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IBMが世界初となる「2nmプロセスチップ」を製造、7nmと比較して45%の性能向上&電力消費は75%減


アメリカの大手コンピューター関連企業であるIBMが、同社のナノシート技術を使用して世界で初めて2nmプロセスのチップを製造したと2021年5月6日に発表しました。2nmプロセスチップの開発は半導体分野にとって重要であり、コンピューターや通信デバイス、宇宙開発などに大きな影響を与えると期待されています。

IBM Unveils World's First 2 Nanometer Chip Technology, Opening a New Frontier for Semiconductors
https://newsroom.ibm.com/2021-05-06-IBM-Unveils-Worlds-First-2-Nanometer-Chip-Technology,-Opening-a-New-Frontier-for-Semiconductors

IBM Creates First 2nm Chip
https://www.anandtech.com/show/16656/ibm-creates-first-2nm-chip

IBM Unveils 2-Nanometer Chip Process, But Actual Products Are Still Years Away | PCMag
https://www.pcmag.com/news/ibm-unveils-2-nanometer-chip-process-but-actual-products-are-still-years

クラウドやAI、IoTが重要な時代において、チップのパフォーマンスとエネルギー効率の向上に対する需要は高まり続けています。ところが、近年では「半導体の集積密度は2年ごとに2倍になる」という経験則のムーアの法則には陰りが見えており、2017年には半導体大手・TSMCの会長が「もはやムーアの法則は有効ではない」と発言しました。

そんな中、2017年に5nmプロセスチップの製造に成功したIBMは、新たに2nmプロセスのチップを製造したと発表しました。IBMが開発した2nmプロセスチップについては、以下のムービーを見るとわかります。

IBM Unveils World's First 2 Nanometer Chip Technology - YouTube


半導体はコンピューティングの中核を担うものであり……


電化製品やスマートフォン、輸送システムといったさまざまな分野において重要なコンポーネントとなっています。


チップ上のトランジスタが多いほど、同じ電力でより多くの計算を実行することが可能です。


シリコンウェーハ上には無数のトランジスタが並んでおり、まるで「ハイテクなクッキーシート」だとのこと。


IBMは4年前の2017年に5nmプロセスチップを作成したテクノロジーを基にして、新たに世界初の2nmプロセスチップを開発することに成功しました。


2nmプロセスで製造されたトランジスタはDNA鎖よりも小さいそうです。


IBMが2nmプロセスチップを製造したのは、ニューヨーク州オールバニにある半導体研究施設です。


2nmプロセスチップの成功により、指の爪サイズ(150平方mm)のウェーハに500億個ものトランジスタを収めることが可能になったそうで、トランジスタ密度は1平方mm当たり3億3300万トランジスタとのこと。


半導体の集積密度向上により、2nmプロセスチップは過去のチップに比べてさまざまなメリットがあります。


たとえば、2nmプロセスチップは7nmプロセスチップと比較して45%高いパフォーマンスを発揮するとみられており……


同じパフォーマンスのプロセッサにおけるエネルギー消費は75%も減少すると予測されています。これにより、スマートフォンなどのバッテリー寿命が4倍に延びる可能性があるとのこと。


また、データセンターの二酸化炭素排出量の削減や、ノートPC機能の高速化によるアプリケーション・言語翻訳・インターネットアクセスの改善に加え、自動運転車の物体検知や反応時間の改善といった潜在的な利点もあるそうです。


今回の画期的な進歩はAIや5G、自律システム、および宇宙探査の進歩を加速するために役立ちます。


2nmプロセスチップの開発は、IBMが5nmプロセスや7nmプロセスの開発で蓄積してきた遺産を生かして行われたとのこと。


IBMのハイブリッドクラウド担当ヴァイスプレジデントであるMukesh Khare氏は、IBM自体が2nmプロセスチップを製造するのではなく、Samsungを含めたパートナー企業を利用してプロセッサの製造を行うとコメント。また、今後3年間でIBMは2nmプロセスを改良し、潜在的な欠陥を修正する計画だそうで、「ここから製造に至るまでには多大な努力が必要です」とKhare氏は述べました。


なお、2nmプロセスの開発に乗り出しているのはIBMだけではなく、TSMCも2nmプロセスの研究開発を進めていることが明らかとなっています。

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in ハードウェア, Posted by log1h_ik

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