生き物

クモは「カエルを捕らえるためのワナ」を作っているかもしれない


地球上の至るところに生息しているクモは、昆虫だけでなく小型の鳥や哺乳類まで捕食することが可能であり、「世界中のクモの年間捕食量は地球上の全人類の体重より重い」との研究結果もあります。新たに科学誌のEcology and Evolutionに掲載された論文では、研究者らが「クモがカエルを捕らえるために作ったワナ」らしき構造物を発見したと報告されています。

Spider traps amphibian in northeastern Madagascar - Fulgence - - Ecology and Evolution - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ece3.7102

Huntsman Spiders Have Been Found Weaving 'Frog Traps' Out of Silk And Leaves
https://www.sciencealert.com/frog-hunting-spiders-in-madagascar-found-using-cool-leaf-traps-to-lure-prey

Huntsman spiders may sew leaves into fake shelters to lure frogs | Science News
https://www.sciencenews.org/article/hunstman-spiders-leaves-fake-shelters-frogs


クモは強くしなやかな糸を吐き出して網状の巣を作り、巣に引っかかった昆虫などを捕食します。クモの捕食対象には昆虫だけではなく、巣に引っかかって身動きが取れなくなった小型のほ乳類やは虫類も含まれ、過去にはクモが自分よりも大きなヘビを捕獲したケースが報告されています。

新たに発表された論文は、ドイツのゲッティンゲン大学やマダガスカルのアンタナナリボ大学の研究チームが2017年から2018年にかけて、マダガスカル北東部の生態調査を行った際に発見した「クモがカエルを捕獲した事例」について報告しています。

研究チームは生態調査の最中に、4個の「クモの糸で2枚の葉が貼り付けられてポケット状になった構造物」を発見しました。そのうちの1個では、ポケット状になった葉の中に糸で包まれたカエルが見つかったそうです。

以下の写真が、実際に研究チームが発見した「クモに捕獲されたカエル」の写真。糸で貼り付けられた2枚の葉の内側に、糸に包まれたカエルとクモがいることがわかります。クモはアシダカグモ科の一種である「Damastes sp.」という種類であり、カエルはマダガスカル島の固有種であるHeterixalus andrakata(アンドラカタヒシメクサガエル)だとのこと。


研究チームはまず、2017年の調査でカエルを捕獲した「2枚の葉が糸で貼り付けられてポケット状になった構造物」を発見し、2018年の調査で同様の構造物を3個見つけたそうです。アンタナナリボ大学の生態学者であるThio Rosin Fulgence氏は、「この現象を初めて見た時、私たちは非常に興奮しました」と語っています。

アンドラカタヒシメクサガエルは体長2~3cmほどの小型のカエルであり、主に樹上で生活しているものの、日中は乾燥を避けるために葉の間に隠れているとのこと。今回見つかった構造物は暑さを避けたいカエルに打ってつけの隠れ家であり、Fulgence氏らは「クモがカエルを捕まえるために作ったワナ」である可能性があると考えているそうです。


科学系メディアのScienceAlertは今回の発見が単なる観察に基づいたものであり、「公平性を期すならば、これらをカエル捕獲用のワナと呼ぶのは不確かです」と指摘。今回の研究には関わっていないチェコ・マサリク大学の生物行動学者であるStano Pekár氏も、葉を貼り付けた構造物はワナではなく、単にクモ自身が身を隠して獲物を待ち伏せする場所である可能性があると述べています。

一方、Pekár氏と同様に研究に関わっていないドイツ総合生物多様性研究センターの保全生物学者であるJose Valdez氏も、構造物がクモの隠れ家である可能性を認めているものの、クモがそのような構造物を作る理由が気になると指摘します。「これらのクモが森の中に隠れるための、もっと簡単な場所があると思います」と述べ、あえてクモが葉を貼り付けてポケット状にする他の理由があることを推測させると主張しました。


過去にもクモが両生類を捕食する事例は報告されていたものの、それらは偶発的なものであり、クモがカエルの捕獲に特化していたとは考えられていませんでした。しかし、今回マダガスカルで発見された事例から、「両生類は偶発的な獲物であるだけでなく、Damastes sp.の体系的な食料源である可能性があると推測しています」と研究チームは述べています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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