サイエンス

土星の衛星タイタンの大気から「生命の起源となり得る分子」が発見される


62個もある土星の衛星の中で最も巨大で、太陽系内にある衛星の中で唯一豊富な大気を持つ天体が「タイタン」です。アメリカ航空宇宙局(NASA)の科学者チームが、タイタンの大気圏内に「潜在的に生命を形成する可能性がある炭素化合物」を発見したと発表しました。

Detection of Cyclopropenylidene on Titan with ALMA - IOPscience
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-3881/abb679

‘Weird’ Molecule Discovered in Titan’s Atmosphere | NASA
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2020/nasa-scientists-discover-a-weird-molecule-in-titan-s-atmosphere/

タイタンの大気は、そのほとんどが窒素とメタンでできています。また、タイタンの気圧は地球のおよそ1.45倍、大気密度は地球の4倍で、湖や川、雨や雲、さらには地下に塩水の海があることが確認されていることから、、25億年前の地球に比較的近い環境にあるとされています。


NASAの科学者チームがチリ北部にあるアルマ望遠鏡で、タイタンの大気組成を調べていたところ、そのスペクトルの中に環状炭化水素のシクロプロペニリデン(C3H2)という物質が検出されたとのこと。NASA・ゴダード宇宙飛行センターの惑星科学者であるコナー・ニクソン氏は「シクロプロペニリデンの痕跡を発見した時、『本当に予想外な分析結果だ』とまず思いました」と、発見時の驚きを語っています。

タイタンの大気中でベンゼン以外の環状炭化水素が発見されたのは初めてだったため、ニクソン氏はこれまでにも似たようなデータがなかったか、2004年から2017年にかけて土星探査機カッシーニから送られてきたデータを再確認したとのこと。その結果、タイタン周辺からの質量分析計のデータから、シクロプロペニリデンの痕跡が見つかったそうです。


ニクソン氏によれば、タイタンの大気になぜシクロプロペニリデンが存在するのか、また他の天体の大気中にはなぜシクロプロペニリデンが検出されないのかについては解明されていないとのこと。ニクソン氏は、「このシクロプロペニリデンは、遺伝情報の媒体であるDNAやRNAの核酸塩基の一部になり得るため、タイタンの大気中にシクロプロペニリデンを発見したことは重要です」とコメントしています。

2026年にタイタンへ着陸機を送りこむミッション「ドラゴンフライ」の副主任研究員であるメリッサ・トレーナー氏は「タイタンは、生命が生まれた古代の地球と同様の化学反応を観測できる実験室だと考えています」「ドラゴンフライで、私たちはシクロプロペニリデンよりも大きな分子を探す予定です。しかし、『複雑な有機分子が形成されて地表に降り注ぐ』という科学反応を理解するためには、まず大気中で何が起こっているのかを知る必要があります」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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