取材

100台のカメラを備えたアジア最大級のモーションキャプチャースタジオ「オパキス」見学レポート、最先端映像を支える大道具・小道具とは


映画「GANTZ:O」や「デスノート Light up the NEW world」、ゲームシリーズ「龍が如く」など数多くの3DCG作品の制作で知られるデジタル・フロンティアが誇るアジア最大級のモーションキャプチャースタジオが「オパキス」です。昨今はソーシャルゲームなどでも利用するケースがある上に、パンデミックの影響によるリモート需要で活用されるケースもあり、スケジュールはぎっしり埋まっているとのこと。しかし今回、1日だけ空くタイミングがあったということで、2016年の本社への取材以来、4年越しでオパキス内部を見せてもらいました。

デジタル・フロンティア-Digital Frontier | SERVICES | MOTION CAPTURE | MOTION CAPTURE STUDIO スタジオ概要
https://www.dfx.co.jp/services/opakis/index.html

オパキス(お台場パフォーマンスキャプチャースタジオ)に向かうため、最寄り駅のゆりかもめ・テレコムセンター駅に到着しました。ここからはちょっと遠いので、車で移動。


オパキスのある青海流通センター1号棟に到着。


周辺は東京港の青海コンテナターミナルとなっており、トラックが行き交い、コンテナが山積みになっています。


一瞬、「間違ったところに来てしまったのでは?」と思ってしまう場所ですが、3階にちゃんと「株式会社デジタル・フロンティア」の文字がありました。


3階の一角、「デジタル・フロンティア」と書かれている部分が「オパキス」です。


オパキスの入口はこんな感じ。右下が人の出入りする扉なので、いかに巨大なデジタル・フロンティアのロゴが掲げられているかがわかります。


入室したらまずは検温と消毒。


これがオパキスのキャプチャーエリア。赤い枠に囲まれた15m×10m×4.5mという直方体のエリアに向けて1台約800万円のモーションキャプチャーカメラ・Vicon T160が100台設置されてます。規模としてはアジア最大級で、12名同時キャプチャーの実績があり、最大15名まで同時に撮影することも可能だとのこと。


今回オパキスの内部を案内してくれたデジタル・フロンティアCG制作部モーションキャプチャー室室長の越田弘毅さん(左)とデジタル・フロンティア執行役員経営企画・営業推進室室長およびバーチャル・ライン・スタジオ取締役の小北哲平さん(右)にキャプチャーエリアの広さを示すためにキャプチャーエリアに立ってもらいました。15人同時に撮影できるのも納得の広さです。


オパキスは、キャプチャーエリアを囲むように設置された梁だけでなく、足元にも多数のカメラが設置されている点が特徴的。座って行う所作の場合、カメラが上方にしかないと体に遮られてうまくキャプチャーできないことがありますが、足元にもあることで、上方のカメラの死角がカバーされています。


ハンガーに並んでいるのは、モーションキャプチャーを行う際に演者が着用するスーツ。


多くは規格サイズですが、中には特別なスーツも存在します。これは身長2m超のバスケットボール選手でも着られるキャプチャースーツの下半身部分。


子ども向けのスーツもあります。


スーツは上下セットに帽子・ベルト・手袋・靴・靴カバーと一式セットだと15万円ほどする高価なものなので、中には手作りしたというスーツもありました。


モーションキャプチャーを行う際は、スーツにこのマーカーを貼り付けます。マーカーもゴム球に再帰反射テープを貼って手作りしたもの。マーカーはあまり大きいとマーカー同士が干渉してしまうので、小さいほどキャプチャー精度が高まります。しかし、カメラでマーカーを捉える必要があるため、あまり小さいのも困りもの。オパキスは100台というカメラの台数によってマーカーをしっかり捉えられるため、他のスタジオよりも小さいマーカーを使うことができ、最終的なモーションキャプチャーの精度が高くなるとのこと。


エリア外周部は物置となっていて、キャプチャー時に用いる大道具・小道具類が所狭しと並んでいます。


撮影用セットの「扉」。骨組みのようになっているのはキャプチャー時にカメラの死角を減らすため。


骨組みのブロックを組み合わせてイスにしたり、高さを調整したりします。


車のシートや乗馬姿のキャプチャーに用いる木馬なども存在します。馬は骨組みではありませんが、これは人が乗っても大丈夫な強度を確保するため。


これは撮影に使う小道具。まるでウレタンの棒のようなものから、しっかりと柄の用意された木刀までいろいろな種類がありますが、これはアクション撮影時は動かす動作が多いため負担にならないように軽めのものを使い、ポージング時は武器の重量が構えに反映されるように重めになっているという使い分けのためです。長い剣でのアクションをキャプチャーする際に、剣先が本来は通らない場所を通ってしまうことを避けるために竹ひごを取り付けたり、銃の反動を再現するためにガスブローバックのエアガンを使用したりと、多様な撮影を行うためにさまざまな工夫が取り入れられていました。


極太眉毛のキューピー人形は赤ん坊の代わりに用いられるもの。赤ん坊を抱いたときの動きを再現できるように、砂を詰めて体重が調整されており、抱き上げるとキューピー人形とは思えないズッシリとした重みがあります。なお、眉毛はベルクロテープで、撮影時にマーカーを取り付けたいという要望があったために装着されたもの。


モーションキャプチャーツールにはShogunを使っています。一世代前のBladeからShogunに移行したことで、作業効率が大幅に上がったそうです。


5本の指の動きを破綻することなくキャプチャー可能。実際にキャプチャーした映像を見せてもらうと、確かに5本の指それぞれの動きを正確にキャプチャーできています。


キャプチャした映像の確認をしている様子。PlayStation 3のコントローラーでカメラを操作できるため、3DCGソフトの操作に慣れていない監督や演出家でも簡単に操作できます。


映画の撮影やテレビドラマの撮影というと、大勢の関係者がスタジオに来るイメージがありますが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大後は演者だけがスタジオに来て、監督や演出家はリモートで撮影に参加することが増えたそうです。そのためリモートでの撮影に対応するためにマイクを設置したり……


演者はリモート指示を受け取るためにFMラジオを使用したりしているとのこと。


感染対策として休憩スペースへの仕切り設置も行われています。スペースが広く必要なため、本来の休憩室だけではなく、キャプチャーエリア外周にも休憩スペースが広がっています。


キャプチャーエリア外とはいえ、すぐそばまでキャプチャーカメラが設置されているため、休憩中の演者のマーカーを拾ってしまわないようについたてが設置されていました。


設置されているT-160はViconのキャプチャー用カメラとしては一世代前のものですが、最新のV16と比較してもスペックの差はわずかで、まったく引けを取りません。しかし、最新の技術を用いて最先端の映像を生み出しているスタジオでの撮影で、小道具類はアナログなテクニックが活用されているというギャップはとても興味深い部分でもありました。

これまでもさまざまな映像制作で活用されてきたオパキスですが、コロナ禍以降はよりゲームアプリに関連する仕事が増加したり、あるいはリモート収録で役立ったり、スタジオのスペースが広いことでソーシャルディスタンスを取りやすかったりと、その強みが存分に生かされる状況になっている印象です。今後はますます多くの撮影に利用され、オパキスから生み出された映像に知らず知らずのうちに触れる機会が増えていくのかもしれません。

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in 取材, Posted by log1o_hf

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