Intelのファウンドリサービス拡充戦略「IDM2.0」はIntel復活の糸口となるのか?
Intelのパトリック・ゲルシンガーCEOは、2兆円規模の投資を行いファウンドリサービスの拡充を目指す戦略「IDM2.0」を現地時間の2021年3月23日に発表しました。2021年1月に「Intelが復活するために解決するべき5つの問題」を記したベン・トンプソン氏は、ゲルシンガー氏によるIDM2.0の発表を「私のキャリアの中で最も優れた基調講演の1つ」と絶賛。IDM2.0の詳細や、発表の中で優れていたポイントを解説しています。
Intel Unleashed, Gelsinger on Intel, IDM 2.0 – Stratechery by Ben Thompson
https://stratechery.com/2021/intel-unleashed-gelsinger-on-intel-idm-2-0/
ゲルシンガー氏は、2021年3月2日に「大規模製造のためのIntelのグローバルな社内工場ネットワークの構築」「サードパーティファウンドリ容量の拡大」「ファウンドリビジネス『Intel Foundry Services』の構築」の、3つの取り組みを柱とするファウンドリサービス拡充戦略であるIDM2.0を発表しました。
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トンプソン氏はゲルシンガー氏によるIDM2.0の発表を、「私がIntelに求めている戦略のうち、ほとんど全てを含む発表」「発表された戦略が『必ず実行される』という印象を残した」「CEO就任から37日目にして、ビジネスの抜本的な見直しを行った」と大絶賛し、発表の内容を解説しています。
◆Intelの問題点を明確にした
ゲルシンガー氏は発表の中で、Intelの7nmプロセス開発の進捗について言及しました。ゲルシンガー氏によると、Intelが最初に7nmプロセスの開発に着手した時期は、7nmプロセスの開発に必要な技術である「極端紫外線リソグラフィ(EUV)」が開発初期段階であったため、EUVの使用を制限したプロセスの開発を行ったとのこと。しかし、7nmプロセスの開発には想定以上の時間がかかり、その間にEUVの技術は確立されていきました。ゲルシンガー氏は「IntelはEUVを採用し、EUVの使用量を2倍以上に増やしました」「EUVの開発企業であるASMLと強力なパートナーシップを結びました」と述べ、EUVを正式採用したことをアピール。さらに、7nmプロセスルールで製造した「Meteor Lake」を2023年に出荷すると述べました。
トンプソン氏は、ゲルシンガー氏の前任であるボブ・スワン氏が「Intelの問題点を理解していないようだった」と指摘。それに対してゲルシンガー氏が問題点を明確に把握していると評価しています。
また、トンプソン氏は「IntelはEUV以外の分野では、業界をリードするノウハウを保持している」と述べ、「2023年にMeteor Lakeを出荷する」というIntelの新たなタイムラインは信頼できるものだと主張しています。
◆System-in-Package(SiP)
ゲルシンガー氏は、Meteor LakeにはIntelの高度なパッケージング技術が用いられると主張。「世界はSystem-on-a-chip(SoC)からSiPの時代に移行する」と述べ、他社の製造するチップと差別化を図り、ユーザーに大きな価値をもたらすとアピールしています。
トンプソン氏によると、SiPはAppleのM1チップやQualcommのSnapdragonシリーズのようなSoCと、マザーボードを介して複数のモジュールを接続する従来のコンピュータの中間の存在であるとのこと。SiPでは従来のコンピュータとSoCのメリットの両立が可能で、SoCよりも柔軟性を確保しながら、システムの一部に異常が発生しても動作し続けるフォールトトレラント設計が可能となります。
◆IDM2.0
ゲルシンガー氏はIDM2.0の中で、2020年時点で世界中の80%の半導体がアジア地域で製造されていると指摘。新たに、アメリカとヨーロッパに半導体製造工場を建設することを発表しました。
また、Intelが他社向けチップの製造を開始することも発表。ゲルシンガー氏は「アメリカとヨーロッパで大規模な半導体の製造を行うことは、アメリカや世界にとって重要なことです」「Intelはアメリカ政府が求めるセキュリティ要件に対応することを約束します」と述べています。
トンプソン氏は「アメリカと中国の競争を考えると、アジア地域に半導体製造工場が集中している状況は、大きな問題です」と述べ、Intelがアメリカとヨーロッパに工場を設立することを歓迎。また、EUが半導体の製造をEU圏内で行うことに積極的な状況がIntelに有利に働く可能性があると述べています。
◆実行
ゲルシンガー氏は投資家からの「Intelはファウンドリサービスにおける顧客との約束を守りながら。どのように独自のビジネスを構築するつもりですか?」という質問に対して、「私のCEO在職期間中のテーマの1つは『実行、実行、実行』です。Intelの社員には熱意があり、『x』を実行する度に『1.1x』の結果を残します」と回答しています。
トンプソン氏はゲルシンガー氏による回答について、「Intelには、ムーアの法則のような前進するための目標が必要です。ゲルシンガー氏の回答はIntel社員の熱意を呼び起こすものでした。さあ、『実行、実行、実行』するときです」と述べ、Intelの躍進に期待を寄せています。
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