サイエンス

コツメカワウソは友だちの姿を見てパズルの解き方を学習することができる


持ち前の愛くるしさと、手先の器用さで動物園の人気者となっているコツメカワウソには、「1度解いたことがあるパズルを長期間覚える記憶力」や、「他のコツメカワウソの様子を見てパズルの解法を学習する能力」があることが、実験により判明しました。コツメカワウソがこのような能力を持っているということは、絶滅の危険にさらされている野生のカワウソを保全する上で良いニュースだと、研究者は指摘しています。

Learning strategies and long-term memory in Asian short-clawed otters (Aonyx cinereus) data | Zenodo
https://zenodo.org/record/4108703

Puzzled otters learn from each other | EurekAlert! Science News
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-11/uoe-pol110920.php

コツメカワウソは、インドやインドネシアを中心とした南アジアの河川や沼地に広く分布している動物です。しかし、イギリスにあるエクセクター大学生態系保全センターに勤めるアレクサンダー・サリベロス氏によると、エサとなる小魚と甲殻類が乱獲や汚染により打撃を受けているといった理由により、コツメカワウソは野生では衰退の一途をたどっているとのこと。そのため、国際自然保護連合(IUCN)が策定しているレッドリストでは「危急種(VU)」に指定されています。

そこで、サリベロス氏らの研究チームは、コツメカワウソがどのようにエサを取る方法を学習するのかを調べるため、コツメカワウソに「パズルを解かせる実験」を行いました。

実験は、コツメカワウソに半球状の透明なケースからエサを取り出してもらうというもの。透明なケースには穴が開いているため、その穴からコツメカワウソが手を伸ばしますが、穴とエサを隔てる板に阻まれて手が届きません。


しかし、コツメカワウソがケースを回転させると、穴がエサがある方に動きました。


ケースを回転させることを学習したコツメカワウソが、首尾良くエサの肉団子をゲット。その様子を、仲間のコツメカワウソも見ていました。


研究チームが、1回目の実験から数カ月後にもう一度パズルを解かせたところ、コツメカワウソは最初の実験に比べて平均して69%速くパズルを解くことができたとのこと。これはコツメカワウソが長期記憶を持っていることを示しています。

さらに、一連の実験の中では、あるコツメカワウソがパズルを解くと、その様子を見ていた別のコツメカワウソも素早くパズルを解いてしまうことが確認されました。研究チームによると、これは「コツメカワウソの間で社会的学習が起きている」ということを示唆しているのだそうです。


この結果について、サリベロス氏は「これはコツメカワウソにおける長期記憶と社会的学習を示した初めての研究であり、彼らの適応力や将来の生存という観点から見ると、良いニュースかもしれません。コツメカワウソが新しい方法で新しい獲物を捕らえ、その知識を他の個体に伝えることが可能だという発見は、種を保全する上でも重要なものだと思われます」と述べました。

また、論文の共著者であるNeeltje Boogert氏は、「我々は以前、ビロードカワウソがお互いに学びあうことを発見していますが、今回の研究でコツメカワウソも同様に学習しあうことが分かりました。そこで、今後は新しい食べ物や外敵など生存の上で重要な情報を、より一般的な野生のカワウソのグループがどのように継承していくのかを調査していく予定です」と話しました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1l_ks

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