サイエンス

違う種類の新型コロナワクチンを組み合わせた際の有効性を確認する研究が始まる


新型コロナウイルスのワクチンは世界中の研究機関で開発されており、記事作成時点ではファイザーとBioNTechが共同開発した「BNT162b2」や、Modernaが開発した「mRNA-1273」オックスフォード大学とアストラゼネカが共同開発した「ChAdOx 1 nCoV-2019」の投与が始まっています。これらの種類の異なるワクチンを組み合わせて投与した際の有効性を確認する研究がイギリスで始まりました。

World-first COVID-19 alternating dose vaccine study launches in UK - GOV.UK
https://www.gov.uk/government/news/world-first-covid-19-alternating-dose-vaccine-study-launches-in-uk

UK government to test mixing COVID vaccines in new trial - ABC News
https://abcnews.go.com/Health/uk-government-test-mixing-covid-vaccines-trial/story?id=75668099

新型コロナウイルスのワクチンは期間を空けて複数回投与する必要がありますが、ワクチンの入手性の低さから、同じ種類のワクチンを望ましい期間に複数回投与することが困難な状況が続いています。そこで、イギリス政府は700万ポンド(約10億円)の資金を投じて、ファイザー・BioNTechのワクチンとオックスフォード大学・アストラゼネカのワクチンを組み合わせて投与した際の有効性を確認する研究を始めました。


今回の研究の対象となったファイザー・BioNTechのワクチンは、新型コロナウイルスの表面に突き出たスパイクタンパク質を合成する情報を持つmRNAを投入し、患者の体内でスパイクタンパク質を合成します。その後、患者の体内でスパイクタンパク質に対する抗体が生成されることで、新型コロナウイルスに対する免疫を獲得します。

新型コロナウイルスワクチンを接種すると何が起こるのか? - GIGAZINE


また、オックスフォード大学・アストラゼネカのワクチンは、「ウイルスベクターワクチン」と呼ばれるタイプのワクチンで、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を、ウイルスから病原性を取り除いた「ウイルスベクター」に運ばせます。その後、患者の体内で抗体が生成され、新型コロナウイルスに対する免疫を獲得します。

このように、両者のワクチンは患者の体内に新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を届ける仕組みが異なっていますが、スパイクタンパク質に対する抗体を患者に生成させるという同様の方法で免疫を獲得させます。このため、両者を組み合わせても新型コロナウイルスに対して高い有効性を期待できるとイギリス政府は述べています。2回の接種でそれぞれ異なる種類のワクチンを投与した場合の有効性が確認できれば、1回目と同じワクチンが2回目の投与時に確保できなくても、別のワクチンを投与することが可能となるため、ワクチンの供給に柔軟性が生まれるとのこと。

また、ウイルスベクターワクチンには、1度目の投与の際にウイルスベクターに対する抗体が生成されるため、2度目以降のワクチン投与の効果が低くなるという問題があります。しかし、mRNAワクチンとウイルスベクターワクチンを組み合わせて投与することで、この問題を回避できるとレディング大学のウイルス学教授イアン・ジョーンズ氏は解説しています。

研究を担当するイギリスの保健機関「国民保健サービス(NHS)」は、ファイザー・BioNTechのワクチンとオックスフォード大学・アストラゼネカのワクチンの組み合わせや投与する間隔を変更しながら有効性を確認し、2021年夏までに研究結果を公開する予定とのこと。NHSは、研究に協力する被験者を募集しています。

Coronavirus (COVID-19) vaccine research studies - NHS
https://www.nhs.uk/conditions/coronavirus-covid-19/research/coronavirus-vaccine-research/

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
新型コロナウイルスのワクチン開発にはなぜ年単位の時間が必要なのか? - GIGAZINE

なぜ新型コロナワクチンは「どんな製薬会社でも作れるわけではない」のか? - GIGAZINE

コロナウイルスに対する抗体を生み出すワクチンをオックスフォード大学が開発、免疫獲得率100%で深刻な副作用も見られず - GIGAZINE

オックスフォードの新型コロナワクチンの有効性は「2回投与で82.4%」という報告 - GIGAZINE

「90%超の予防効果がある新型コロナワクチン」をファイザーが開発したと発表 - GIGAZINE

なぜ新型コロナワクチンはこれほど高速に開発できたのか? - GIGAZINE

ペット用の新型コロナウイルスワクチンは必要なのか? - GIGAZINE

「妊娠中や授乳中でも新型コロナワクチンの接種を受けていいの?」など3つの質問に医学部教授が回答 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1o_hf

You can read the machine translated English article here.