王を支える名門貴族たちが政治判断を助けつつ権力争いを繰り広げる「キングスジレンマ」を遊んでみた
アンキスト王国の名門貴族の家長となり、王の政治を補佐する評議会のメンバーとして内政・外政のさまざまな問題に対して賛成あるいは反対を提示しながらストーリー展開を楽しむゲーム「キングスジレンマ」の完全日本語版がホビージャパンからリリースされています。2020年度ドイツ年間ゲーム大賞ノミネート作品で、一回しかプレイできず最後までやり直しはできない「レガシーシステム」でもあるこのキングスジレンマを実際にプレイしてみました。
キングスジレンマ | | ANALOG GAME INDEX
http://hobbyjapan.games/kings-dilemma/
なお、このゲームはレガシーシステムという性質上、ある程度のネタバレを含むので、ストーリーやカード内容について何も知らない状態でプレイしたいと考えている人は注意してください。
◆パッケージと内容物
「キングスジレンマ」のパッケージにはその名の通り、頭に手を当てて悩み込む王のイラストが描かれています。
対象年齢は14歳以上、プレイ人数は3~5人、1ゲームのプレイ時間は60分を想定。今回は5人でプレイしてみます。
中身はルール説明書と、家系スクリーンが12枚、世界マップが1枚。
家系スクリーンには、評議会を構成する貴族のシンボルマークや柄が描かれています。
裏側には貴族の爵位と「家系の信条」のほか、ゲームの進行具合によって発動する実績と、家系ナンバーが記されています。家系スクリーンの裏に描かれている内容は、貴族によってすべて異なります。
世界マップはゲーム進行に絶対必要というわけではありませんが、ゲームのストーリーに出てくる地形が一目でわかる地図となっており、世界観への理解がより深まるアイテムとなっています。
また、箱の中にはトークン類も入っていました。厚紙に収まっており、切れ目が入っているので、ハサミやカッターなどを使わなくても取り外せます。
王国の内政状況を示す王国ボード。
カードと同じ大きさの厚紙であるカバータイルと、棄権・賛成・反対の3種類の王国カードが計15枚、そして「秘密の政策」カードが6枚。
内箱はこんな感じ。大量の封筒が入っており、ゲームの進行に応じて指定の封筒を開ける仕組みです。
内箱にはスロットが空いていて、使い終わったカードの一部はここに廃棄できるようになっています。
177枚の年代記ステッカーは1冊に綴じられた状態です。
ゲームの大きなシナリオを1つクリアした時に中身が明らかとなるミステリーステッカーが12枚。
◆ゲームの準備
机に王国ボードを配置し、王国ボードの中央に「安定性トークン」と「資源トークン」を並べます。資源トークンは左から「影響力」「経済力」「活力」「福祉」「文明」を示しており、並べる時にトークンを振り、出た裏表面をそのままに並べます。
次にプレイヤー全員に家系スクリーンを配ります。今回はあえて裏面の内容を見ずに各自お気に入りの紋章と柄のものを選んでスタートしましたが、各プレイヤーが事前に家系スクリーンの設定や世界観をしっかり読み込んだ上で自分が一番ロールプレイしやすいものを選ぶのもアリです。家系スクリーンには折り目がついており、画像のようについたてのように立てて使います。
そして、家系スクリーンの家名に、各自の考えた名前を書き記します。
各プレイヤーにパワートークンを合計8、コイントークンを合計10になるように配布します。なお、パワートークンとコイントークンはそれぞれ大きいものが5、小さいものが1になっています。これらトークンは家系にとって大事な財産であり、他の貴族に知られないように、家系スクリーンのついたての内側に置いて隠します。
余ったパワートークンとコイントークンは「共用プール」として、脇に置いておきます。
さらに各プレイヤーは6枚ある「秘密の政策」カードを順番に取ります。取る順番は後述される家系の「名声」に応じて決まりますが、初回はまだ名声がない状態。そのため、まずは家系ナンバーの最も小さい貴族が6枚のうち1枚を選んで排除し、残りの5枚から好きなカードを1枚選びます。その後、家系ナンバーの小さい貴族から、1枚ずつ選んでいきます。
獲得した秘密の政策カードのうち、例えば「反逆」のカードはこんな感じ。秘密の政策カードはゲーム終了時の得点計算に関係しており、得点に応じて各貴族は「名声」と「貪欲」を獲得します。キングスジレンマは「王の在位期間」が1ゲームとなっており、何世代にもわたって王をサポートしていく中で各貴族が名声と貪欲を得ながら王国の歴史を刻んでいくというゲームとなっています。
そして、投票カード3種類を各プレイヤーに配布します。投票カードは全員から見えるように、家系スクリーンの前に置きます。これで準備完了。
◆ゲーム開始
初回のゲームプレイでは、まず「00」と書かれた封筒を取り出します。
中にはカードが4枚。一番上がストーリーカードで、下3枚がジレンマカードです。
ストーリーカードの裏面にはゲームの導入となる物語が書かれているので、読み上げます。ルール説明書では「誰が読んでもよい」と書かれていましたが、プレイヤーのうち誰か1人をナレーター役に決め、ストーリーの読み上げや場の仕切りを任せるとスムーズにゲームが進みます。最序盤の話は、アンキスト王国の王に即位したハーラル五世が統治に頭を悩ませている……というもの。
