コロナウイルスに対する抗体を生み出すワクチンをオックスフォード大学が開発、免疫獲得率100%で深刻な副作用も見られず
2020年7月20日に、イギリスのオックスフォード大学が「新型コロナウイルスワクチン『ChAdOx1 nCoV-19』が強力な免疫応答を誘発することを確認しました」と発表しました。「AZD1222」とも呼ばれるこのワクチンの臨床試験では、ワクチンを2回接種された被験者全員で抗体が確認され、深刻な副作用も見られなかったとのことです。
Safety and immunogenicity of the ChAdOx1 nCoV-19 vaccine against SARS-CoV-2: a preliminary report of a phase 1/2, single-blind, randomised controlled trial - The Lancet
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31604-4/fulltext
New study reveals Oxford coronavirus vaccine produces strong immune response | University of Oxford
https://www.ox.ac.uk/news/2020-07-20-new-study-reveals-oxford-coronavirus-vaccine-produces-strong-immune-response
Oxford vaccine prompts immune response, shows promise in early results | Live Science
https://www.livescience.com/coronavirus-oxford-vaccine-shows-early-promise.html
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンについては、世界各国で精力的な開発が進められており、7月14日にはアメリカのバイオテクノロジー企業Modernaらが開発した新型コロナウイルスワクチン「mRNA-1273」が全ての被験者に抗体をもたらしたと報じられています。
新型コロナウイルスワクチンの臨床試験で「被験者全員が抗体を獲得した」と確認される - GIGAZINE
これに引き続き、オックスフォード大学がイギリスの製薬会社アストラゼネカと共同で開発したワクチン「ChAdOx1 nCoV-19」も、臨床試験で全ての被験者が抗体を獲得したことが確認されました。
4月23日に開始された臨床試験では、18~55歳の健康な被験者1077人に対して、「ChAdOx1 nCoV-19」と偽薬(プラセボ)のワクチンが投与されました。また、被験者のうち10人は、最初の投与から28日後にもう1度「ChAdOx1 nCoV-19」を投与されました。
その後、被験者らの血液サンプルを採取して分析した結果、「ChAdOx1 nCoV-19」を1回投与された被験者の91%、2回投与された被験者の100%が、IgG抗体を産生していることが確認されました。IgG抗体は中和抗体とも呼ばれ、ウイルスが細胞に感染するのを阻止する働きのある免疫物質です。
また、「ChAdOx1 nCoV-19」を投与された被験者の血液サンプルからは、ウイルスに感染した細胞を攻撃する免疫細胞であるT細胞が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する反応性を向上させていることも分かりました。「ChAdOx1 nCoV-19」が2種類の免疫をもたらした一方で、被験者らには「疲労、発熱、頭痛、注射部位の痛み、筋肉痛および悪寒」といった軽い症状を除き、深刻な副作用は見られませんでした。
アストラゼネカで医薬品研究開発担当エグゼクティブ・ヴァイスプレジデントを務めるMene Pangalos氏は、「『AZD1222(ChAdOx1 nCoV-19)』がSARS-CoV-2に対する抗体とT細胞応答を迅速に生成できることを示す、今回の中間試験のデータには勇気づけられました。この発表は、私たちのワクチンが機能するという確信を強めるとともに、世界中が広く公平にワクチンにアクセスすべく進められている、ワクチン製造の規模拡大計画を後押しするものです」と話しました。
また、今回の研究に携わったオックスフォード大学のウイルス学者サラ・ギルバート教授は「『ChAdOx1 nCoV-19』がパンデミックの制御に役立つかを確認するにはまだ多くの仕事が残っていますが、今回の初期の結果は有望です」とコメントしました。ギルバート氏には21歳の三つ子の子どもがいますが、全員が今回の実験に被験者として参加しているとのことです。
今回の臨床試験は全部で3段階を予定されている臨床試験のうち、第1相と第2相の試験結果によるものです。また既にイギリス、ブラジル、南アフリカで合計数千人のボランティアを対象とした第3相臨床試験もスタートしています。
イギリスのニュース専門放送局Sky Newsによると、イギリス政府は今回の発表に先駆けてオックスフォード大学及びアストラゼネカとの契約を済ませており、1億回分のワクチン調達のめどをつけているとのこと。また、アストラゼネカは2020年6月に、同社と日本政府が日本国内におけるワクチン供給に向けた具体的な協議を進めることで合意していると発表しています。
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