2021年に起こる「注目すべき科学的な出来事」とは?
新型コロナウイルス感染症に世界中が苦しめられた2020年ですが、科学は着実に進歩しており、2021年もさまざまな科学的発見が期待されます。そんな「2021年の注目すべき科学イベント」を科学誌Natureがまとめています。
The science events to watch for in 2021
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03651-0
◆環境問題に関する取り組み
気候変動を抑制するには新型コロナウイルス対策なみの国際協調が必要だと主張されており、すでに国際的な協定としてパリ協定が存在します。2020年11月にアメリカがパリ協定を離脱したことが話題となりましたが、アメリカの次期大統領であるジョー・バイデン氏はパリ協定に復帰する意向を示しており、2021年11月にイギリスでの開催が予定されている第26回気候変動枠組条約締約国会議での各国の動向やアメリカのカーボンニュートラルに向けた取り組みに注目が集まっています。
◆新型コロナウイルス感染症の原因特定
世界保健機関が指揮する新型コロナウイルス対策チームが、新型コロナウイルスの感染拡大の原因を特定すために、2021年1月に中国・武漢を訪れて調査を行う予定です。専門家は2021年内に新型コロナウイルスの起源に関する新たな情報が明らかになると予想しています。
◆新型コロナウイルスワクチンの開発
新型コロナウイルスワクチンの開発は高速に行われ、2020年12月にはファイザーによって開発されたワクチンとModernaによって開発されたワクチンの2種がアメリカ食品医薬局による認可を受け、各地で接種が始まっています。しかし、これらのワクチンは非常に低い温度で保管する必要があるとのこと。記事作成時点で、大手製薬会社のNovavaxやJohnson & Johnsonによる新型コロナウイルスの有効性の確認が行われており、2021年初頭には有効性の可否が明らかになります。開発中のワクチンは、ファイザーやModernaのワクチンのように低温で保管する必要がないため、容易に輸送することが可能です。さらに、Novavaxは年間20億回分のワクチンを製造する予定とのことで、世界中に多くのワクチンが普及することが期待できます。
◆学術論文への容易なアクセス
学術論文にアクセスするには高額な購読料を求められてきましたが、誰でも無料で論文を読める海賊版サイト「Sci-Hub」の登場により、学術論文に高額な購読料が必要なことに異議が唱えられるようになりました。この状況を打開すべく、ビル&メリンダ・ゲイツ財団を含む20以上の組織が資金提供したプランSと呼ばれるプロジェクトが進行しています。プランSはすでにNatureを含むいくつかの学術雑誌に対してオープンアクセスジャーナルを提供するように促しており、2021年にはいくつかの科学誌がオープンアクセスジャーナルを提供する可能性があります。
◆幹細胞に関する規制の緩和
ヒトの胚を用いた人工多能性幹細胞に関する研究は活発に行われていますが、倫理的な観点からヒトの胚の培養は14日で中止しなければならないという「14日ルール」が記事作成時点では存在しています。国際幹細胞研究協会はこの「14日ルール」を延長し、より長期間の培養を認めるガイドラインを作成しています。もし培養可能期間が延長されると、流産のメカニズムの解明などにつながることが予想されます。
◆アルツハイマー病の治療薬の認可
アルツハイマー病はアミロイドによって引き起こされると考えられています。製薬会社のBiogenがアミロイドに対する抗体を用いたアルツハイマー病の治療薬を開発しており、2021年中に有効性の確認が完了する予定です。なお、この治療薬がアルツハイマー病の治療に効果的かどうかは、科学者の間でも意見が分かれているとのこと。
◆火星の調査
2021年2月には中国の火星探査船天問1号が火星に到達し調査を行う予定です。天問1号はカメラやレーダー、粒子分析装置といったさまざまな機器を搭載しており、火星における水と生命の兆候を探査する予定です。
◆宇宙望遠鏡の打ち上げ
2021年10月にはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が打ち上げられる予定です。88億ドル(9100億円)の資金を投じて開発されたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、130万回以上の観測を行い、天文学に大きく貢献したハッブル宇宙望遠鏡以上の働きが期待されています。
◆重力波の検知
ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリアの合同チームは、中性子星を用いた重力波の検知方法を開発しています。これにより、ブラックホールによって生成される重力波を検出することが期待されています。
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