「妊娠中や授乳中でも新型コロナワクチンの接種を受けていいの?」など3つの質問に医学部教授が回答
臨床試験で90%超の予防効果を示した製薬大手ファイザーの新型コロナウイルスワクチン「BNT162b2」の接種が、2020年12月14日からアメリカでスタートしました。また、日本でも12月18日に厚生労働省への承認申請が行われるなど、着々と準備が進んでいます。そんな新型コロナウイルスワクチンについて、「妊娠中や授乳中の女性でも使用していいの?」「新種のウイルスにも効果がある?」など3つのよくある質問に、専門家が答えています。
Should pregnant women get the COVID-19 vaccine? Will it protect against asymptomatic infections and mutated viruses? An immunologist answers 3 questions
https://theconversation.com/should-pregnant-women-get-the-covid-19-vaccine-will-it-protect-against-asymptomatic-infections-and-mutated-viruses-an-immunologist-answers-3-questions-152443
バージニア大学医学部のウィリアム・ペトリ教授は、病院で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について研究している最中に、赤ちゃんがいる母親や妊娠中の女性たちからワクチンについての質問を受けたとのこと。そこでペトリ氏は、患者からよく尋ねられるワクチンに関する質問とその答えを、3つにまとめて公開することにしました。
by William Petri
◆1:妊娠中または授乳中でも予防接種を受けていいの?
この質問に対するペトリ氏の回答は「イエス」であり、むしろ受けるべきと推奨しています。ペトリ氏が妊婦の予防接種を重要視しているのは、妊婦はCOVID-19が重症化するリスクが高いためです。
COVID-19の症状がある2万3434人の妊婦を対象としたアメリカ疾病予防管理センター(CDC)の研究によると、妊婦は非妊婦に比べて集中治療室に入る確率が3倍高く、人工呼吸器が必要になる確率も2.9倍高いことが分かっています。また、ペトリ氏によるとファイザーのワクチンもモデルナのワクチンも活性のある新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を含んでいないため、「妊婦や胎児がCOVID-19を発症するリスクはない」とのことです。
注意点としては、ファイザー・モデルナ両社のワクチンはともに、第III相臨床試験から妊婦が意図的に除外されていたため、「妊娠中ないし授乳中の女性を対象とした臨床試験データが存在しない」ことが挙げられます。それでも、上記のようにワクチンは安全であるとの見通しが強いことから、CDCとアメリカ産婦人科学会の両方が、「個人的な選択としてワクチン接種を受けることを推奨する」としています。また同様に、新型コロナウイルスワクチンが授乳に何らかの支障を来すおそれもないことから、ペトリ氏は授乳中の人にもワクチン接種を推奨しました。
◆2:無症候性感染からは保護される?
COVID-19は「患者全体の40~45%が無症状感染者の可能性がある」とされており、また「無症状感染者の間でもCOVID-19は拡散する」という実例も報告されていることから、COVID-19患者の約半数を占める無症状性感染の拡大防止がパンデミック収束の鍵になると見られています。
モデルナのワクチンに関する初期の臨床試験では、「初回のワクチン接種後には無症状性感染に対して60%の保護が得られた」というデータが出ています。また、2回目の接種後でも「無症状性感染のリスクが半分以下になった」という(PDFファイル)報告があります。ファイザーのワクチンについてはデータがありませんが、ファイザーのワクチンでも同様の効果が得られるものと見られています。
このことからペトリ氏は、「初回の予防接種だけでも、無症状性感染がかなり予防できるという証拠が示されました。ワクチンによる無症状性感染の予防は、集団免疫の獲得とパンデミックの収束を促進させるので、これは素晴らしいニュースです」と述べて、無症状性感染からの保護効果に肯定的な見方を示しました。
◆3:新種のSARS-CoV-2にも効果がある?
ペトリ氏によると、これまでに特定された全てのSARS-CoV-2の変異株が、新型コロナウイルスワクチンで中和されることが分かっているとのと。これには、ワクチン接種により「ウイルスの表面にあるスパイクタンパク質に対する抗体が産生できるようになる」というメカニズムが関係しています。
イギリスで流行し始めている変異株にはスパイクタンパク質の変異が認められますが、ペトリ氏は「イギリスの変異株がワクチンの効果から逃れる可能性は低い」と考えています。なぜなら、スパイクタンパク質には抗体の標的となる部位が複数存在するからです。
なお、病原体の進化に詳しいユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのLucy van Dorp博士も、「ワクチンの有効性が今回の変異株によって大幅に妨げられることはない」との見方を示しています。
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