ストーリーカードを読んだら、表面右上に書かれているシンボルマークをチェックし、王国ボードで同じマークが書かれている場所に配置します。
残りのジレンマカードは、裏表はそのままにシャッフルしたあと、カバータイルを上に載せます。これがジレンマデッキで、王の頭を悩ませている外政・内政のさまざまな問題が積み重なっています。
その問題を解決するのが、5人のプレイヤーたち……もとい、貴族たちで構成される評議会。その評議会で最もリーダーシップを発揮したものが持つのがこのリーダートークン。初回は家系ナンバーの最も大きい貴族がトークンを持ち「リーダー」となります。
続いて、賛否が対立した時にまとめる調停者が持つ調停者トークンを、家系ナンバーの最も小さい貴族が持ちます。
王が即位し、評議会がそろったところで、さっそく政治が始まります。ジレンマデッキから一番下のカードをそのまま引き、表面に書かれている議題を読み上げます。今回は「辺境の商人が連れてきた奴隷女が、伝説のアイテムである『黄金の地図』の在りかを知っている可能性がある。この奴隷を解放するべきか?」という議題です。
王国ボード最下部にある天秤(天秤)には、赤い円の「反対」と青い円の「賛成」があります。この赤い円と青い円に、ジレンマカードに記されている通りに結果マーカーを配置します。例えば以下の場合では、「『反対』が可決されたら経済力がプラスされるが、『賛成』が可決されたら経済力がマイナスされ、ネガティブな効果を持つ年代記ステッカーを1枚貼ることになる」ことを意味します。また、天秤の中央にはパワートークン(小)を3枚置きます。
評議会では、リーダートークンを持つ貴族から時計回りに意見を表明する必要があります。リーダートークンを持つ貴族は「我が国の経済は奴隷で成り立っているのだから、解放するべきではない、反対だ」と声を挙げました。反対を示す場合は、自分の手元から「反対」の投票カードに1枚以上のパワートークンを置きます。
しかし、別の貴族は「奴隷制なんて前時代的だ。人権を重視するため、奴隷の解放には賛成だ!」と声を荒らげて、家系スクリーン前に置いた「賛成」の投票カード上に二枚のパワートークンを置きます。
投票の際に最も多くのパワートークンを置いた貴族には、「最も権力をアピールした」ということで、リーダートークンが手渡されます。投票は「リーダートークンの右隣の人が投票を終えた時点」で終了となりますが、そこまでにもっと多くのパワートークンを出す貴族が現れるとリーダーが移るため、投票は1巡では終わらないことが多々あります。
そして、この投票の時に最も重要なのが「交渉」です。例えば「コイン3枚あげるから、是非とも賛成に投票してくれないか」「コイン5枚あげるから、投票が拮抗した場合は調停者の君に賛成を決議してもらいたい」など、政治の裏側で各貴族の思惑と共に金が動きます。
別の貴族は「いや、私は別に奴隷がどうなろうと構わんので好きにするがいい」と、「棄権」を選択。棄権を選択した貴族は、共用プールからコイントークン(小)を1枚置き、「天秤のパワートークンをゲットする権利」か「調停者トークンをゲットする権利」のどちらかを宣言できます。
そんなこんなで評議会では、「賛成」にパワートークン合計3、「反対」にパワートークン合計3が集まり、投票が終了。賛否の決はパワートークンの総数で決まりますが、今回は同数だったので……
調停者トークンを持つ貴族が勝敗を決します。調停者は「王国経済を鑑みて、奴隷を解放するべきではないだろう」として、「反対」の採択を言い渡しました。
投票が終わったら、まず「棄権してパワートークン獲得を宣言した貴族」でで、天秤の中央に置かれたパワートークンを分配します。今回は棄権者が1人だったので、トークンは総取りとなりました。なお、分配して割り切れなかった場合、余りは次回に持ち越されます。
次に、採択された「反対」の投票に使われたパワートークンを、天秤の中央に置きます。つまり、前の議題で使われたパワートークンは、次の議題で棄権した貴族に分配されるというわけです。なお、採択されなかった側のパワートークンは投票した貴族の手元に戻ります。
投票の処理が終わったら、ジレンマカードを裏返し、「反対」のストーリーラインを読み上げます。奴隷解放に反対した結果、王国内に富がもたらされ、さらに黄金の地図の情報を商人からゲットできました。ジレンマカードにはストーリーラインのほかに「経済力+2」と、「41」の封筒アイコンが描かれています。
経済力が2上がったので、経済力の資源トークンを2マス上に進めます。さらに、動かした資源マーカーの同方向と移動量で、安定性マーカーを動かします。
さらに、41番の数字が書かれた封筒を取り出します。評議会の決定によってストーリーが分岐し、その分岐に従って新たなストーリーを含む封筒がオープンすると、さらにストーリーが進んでいくというのがキングスジレンマの特徴。
封筒を取り出したらその場で開封し、ストーリーカードのストーリーを読み上げます。ストーリーカードの中には、署名欄が設けられているものがあり……
