ストーンヘンジのように奇妙な環状構造をしたクモの巣「シルクヘンジ」

イギリス南部のソールズベリーにある「ストーンヘンジ」は、紀元前2500年から紀元前2000年頃に作られたと思われる環状列石です。誰が何の目的に建てたものなのかもわからない奇妙な遺跡ということで、多くの考古学者たちを虜にしてきたストーンヘンジですが、これと同じように誰が何の目的で作ったものなのかが一切不明な構造体が2013年にアマゾンの熱帯雨林で見つかりました。この謎の物体は、環状であったこととその出自が謎であったことから「シルクヘンジ」と名付けられ、その後、クモが作り出したものであることが判明しています。

Spider Architect's Intricate 'Silkhenge' Revealed in Stunning Video | Live Science
https://www.livescience.com/silkhenge-returns-video.html

シルクヘンジは、2013年にタンボパタ研究センターの研究者がペルー領のアマゾンで発見した、指先サイズの小さな謎の構造体です。クモの巣のような繊維状の物体でフェンス状の物体を形成しており、その真ん中には1本の塔のようなものが立っています。奇妙かつ特徴的な見た目から、多くの科学者たちがその謎を追ってきました。

当初はシルクヘンジを作り出しているのが動物なのか菌類なのかすらも明らかになっていなかったのですが、2013年12月にタンボパタ研究センターで働くトーレス氏と、フロリダ大学の昆虫学者であるラリー・リーブス氏とジーナ・ヒル氏、そして写真家のジェフ・クリーマー氏らが、シルクヘンジの中からクモがふ化する瞬間を目撃することに成功。

その後、2016年にトーレス氏は自身のYouTubeチャンネル上で、世界で初めてシルクヘンジの中から小さなクモがふ化する瞬間を捉えた映像を公開しています。

First Ever Video of Silkhenge Spider Birth - YouTube

これがシルクヘンジ。中央に塔のように縦に長い卵嚢が存在しており、その周りをフェンスのようにクモの巣が囲んでいます。

シルクヘンジを真上から撮影したのが以下の瞬間。中央の卵嚢から琥珀色の手足がのぞき……

中からふ化したばかりの子クモが姿を現します。

シルクヘンジの周囲にあるフェンス上のクモの糸は卵嚢を保護するためのものと考えられていますが、これを作り出すクモの種類については記事作成時点でも特定されていません。トーレス氏は科学系メディアのLive Scienceに対して、「シルクヘンジを見つけることは非常に面倒」と語っています。トーレス氏によると、シルクヘンジは広葉樹の葉っぱの裏側に見られることもあれば、樹皮に出現することもあり、定期的に浸水する地域で見られることもあれば、浸水とは無縁の場所で見つかることもあるそうで、非常につかみ所がないことを明かしています。

また、トーレス氏は2019年3月にアマゾンの熱帯雨林で観光ツアーを率いていた際にシルクヘンジを発見しており、その様子を自身のYouTubeチャンネルで公開しています。トーレス氏によると「史上初の4K解像度でシルクヘンジを捉えたムービー」だそうです。

First Ever 4k footage of Silkhenge! The Return to Silkhenge Island - YouTube

アマゾンの熱帯雨林でシルクヘンジを探すトーレス氏。

2019年3月に発見されたのは、辺りが真っ暗になってからでした。観光ツアーの参加者がスマートフォンでシルクヘンジ発見の瞬間を撮影していたとのことで、この瞬間だけ映像の画質が落ちます。

トーレス氏がちぎった葉っぱの裏側にシルクヘンジがあります。

これを照明のある明るい場所で、高性能なカメラで撮影したのが以下の画像。

フェンス同士をつなぐ細いクモの糸や、卵嚢から伸びる細いクモの糸など、シルクヘンジをより詳細に観察することが可能。

サイズは指先よりも小さいくらいです。

フェンスや中央の塔部分から伸びる細かなクモの糸が構造的に重要なものなのか、それともシルクヘンジを作成する過程でできた不要なものなのか判別がついていないそうです。

当初、卵嚢には1つの卵のみ含まれていると考えられていましたが、実際には2、3個の卵が含まれているそうです。

そして、フェンス部分は卵嚢を食べようとするスズメバチから卵を守るためのものと考えられています。「シルクヘンジのフェンス構造は、スズメバチが着地することを防ぐためのものかもしれません」とトーレス氏は語っています。

ムービーのラストでは、「雌グモが集団でシルクヘンジを作成します。我々は1つのエリアで3つのシルクヘンジを発見しました。この発見は、将来のストーンヘンジ探索をより簡単なものにしてくれます」と記されており、シルクヘンジは近いエリアで複数発見できることが示唆されています。