サイエンス

新型コロナワクチン接種後の心筋炎や心膜炎リスクについてファイザーやモデルナが研究を進めている


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種について、非常に少数ではあるもののワクチンが原因とみられる心筋炎心膜炎発症事例が報告されています。特に若年層に多くみられるこれらの症状の長期的影響について、ワクチンを開発したファイザーやモデルナなどの製薬企業が研究を進めていると、ニュースメディアのNBCニュースが報じました。

Myocarditis after Covid vaccine: Research on long-term effects underway
https://www.nbcnews.com/health/health-news/myocarditis-covid-vaccine-research-long-term-effects-rcna55666

アメリカ・ミシガン州のデトロイトに住む22歳のダヴィオン・ミラーさんは、初めてファイザーのCOVID-19ワクチンを接種した2日後に胸痛や倦怠(けんたい)感、息切れなどの症状を経験したとのこと。そして接種から1週間後、自宅のバスルームで意識不明になっているのを発見されて病院に運ばれました。治療によって回復したミラーさんは、医師から心筋炎や心膜炎であると診断され、2回目のファイザーまたはモデルナのワクチン接種を受けないように指示されたそうです。

ミラーさんは、ファイザーまたはモデルナのCOVID-19ワクチン接種後に心筋炎を経験した、非常にまれな患者の1人です。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、2020年後半からアメリカ国内で数億回以上のワクチン接種が行われており、ワクチン関連とみられる心筋炎または心膜炎が若い男性を中心に約1000件報告されているとのこと。


ワクチン接種後に心筋炎や心膜炎を発症した人のほとんどは完全に回復しましたが、これまでの研究では数カ月単位で患者を追跡したにすぎず、一部の医師はこれらの症状が心臓に及ぼす長期的な影響について懸念しています。そこで製薬会社は、COVID-19ワクチン接種後にみられる心臓病の長期的リスクについて調べる研究を進めています。

NBCニュースによると、すでにモデルナは2つの試験を開始しているほか、ファイザーは今後数カ月以内に最大500人の若年成人を含む試験を開始する予定だそうです。試験に対してアメリカ食品医薬品局(FDA)が発行した(PDFファイル)承認書によると、一部の試験では5年間にわたり心筋炎または心膜炎を発症した人を追跡し、症状があった場合となかった場合で比較を行うとのこと。最初の調査結果は2023年中に発表される可能性があるとみられています。

FDAはモデルナとファイザーの試験は進行中だとして、NBCニュースに対するコメントを拒否しました。しかしFDAの関係者は、COVID-19ワクチン接種後に心臓病を発症する可能性は非常に低く、フロリダ州のデータからこれらの病気が死につながることはないと主張しています。「ワクチン接種を受けなかった個人と比較して、mRNAワクチン接種後の死亡リスクが高いという証拠はありません。実際に、十分に査読された堅固な研究から得られた証拠は、ほぼすべての年齢層において、ワクチン未接種の人の方が死亡リスクが高いことを示唆しています」と、当局者は述べました。


CDCによると、COVID-19ワクチン接種後に心筋炎または心膜炎を発症する人の多くは16~24歳の若い男性であり、ファイザーではワクチン接種100万回あたり52.4例、モデルナでは100万回あたり56.3例の発症例があると推定されているとのこと。一方、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンでは接種後に同様の症状が確認されておらず、ノババックスもワクチン接種後に同様の懸念は提起されていないと主張しています。

心筋炎の主な症状は胸痛・息切れ・動悸(どうき)などであり、3回目以降のブースター接種でも心筋炎リスクが増加することもわかっていますが、ブースター接種の心筋炎リスクは2回目の接種より低いと報告されています

アメリカのヘルスケア組織・カイザーパーマネンテのワクチン専門家であるニコラ・クライン博士は、ワクチン接種後の心筋炎は一般的にCOVID-19が原因の心筋炎より軽度であり、ほとんどの患者は完全に回復できると説明しています。CDCが2022年10月に発表した論文では、ワクチン接種後の心筋炎による症状は90日後にかなり良くなったものの、依然として身体活動に問題を抱えていたり、心臓のMRI画像に異常が見られたりする患者もいることが報告されています。

モデルナの最高医療責任者であるポール・バートン博士は、科学者はCOVID-19ワクチンが心臓病を引き起こす正確なメカニズムはまだわからないものの、接種後に体内で生成されるスパイクタンパク質への免疫反応が心臓の炎症を引き起こす可能性があると予想しています。モデルナはアメリカ国内だけでなく、欧州医薬品庁やヨーロッパの5カ国にまたがる追加試験も予定しているとのこと。バートン氏は、「ワクチン接種を受けることのメリットは、ワクチン接種を受けるリスクを上回ります。これは心筋炎にも絶対に当てはまります」と述べ、ブースター接種を受けた方がいいと推奨しました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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