「新型コロナウイルスは撲滅できるのか?」という疑問に答えるムービー
人類は1980年に天然痘を撲滅し、2020年8月にはアフリカの野生株のポリオを撲滅することに成功しましたが、新型コロナウイルス(COVID-19)も同様に撲滅することが可能なのかについて、海外ニュースメディアのVoxが「COVID-19を永久に取り除くことは可能か?」と題したムービーで解説しています。
Can we get rid of Covid-19 forever? - YouTube
新型コロナウイルスに感染した人は、平均して2~3人に新型コロナウイルスを感染させます。
感染させられた人も同様に2~3人に新型コロナウイルスを感染させるため、感染者は急激に増加します。
また、新型コロナウイルスに感染した人の内、約200人に1人が死亡しています。
この強い感染力により、2021年3月までに250万人以上の人々がCOVID-19によって死亡しました。
新型コロナウイルスは2~3人の人に感染しますが、もし、4~6人に感染するウイルスがあった場合、そのウイルスは新型コロナウイルス以上のスピードで感染を広げます。
さらに、そのウイルスに感染した人の30%が死に至るとしたら、とても多くの人々が死亡することになります。
このような恐ろしいウイルスは実際に存在しました。それが、天然痘(smallpox)です。
天然痘は大昔から猛威を振るった伝染病ですが、人類の努力によって数を減らし……
1980年には地球上から天然痘を撲滅することに成功。
それでは、COVID-19も天然痘と同じように撲滅することができるでしょうか?
天然痘が撲滅できた理由は大きく分けて4つあります。まず、1つ目は「ワクチンの開発」です。
近大免疫学の父として知られるエドワード・ジェンナーは、1798年に、牛痘を接種することで天然痘を予防する手法を発表しました。
この手法は「予防接種(vaccination)」と呼ばれ、世界中で実施されることになります。
予防接種を受けた人は、他人に天然痘ウイルスを感染させないため、天然痘の感染拡大を抑えることができます。
また、蚊から人間にウイルスが感染する「マラリア」や、コウモリや人間から人間にウイルスが感染する「エボラ出血熱」と異なり、天然痘ウイルスは人から人へしか感染しません。そのため、人間同士の感染さえ防げば、天然痘ウイルスの感染拡大を抑制できます。
この「ワクチンの開発」と「動物が感染源にならない」という2つの特徴が合わさり、天然痘に苦しむ患者の数は減少していきました。
しかし、人口の多い国や経済的に貧しい国では必要な量のワクチンを入手することが困難です。そのため、1960年になっても、アジア・アフリカ・南アメリカには天然痘が残っていました。
そこで、世界中が協力して天然痘の撲滅に動き出しました。これが天然痘撲滅に成功した3つ目の理由です。
1948年には世界中の人々の健康を目的として世界保健機関(WHO)が設立されました。
WHOは1967年に天然痘撲滅のための特別予算を組み、天然痘に苦しみ続けるアジア・アフリカ・南アメリカで大規模なワクチン接種を実施します。
その結果、1971年には天然痘で苦しむ国は数カ国を残すのみとなりました。
しかし、WHOが当時行っていた「世界中の全ての人々にワクチンを投与する」という手法は、インドのような人口密度の高い国では実現が困難でした。そのため、1974になってもインドでは5カ月に1000~2000人もの人々が天然痘によって死亡していました。
そこでWHOは「天然痘を患った人を隔離する」という新たな手法に乗り出します。これが、天然痘を撲滅できた4つ目の理由とのこと。
この手法では、天然痘患者を隔離し、患者と接触した人にワクチンを投与します。
加えて、「患者に接触した人に接触した人」にまでワクチンを投与。これにより、天然痘ウイルスと人々の間に「壁」を作り出しました。この手法は「包囲接種(Ring vaccination)」と呼ばれています。
包囲接種の効果は目覚ましく、インドの天然痘患者の数は急激に減少しました。
そして、1989年3月8日にWHOは天然痘の撲滅を宣言します。
以上のように「ワクチンの開発」「動物が感染源にならない」「国際協力」「患者の追跡と隔離」の4つの理由によって天然痘の撲滅は成功しました。これらがCOVID-19にも当てはまるのかを順に見ていきます。
まず、1つ目の「ワクチンの開発」はすでに完了しています。技術の進歩のおかげで、人類はこれまでにないスピードでワクチンの開発に成功しました。
しかし、新型コロナウイルスはコウモリから人間に感染したと考えられているため、人間同士の感染を抑制しても動物から感染する可能性が残ります。
天然痘ウイルスは、発熱や腫瘍などの天然痘の症状が発症した後に感染するため、患者の隔離が比較的容易でした。
それに対して、新型コロナウイルスは発症する前に感染することや、無症状の患者も多いことが知られています。
そのため「患者の追跡と隔離」もCOVID-19では困難です。
また、「国際協力」も困難な状況にあるとのこと。各国はマスクや治療薬の輸出を制限し、2020年7月には当時のトランプ大統領がWHOからの脱退を表明。2020年9月24日には国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏が「パンデミックは国際協力の明確な試練です。私たちはこの試練に失敗しました」と発言しました。
また、新型コロナウイルスも経済的に貧しい国では確保が遅れています。
これらの理由から、Voxは「国際協力」も失敗していると述べています。
このように、COVID-19においては、「ワクチンの開発」は成功したものの、「動物が感染源にならない」「国際協力」「患者の追跡と隔離」の3点が天然痘と異なるため、撲滅は難しいとVoxは結論付けています。
しかし、天然痘は人類が地球上から撲滅できた唯一の伝染病であり、撲滅できない方が一般的とのこと。
そのため、Voxは新型コロナウイルスワクチンを接種した人が免疫を獲得することで、インフルエンザと同じように、定期的にワクチンを接種する必要のある「風土病(Endemic)」として扱われるようになると予測しています。
・関連記事
「新型コロナウイルス感染症はインフルエンザよりも恐ろしい」理由をムービーで解説 - GIGAZINE
結局「新型コロナウイルス感染症とインフルエンザ」を比べるとどっちがどれだけ危険なのか? - GIGAZINE
なぜ新型コロナワクチンはこれほど高速に開発できたのか? - GIGAZINE
新型コロナウイルス感染症の「2つの変異株」に同時に感染する事例が発生、一体何が起きたのか? - GIGAZINE
ファイザーの新型コロナワクチンは肥満の人には効果が薄い可能性がある - GIGAZINE
なぜ新型コロナワクチンは「どんな製薬会社でも作れるわけではない」のか? - GIGAZINE
インフルエンザワクチンを接種した子どもは新型コロナウイルス感染症が重症化する可能性が低いことが判明 - GIGAZINE
・関連コンテンツ