サイエンス

火星表面の40%に液体の水が存在する可能性があるとの研究結果


太陽系の惑星の中でも火星は特に地球と環境が似ていることが知られており、2018年にはNASAが「火星の土壌から有機物が発見された」と発表したほか、「火星にはかつて塩を含んだ水が存在した」との証拠も発見されています。アメリカの研究チームが発表した新たな研究結果から、「火星には従来の予想よりも豊富に液体の水が存在している可能性がある」と示されました。

Distribution and habitability of (meta)stable brines on present-day Mars | Nature Astronomy
https://www.nature.com/articles/s41550-020-1080-9

Mars might be full of puddles but they're too cold to support life - CNET
https://www.cnet.com/news/mars-might-be-full-of-puddles-but-theyre-too-cold-to-support-life/

Mars' Climate Modelled To Understand Its Habitability - Astrobiology
http://astrobiology.com/2020/05/mars-climate-modelled-to-understand-its-habitability.html


記事作成時点では火星に生命が存在していることは確認されていませんが、科学者らの中には火星に液体の水が存在した場合、その中に生命がいるかもしれないと考える人もいます。しかし、火星は非常に乾燥しており、水の蒸発を防ぐ大気も希薄であるため、液体の水が存在できる可能性は非常に低いと考えられてきました。

その一方で以前の研究から、火星の表面には空気中の水分を取り込んで水溶液になる潮解性を持った過塩素酸が、水溶液となって存在していることが示されていました。また、「火星に存在するかもしれない塩水には、生命維持に十分な量の酸素が含まれている可能性がある」とも指摘されています。


塩水は通常の水と比べて凍結したり蒸発したりするスピードが遅いため、たとえ極度に乾燥しており大気が希薄な火星の環境であっても、場合によっては非常に塩分濃度の高い液体の水が存在する可能性があるとのこと。そこで研究チームは、火星の熱力学モデルと気候モデルを組み合わせて、火星表面に存在する塩水および生命の可能性について研究を行いました。

研究チームは火星の大気条件に関するコンピューターモデルを使用して、過塩素酸を含んだ塩水が火星の表面または浅い地下において、どれほどの可能性で、どれほどの時間にわたり安定して存在し得るのかを予測したとのこと。その結果、赤道付近から高緯度地域にわたり、火星表面の最大40%において塩水が存在できる可能性があると示されました。実際に塩水の存在が証明されたわけではないものの、火星のこれほど広い範囲に液体の水が存在する可能性はこれまで考えられてきませんでした。


しかし、塩水が火星表面に蒸発せずとどまれるのは最大で6時間ほどだそうで、塩水が存在できる期間は地球時間で1年のうち2週間ほどしかないそうです。また、塩水が存在できるのはマイナス48度ほどの超低温環境に限られるため、生命が生存するには過酷すぎる環境といえます。そのため、研究チームはたとえ火星表面に塩水が存在したとしても、生命が存在できる可能性は非常に低いと述べています。

論文の共著者であるAlejandro Soto氏は、「これらの新しい研究結果は、火星の居住可能性に関する将来的な調査に貢献すると共に、火星の探査におけるリスクの一部を減らします」とコメント。火星に存在し得る塩水は生命を維持するには適していないため、地球からの探査船や宇宙飛行士が、地球からの生物汚染によるリスクを考慮せずに活動できるとのことです。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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