サイエンス

火星の地下に塩水の湖がいくつも存在することが判明、生命が発見できる可能性が高まる

by Kevin Gill

南極大陸の氷の下にあるボストーク湖など、地球の寒冷な地域には氷底湖がありますが、同様の湖が火星の地下に複数存在している可能性があるとの論文が発表されました。この発見により、火星で生命やその痕跡が見つかる可能性がさらに高まると期待されています。

Multiple subglacial water bodies below the south pole of Mars unveiled by new MARSIS data | Nature Astronomy
https://www.nature.com/articles/s41550-020-1200-6

Water on Mars: discovery of three buried lakes intrigues scientists
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02751-1

Salty lake, ponds may be gurgling beneath Mars' South Pole
https://phys.org/news/2020-09-salty-lake-ponds-gurgling-beneath.html

Liquid water on Mars? New research indicates buried 'lakes'
https://www.nbcnews.com/science/space/liquid-water-mars-new-research-indicates-buried-lakes-n1241234

イタリア国立宇宙物理学研究所のロベルト・オロセイ氏らの研究チームは2018年7月に、火星の南極にある氷の下に液体の水が存在する湖が見つかったと発表しました。この発見は、火星探査機「マーズ・エクスプレス」からもたらされたもので、この時見つかった単一の氷底湖だけでも、液体の水が100億リットル以上あるとされています。

火星に「液体の水でできた湖」が存在する証拠が見つかる - GIGAZINE


2018年に見つかった火星の南極の氷底湖は、2012年から2015年の間に実施されたわずか29回の観測で特定されたものであることから、オロセイ氏らは発見を裏付ける証拠とすべく、さらなる観測を実施。2012年から2019年までの合計134回の観測で得られたデータセットを元に、前回より広範囲な捜索を行いました。

その結果、前回見つかった直径約30キロメートルの氷底湖の周囲に、直径数キロメートルの氷底湖が3つ存在していることが、新たに判明しました。この発見の有効性について、論文の共著者であるローマ・トレ大学の地球物理学者エレナ・ペティネッリ教授は「私たちは今回、以前よりはるかに強い自信を持っています。我々はより多くの観測を行っただけでなく、以前とは全く異なる方法でデータを処理しました」と話しています。

以下は、火星探査機から送られてきたデータを元にした火星の南極のレーダーマップで、水があるとされる部分が青色で示されています。


火星は地球より温度が低く、南極点の表面温度はマイナス113度にもなります。地下は地表より温度が高いとされていますが、それでも真水が液体のまま存在することはできないことから、科学者らは今回見つかった氷底湖はかなり塩分濃度が高いものだと推測しています。

地球の海がそうであるように、塩水は生命を育むことが可能ですが、問題となるのはその濃度です。モンタナ州立大学の環境科学者ジョン・プリスク氏は、「地球の海の5倍程度の塩分濃度なら生命を維持することができますが、もし海水の20倍程度の濃度になると、もはや生命は存在できないでしょう」と話しました。


また、火星の南極の温度があまりにも低いことから、氷底湖の存在を疑う科学者もいます。NASAの火星探査計画マーズ・リコネサンス・オービターの一員であるアリゾナ大学の惑星科学者ジャック・ホルト氏は、「氷帽の下に、液体の塩水を維持できるような熱の流れがあるとは思えないので、私は氷底湖は存在しないと思います。あったとしても、湿った堆積物で、湖というのは誤解を招く表現ではないでしょうか」と述べています。

それでも、ペティネッリ氏は「火星にはかつて大量の水があった可能性があります。そして、水があったのであれば、生命が誕生した可能性もあります」と述べ、火星に膨大な水があった時代の名残と考えられている氷底湖で、生命の兆候が見つかることへの期待感を示しました。また、研究チームは論文に「火星の将来のミッションは、今回氷底湖が見つかった地域をターゲットにするべきです」と記し、衛星からだけでなく探査ローバーなどによる直接的な調査の必要性を訴えています。

火星には目下、中国が2020年7月23日に打ち上げた探査機「天問1号」が向かっており、2021年2月から衛星とローバーによる火星探査ミッションを開始する予定です。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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