走行中の車内で聞こえる騒音を大幅に減らす「自動車用ノイズキャンセリング機能」が開発される
自動車の走行音は道路沿いの周辺環境だけでなく、自動車の内部にも響いています。そんな自動車内部の騒音を軽減するため、イスラエルを拠点としてノイズキャンセリング技術の開発を行うSilentiumが「自動車用ノイズキャンセリング機能」を開発しました。このノイズキャンセリング機能は、ジャガー・ランドローバーの車両に搭載される予定です。
Advanced, broad-band active noise cancellation now available in cars – Silentium
https://www.silentium.com/advanced-broad-band-active-noise-cancellation-now-available-in-cars/
Advanced, broad-band active noise cancellation now available in cars
https://www.autocarpro.in/news-international/israeli-firm-enables-sound-of-silence-with-broadband-active-road-noise-cancellation-77678
Headphone-style noise cancellation reduces road rumble in cars
https://www.imeche.org/news/news-article/headphone-style-noise-cancellation-reduces-road-rumble-in-cars
Silentiumが開発したノイズキャンセリング機能は、基本的にハイエンドのノイズキャンセリングヘッドフォンに見られるものと同じ仕組みを採用しているとのこと。ノイズキャンセル機能がオンになると、まずは車両のシャシに配置された最大6個の加速度計が走行中に生じる不要なノイズを検出し、車両に搭載されたコントロールユニットに信号を送信します。
続いて、Silentiumが開発したソフトウェアが、打ち消したいノイズの信号を180度反転させたアンチノイズを生成。これを車両内部のスピーカーから送信することにより、乗員の耳には走行時のノイズとそれに対応するアンチノイズが同時に届き、2つのノイズがお互いを打ち消し合う仕組みです。ノイズキャンセル機能をオンにすると、20Hz~1kHzまでの広い周波数帯において、不要なノイズの90%を除去できるとSilentiumは説明しています。
実際にSilentiumが開発したノイズキャンセリング機能「Active Acoustics」を使っている様子は、以下のムービーを見るとよくわかります。
Silentium Active Acoustics on road noise - YouTube
今回のテストでは、時速50kmで走行した際の騒音について検証しました。
ノイズキャンセリング機能がオンになった走行中の車内には、こもったような走行音が響いています。騒音の程度は58~60dBほど。8dBというとわずかな差に思えますが、8dB増えた場合は、音の持つエネルギー量は6倍以上に増加します。
スマートフォンからノイズキャンセリング機能をオフにすると……
一気に車内に響く走行音が大きくなりました。騒音は8dBほど大きくなって66dBほど。
再びノイズキャンセリング機能をオンにすると、走行音が瞬く間に減少するのがわかります。
Silentiumは、ノイズキャンセリング機能によって乗員に静かで洗練された走行体験を提供することが可能であり、ドライバーの疲労を防ぐことができる上に、自動車に使われる遮音・吸音材料の依存を減らし、車体重量の軽減にもつながると主張。Silentiumの自動車部門で責任者を務めるAnthony Manias氏は、「Active Acousticsは自動車メーカーが車内の騒音を低減・キャンセル・強調する方法や、ドライバーが音を認識して反応する方法を変化させます」と述べました。
なお、走行中のBGMとして音楽を流しているケースについても、以下のムービーで確認可能です。
Silentium Active Acoustics with road noise and music - YouTube
すでにActive Acousticsは実用段階に入っており、ジャガー・ランドローバーが採用を決定しています。ジャガー・ランドローバーの改良先進技術スペシャリストであるIain Suffield氏は、「私たちは顧客にとっての天国を作ることに尽力しており、この新しいテクノロジーはキャビンから不要なノイズを取り除くことができます。これはエクスペリエンスをより静かにして、乗客の幸福を改善し、認知的負荷や反応時間を減らすのに役立ちます」とコメント。
また、ジャガー・ランドローバーのチーフメディカルオフィサーであるSteve Iley博士は、「ノイズキャンセリング技術は交通安全を向上させるだけでなく、顧客の健康と生活の質を向上させる可能性があります。新たな生活様式が出現している新型コロナウイルス後の世界では、プライベートな移動に対する顧客の期待が変化すると予想されます」と述べ、車内の快適性が従来以上に求められるようになる可能性があると示唆しました。
・関連記事
開けっぱなしの窓から入ってくる騒音が半分になる装置が登場 - GIGAZINE
飛行機の騒音を減らすため、地面に謎のギザギザ模様を刻んだ空港 - GIGAZINE
音の94%を遮断できる新しい素材を3Dプリンターで開発、静音ドローンの実現や騒音公害の対策にも応用可能 - GIGAZINE
普段何気なく目にしている「高速道路の防音壁」の知られざる歴史とは - GIGAZINE
「耳鳴りを抑える方法」が偶然にも車酔い軽減デバイスの研究中に発見される - GIGAZINE
14歳の少女が車の死角をなくして交通事故を減らすシステムを開発、「シンプルだがエレガント」との評価 - GIGAZINE
店の駐車場で車のキーが機能しなくなりアラームが鳴り響く謎の現象が数週間にわたって発生中 - GIGAZINE
・関連コンテンツ