その段階でリーダートークンを持っている貴族が、自分の家名をサインします。このカードの場合、署名した貴族がコイントークン(小)を3つ獲得するというボーナスがついていました。
今回のリーダートークンを持っていたローズ家の署名が刻まれたストーリーカードが、王国ボードの同じアイコンのエリアに配置されます。王国の歴史を伝えるストーリーに、その判断の責任を負う貴族の名がしっかりと刻まれるというわけです。
なお、封筒によっては、ロウソクアイコンが書かれた「イベントカード」が登場することもあり、通常とは異なる特別なイベント処理が求められることもあります。
また、封筒から出てきたジレンマカードは、ジレンマデッキに追加してシャッフル。王の悩みの種はどんどん増えていきます。
追加された封筒の処理が終わったら、投票を終えたジレンマカードの結果の面だけを見えるようにして、王国ボードの下に挟み込みます。
ジレンマカードの結果によっては、年代記ステッカーを貼ることもあります。
年代記ステッカーもその時にリーダートークンを持つ貴族が署名を行い、王国ボード上部にぺたっと貼り付けます。ステッカーなので、一度貼り付けたらもう剥がせません。この年代記ステッカーには「ポジティブ」「ネガティブ」という2種類があり、ゲームが進むと王国に対してさまざまな影響を与えます。
ゲームを進めてストーリーを進めていくと、王国ボードにどんどんステッカーが貼られていきます。
そして、評議会で王の悩みを解決しながら王国の政を取り仕切っていくと、ストーリーも進んでいき、1つのストーリーが完結することも。
ストーリーが完結すると、12家ある貴族のうちどれか1家の「ストーリー実績」が解放され、その貴族にとって有利な効果が発動します。
自分の家系スクリーンにストーリー実績の名前が書かれているので、各貴族は関連しそうな議題では積極的に自分に有利な評決が行われるように場を転がす必要があります。ただし、5人でプレイしているので、誰のストーリー実績にも影響しないこともあります。
評議が終わったジレンマカードは王国カード下に並べるように差し込んでいき、7枚目以降はドクロアイコンのあるエリアに重ねて差し込んでいきます。ジレンマカードの中にあるドクロアイコンの書かれたカードが、このドクロアイコンのエリアに配置された時点で、「王が崩御した」となり、1ゲームが終了。
この時点で、各貴族は自分の「政策ポイント」を計算します。政策ポイントは秘密の政策カードのポイントと、終了時点でのコイントークンとパワートークンの持ち数で計算します。例えば以下の「日和見」の秘密の政策カードでは、中央より下半分にある資源マーカーの数に応じて政策ポイントが決まります。
王国ボードを見ると、中央より下にある資源マーカーは3つ。つまり10点の政策ポイントをゲットできます。
また、ゲームが進むと「公開の政策」トークンでボーナスポイントがもらえたりペナルティをもらったりすることも。この公開の政策トークンは年代記ステッカーに署名しているかどうかが関連するので、歴史にしっかり名を残すことが重要です。
初回プレイでは「公開の政策」はなく、コイントークンとパワートークンは持ち数のランキングに応じてポイントをゲット。ルール説明書にある表にポイントを書き込み、その合計ポイントに応じてランキングを決定します。1位になった貴族には、なんと次の世代の王の名前を決める権利が与えられます。
見事1位に輝いたローズ家は、自分の家名を背負った国王を即位させることに成功。権力と金を得て王国の政治に大きな影響を与えた貴族であれば、まるで平安時代の藤原氏のように、力を持った貴族が摂政となり、自分の血を引くものを王とすることも可能になるわけです。
そんな感じで1ゲームが終了。システムの把握に少し時間はかかりますが、だいたい1ゲームは1時間ほどで進みます。家系スクリーンに書かれている設定にのっとってロールプレイを進めることで、「あの貴族はおそらくああいう信条だからこの議題には反対してくるだろう」「こういう交渉をすれば乗ってくれるかもしれない」といった、まさに政治の裏側で暗躍する貴族たちになりきってプレイすることができます。ルール自体はシンプルで、全員で1冊のゲームブックを読み進めているような印象。プレイした編集部員からは「レガシーシステムなので、やり直しできないのがもったいなく感じた」と評価する声もありました。
なお、完全に最後までプレイするには何ゲームもプレイしなければならず、1度のプレイでクリアするのは困難。キングスジレンマではプレイ状況を「セーブ」することで、次回も同じ状況でプレイできます。まずは評議の終わったジレンマカードを内箱のスロットに入れて廃棄します。
続いて、ジレンマデッキをそのままの状態で指定の場所に収納します。
ストーリーカードは順番に重ねて、「セーブスロット」に収納。これで、ジレンマデッキとストーリーカードをそのまま引っ張り出せば、次回に同じ状況でプレイができるというわけです。
家系スクリーンも重ねると、以下のような感じですっぽりと内箱におさまります。
キングスジレンマ 日本語版はAmazon.co.jpでも取り扱われており、記事作成時点で税込7500円で購入可能です。
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