サイエンス

火星にかつて「塩を含んだ水」が存在していた証拠が発見される

by Kevin Gill

火星にはかつて生物が存在していたのではないかと考えられており、探査機が採取した土壌から有機物が発見されるなど、研究者らの期待が高まっています。そんな中、火星のクレーターから採取された土壌を調査したところ、「クレーターの中にはかつて塩水が存在していた」証拠が発見されたと、カリフォルニア工科大学の研究チームが発表しました。

An interval of high salinity in ancient Gale crater lake on Mars | Nature Geoscience
https://www.nature.com/articles/s41561-019-0458-8

We Just Got More Solid Evidence Mars' Gale Crater Once Held a Vast Salty Lake
https://www.sciencealert.com/the-mars-gale-crater-may-have-once-held-a-sloshing-salty-lake-3-3-to-3-7-billion-years-ago

研究チームが分析したのは、アメリカ航空宇宙局(NASA)が火星探査ミッションで投入している探査機ローバー「キュリオシティ」が、火星のゲールクレーターで採取した土壌サンプル。ゲールクレーターは中央部分が盛り上がった山になっており、アイオリス山と名付けられています。

ゲールクレーターはおよそ38億年前~35億年前に形成されたとみられており、浸食されたアイオリス山の側面から地層の研究が可能と目されていたほか、「かつては湖底だったのではないか」ともいわれています。そのため、NASAはキュリオシティの着陸地点としてゲールクレーターを選択し、継続して土壌の調査を行ってきました。

研究チームがキュリオシティの採取した土壌サンプルを分析した結果、火星のほかの岩石にはみられない多様な塩化物を発見したとのこと。今回発見された硫酸マグネシウム硫酸カルシウムは、およそ37億年前~33億年前に干上がった水の残留物である可能性があると研究チームは指摘しており、かつてクレーターの内部に大量の塩水があったことを示唆しています。

by Matt Hardy

以前から行われてきた火星の調査により、かつて火星ではヘスペリアン時代と呼ばれる大規模な気候変動期があったことがわかっています。ゲールクレーターの水もヘスペリアン時代に干上がったとみられており、この時期に火星がより乾燥した気候になったことを示しているとのこと。

発見された硫酸マグネシウムと硫酸カルシウムは、火星の玄武岩に由来するとみられています。研究チームは「硫酸カルシウムは比較的溶解度が低いため、塩水が蒸発する過程の長い期間にわたって析出します」「一方、硫酸マグネシウムは溶解度が高いため析出しにくく、塩水が蒸発する過程の最後に析出します」と述べました。

以前から火星に水が存在する証拠や有機物の痕跡は発見されてきましたが、クレーターの堆積物に硫酸塩に富む土壌が含まれていることがわかったのは今回が初めてです。研究チームはもともとあった大きな湖が蒸発してクレーター内の浅いくぼみにたまり、いくつかに分割された塩水の中で塩分も濃縮され、塩化物を残しつつ次第に干上がっていったと考えています。

ゲールクレーターの塩水は塩分濃度が非常に高かった可能性がありますが、地球上でも耐塩性の高い微生物相が発見されています。そのため、科学系メディアのScience Alertは「今後もゲールクレーターにおける生物の証拠探しは間違いなく継続されるでしょう」と述べました。

by WikiImages

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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