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TSMCの次世代5nmプロセス&3nmプロセスは2022年に大量生産開始予定、2nmプロセスも研究開発中


AppleやAMDに半導体を供給している世界最大の半導体ファウンドリ「TSMC」は、2020年6月から5nmプロセスによる半導体製品の製造を正式に開始しています。そんな中、TSMCのC・C・ウェイCEOが、次世代5nmプロセス&3nmプロセスの大量生産開始時期や2nmプロセスの研究開発状況について語っています。

Q1 2021 Taiwan Semiconductor Manufacturing Co Ltd Earnings Call on April 15, 2021 / 6:00AM - TSMC 1Q21 transcript.pdf
(PDFファイル)https://investor.tsmc.com/english/encrypt/files/encrypt_file/reports/2021-04/8b5438593d7b5d2181406a1b92d7304d6944c098/TSMC%201Q21%20transcript.pdf

TSMC Update: 2nm in Development, 3nm and 4nm on Track for 2022
https://www.anandtech.com/show/16639/tsmc-update-2nm-in-development-3nm-4nm-on-track-for-2022


◆5nmプロセス「N5」
TSMCは、2020年6月に世界で初めて5nmプロセス「N5」での半導体製造を開始しました。ウェイCEOは「すでに、N5は量産から2年目に入り、当初の計画よりも優れた歩留まりを実現しています。2021年のN5の売上は、TSMCの半導体製造による収益の20%に達すると予想しています」と述べ、N5製造の順調さを強調しています。

技術系メディアのAnandTechによると、TSMCは生産した半導体の用途を開示していないとのこと。しかし、AnandTechは「N5はAppleのM1Apple A14 Bionicに使われていることが分かっています」と、N5がTSMC最大の顧客であるAppleが開発するSoCに用いられていると主張しています。

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また、ウェイCEOが「スマートフォンやHPCアプリケーションの需要の増加によって、N5の需要は今後数年間成長し続けると予想しています」と述べていることから、AnandTechは「ウェイCEOが述べたHPCアプリケーションには、CPU・GPU・FPGAAIアクセラレータ・ゲーム機に搭載されたSoCなど、さまざまな種類の製品が含まれています。N5がどの製品に採用されいているかは分かりませんが、HPCアプリケーションにおけるN5の採用が進んでいることは重要な事実です」と指摘しています。

◆省電力版5nmプロセス「N5P」
香港に拠点を置く金融企業「China Renaissance Securities」のアナリストは、TSMCのN5が1平方mm当たり約1億7000万のトランジスタを備えていると推測しています。これに対してSamsungの5nmプロセスは1平方mm当たり約1億2500万~1億3000万、Intelの10nmプロセスでは1平方mm当たり約1億のトランジスタを備えているとのこと。AnandTechはTSMCのN5を「2021年4月時点で利用できる最も密度の高いテクノロジー」と評価しています。

さらにAnandTechによると、TSMCは記事作成時点から数週間以内に省電力版5nmプロセス「N5P」による半導体製造を開始する予定とのこと。TSMCは「N5PはN5と同じ消費電力で動作周波数を最大5%増加させ、同じ動作周波数で消費電力を最大10%削減させることが可能」「半導体設計企業はN5からN5Pへの移行をスムーズに行える」と、N5Pの特徴を解説しています。

◆性能強化版5nmプロセス「N4」
TSMCは「N4」による半導体の製造を2021年下半期に開始し、2022年には大量生産を開始する予定です。

N4はN5と同様の設計ルールや製造機器を採用しつつ、N5よりもPPA(性能・消費電力・トランジスタ密度)を向上させ、製造段階でのEUVリソグラフィの使用をN5よりも拡張するとのこと。ウェイCEOは「N4は、N5と互換性のある設計ルールを用いています。N5で培った強力な技術基盤を活用して、5nmプロセスファミリーを拡張します」と述べています。

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AnandTechは「TSMCは2022年にN4の大量生産を開始するまでに、EUVを用いた生産に3年、N5の生産に2年の経験を積むことになります。このため、N4の歩留まりは高く、安定したパフォーマンスが得られることが予想できます」と述べ、N4への期待を寄せています。

◆3nmプロセス「N3」
TSMCは、3nmプロセス「N3」による半導体の大量生産を2022年下半期に開始することを目標としています。

N3ではN5と比べて同一電力で10~15%の性能向上と同一パフォーマンスでの25~30%の消費電力削減が予定されています。また、N3ではEUVリソグラフィやDUVリソグラフィといった従来の技術が採用されており、新技術の開発が不要とのこと。AnandTechは「Samsungは3nmプロセス『3GAE』のために、独自の全周ゲートFET(GAAFET)である『MBCFET』を開発中です。これに対してTSMCのN3では新技術の開発が必要ないため、有意に競争を進められる可能性があります」と指摘しています。

ウェイCEOは「TSMCはN3の大量生産を2022年下半期に開始することを目指しています。私たちはN5とN3の両方に自信を持っています。両者はTSMCにとって長期的に利益をもたらすでしょう」と、N3への期待を語っています。

◆2nmプロセス
TSMCは、GAAFETを用いた2nmプロセスの研究開発を行っています。

TSMCが公開した2020年の(PDFリンク)年次報告書には「2nmプロセスの研究開発は順調に進んでいます」「TMCでは、2nmを超える微細化されたプロセスルールのために、メモリ技術や3Dトランジスタなどの分野に焦点を当てて研究開発を行っています」と記されています。

AnandTechは「TSMCは最近、3年間の研究開発費100億ドル(約1兆1000億円)に30億ドル(約3200億円)を追加投入しました。TSMCが研究開発を拡大していることは注目に値します」と述べています。

なお、以下がTSMCの各プロセスノードをまとめた表です。

プロセスノード
(括弧内は比較対象)

N7
(16FF+)

N7
(N10)

N7P
(N7)

N7+
(N7)

N5
(N7)

N5P
(N5)

N4
(N5)

N3
(N5)

電力消費60%削減最大40%削減10%削減15%削減30%削減10%削減削減25~30%削減
パフォーマンス30%向上7%向上10%向上15%向上5%向上向上10~15%向上
シリコンダイ面積70%削減37倍削減-約17%削減

45%削減
(ロジック密度1.8倍)

--

42%削減
(ロジック密度1.7倍)

大量生産開始時期   2019年第2四半期2020年第2四半期2021年2022年2022年下半期

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in ハードウェア, Posted by log1o_hf

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