の並びになっている点も一つのポイントです。

・招待を送っている毎月ごとのアクティブユーザー数
・紹介者1人あたりの紹介数
・新規ユーザー登録へのコンバージョンレート
・新規ゲスト利用へのコンバージョンレート
・新規ホスト登録へのコンバージョンレート

また、上記の基準に対して以下の3つの予測を実施することにしました。

・成功する(Good)
・より成功する(Better)
・最高に成功する(Best)

そして実際の検証時には、Dropboxなどの成功を収めている他社の紹介プログラムをベンチマークとすることも決定されています。

◆2:データをとる
次に、上記の評価システムに従ってユーザーの動きをトラッキングし、分析に役立てるためのメカニズムの設計が行われました。

Aurbnbのシステム内部には、発生している動きを記録するして残す「air_events」と呼ばれる自社製ログプラットフォームが実装されており、これを使えばどこからでも同じメソッドを呼び出すことが可能で、また取得されたイベントログは集中管理されたHiveに保管されるようになっています。ウェブのバックエンド用にはRuby、フロントエンド側ではJavascript、iOS向けのObjective-C、そしてAndroid向けにはJavaでクライアントライブラリを作成したとのこと。


実際のロギングに際しては、ユーザーイベントを20以上のログに分類するリッチなタクソノミーを定義し、紹介から実際の利用までを細かく記録。このトラッキングシステムが稼働すれば、最初の紹介ページの閲覧から実際の利用までの全ての行動をフォローできるようになり、より細かにユーザーの行動を記録して評価を行うことが可能になります。

このデータ採りの大きな力となったのが、Airbnbのエンジニアリング部門の高い能力。その中でも最も優秀なエンジニアであるヴォーン・クォス氏がタクソノミーとアプローチをデザインしており、クォス氏はまたデータをモニターするためのダッシュボードグラフ表示システムをデザインしています。


◆3:トレーニングをかねて作業を開始
そしてようやく実際のプログラミングを開始。Airbnbでは、オフィスの近くにある物件を実際に借り、そこにこもって数日間にわたる作業を行うというトレーニングプログラムが用意されています。紹介システムを構築するにあたっては、サンフランシスコ近郊の2つの物件を借りて作業を行うことになりました。


開発の際にはウェブ版、iOS版、Android版のページが同時に並行して進められました。エンジニアのうち2名がiOSとAndroidを勉強したいとのことだったので、それぞれ希望の分野へ割り振り。Airbnbでは、エンジニアの教育のために希望の分野で指導を受けながら実際の業務にあたるというプログラムが用意されており、このような機会に活用されているそうです。

開発を進める中で、以下のようないくつかの新しい機能が追加されることになりました。

・自分専用の紹介コードと専用ページを用意
知人に紹介を送信すると自分の名前とアイコン画像、そして専用の紹介コードが記載された画面が表示され、より強く新規ユーザーへの働きかけが行われます。


・知人からの紹介リンクをクリック→アプリをインストール→起動時に紹介者専用ランディングページを表示
誰かの紹介でAirbnbのアプリをインストールした場合には、その紹介元ユーザーと25ドル(約2600円)分のクーポンがゲットできることを表示するページを表示。たとえば、通常の方法でアプリをインストールした際の起動画面はこちら。


一方、紹介がきっかけでアプリをインストールした場合の起動画面は以下のようなものとなっています。日本語版だと表示が乱れることもあるようですが、新規ユーザーをより「やる気」にさせる仕組みが構築されている様子が確認できます。


◆4:検証を実施
これらの準備が整い、紹介プログラムがスタート。初日から反響は上々だったようで、いくつかのエリアでは予約数が25%の増加を見せたケースもあったとのこと。また、これらの反響は全てオリジナル開発のダッシュボードでリアルタイムに把握することができたので、反響を見ながら以下のような改善が逐次加えられていったそうです。

・アドレス帳から連絡先を読み込ませることで、「紹介者ごとの紹介数」が増加
・紹介プログラムの露出を高めることで、「紹介を送信したアクティブユーザー数」が増加
・紹介先への「リマインダー」機能を有効にすることで、「新規ユーザーへのコンバージョンレート」が増加

◆5:フィードバックを得て改善を実施
このプログラムがスタートして数か月が経過しているのですが、Airbnbではさらに取り組みを強化。たとえば、既存のユーザーが「部屋の予約を完了した」時や「レビューでよい評価を行った」時など、ユーザーの気持ちが前向きになっており、より紹介プログラムへ参加しやすいと思われるタイミングを狙って告知を行うという、さらに強力なプロモーション活動が取り入れられています。

また、紹介メールの文面を変化させて反応を見る「A/Bテスト」も行われています。以下のメールでは、左の本文では「友人を誘って25ドルをゲットしよう!」という内容であるのに対し、右では「友人を誘って一緒に25ドルをゲットしよう」という内容に変更されています。このテストで反応を見たところ、全世界で共通して後者の「シェア型」の場合に良好な結果を残したという結果が出ています。


また、検証の結果からは世界の地域ごとに反響に差異が生まれていることもわかってきているとのこと。ネットが発達したからこそ生まれたと思われるAirbnbのサービスですが、その検証方法もまたネットならではのものといえそうです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
現地の人と部屋を貸し借りする「Airbnb」を使って香港で宿泊してみた - GIGAZINE

世界中の人と部屋を貸し借りするサービス「Airbnb」日本版開始までの内幕 - GIGAZINE

コンバージョン率251%アップを達成したデザインの変遷に学ぶA/Bテストの妙とは? - GIGAZINE

現地の人と部屋を貸し借りするサービス「Airbnb」で部屋を貸したら乱痴気騒ぎに、被害額は約900万円 - GIGAZINE

赤の他人と部屋やベッドを共有してお泊まりする「LoveRoom」 - GIGAZINE

自分の家のトイレを誰かに貸したり、逆に緊急時に誰かの家のトイレを借りることができる「Airpnp」 - GIGAZINE

in メモ,   ネットサービス, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.