インタビュー

デジタル・フロンティアに「GANTZ:O」をどう作ったのか徹底的に聞いてきた その1・キャラクター編


2016年10月14日(金)に公開された映画「GANTZ:O」はフルCGアニメーション映画として作られました。その制作を担当したのが「アップルシード」「EX MACHINA エクスマキナ」「バイオハザード ディジェネレーション」「バイオハザード ダムネーション」「鉄拳 ブラッド・ベンジェンス 3D」と、数々のフル3DCG作品で知られるデジタル・フロンティアです。

これまで「GANTZ:O」に関連して、原作者である奥浩哉さん、川村泰監督、さとうけいいち総監督にお話を聞いてきましたが、その総仕上げとして、デジタル・フロンティアで実制作に携わったスタッフの方々に、「GANTZ:O」を作るにあたってそれぞれのセクションがどのような役割を果たしたのか、細かい部分を徹底的に聞いてきました。

まずは「その1・キャラクター編」ということで、キャラクター造形を担当した池田直人さんのお話です。

CG制作部 プロダクションマネージャー 舟橋俊さん(以下、舟橋):
まずは「キャラクター」セクションからです。基本は、大きくメインキャラクターチームと妖怪キャラクターチーム、サブキャラクターチームというチームに分かれています。サブというのはモブキャラクターとか全般のことで、池田さんは妖怪部分のリーダーを担当しました。

GIGAZINE(以下、G):
あの山のように出てくるやつですよね。

CG制作本部 CG部 キャラクターアーティスト 池田直人さん(以下、池田):
そうですね。妖怪全般を担当していて、一番大変だったのがこの女体巨人です。

G:
この一番複雑怪奇なやつですね。

池田:
これがすごく大変でした。

川村泰監督(以下、川村):
これはめちゃくちゃダメ出しした気がします。

G:
めちゃくちゃダメ出し!?完成したものを見ていると「うわぁー!」と、正しく絶望を感じましたが、何にダメ出しをされたのでしょうか。

池田:
最初からこの見た目でフィックスした訳ではなくて、ダメな状態のところからいろいろバージョンアップを経て、この状態にようやくたどり着いたという感じで、最初のバージョンはもっとシンプルだったりしたんです。

G:
そうなんですね!

池田:
最終的にこういう状態ででき上がりました。

舟橋さん、川村監督、池田さん。現場ではこのように実際に画面を見せてもらいながら説明を受けました。


川村:
最初の状態とかは持ってない?

池田:
ないですね。ないし、見せたくないです(笑)

G:
見せたくない!?(笑)

池田:
恥ずかしいですから。これを作るのに使ったのがZBrushです。

舟橋:
これ面白いじゃん!

池田:
ZBrushの機能に、インサートマルチメッシュというツールがありまして、こう1体1体いろいろな女体のパーツを登録して……この乳房だけのパーツとかも用意して。


川村:
触るとそれになるということですよね。

G:
これ、ZBrushで作っていたんですね!

池田:
そうです。

G:
全然気がつきませんでした……。

池田:
この中に細い棒人間みたいなのが入っていて、この上にインサートマルチメッシュのツールでドラッグすると女体が生えてくるという挙動をするんですよ。

G:
これは作業画面を見ていると面白いですね。

池田:
バランスに気をつけながら女体を盛っていくという作業をひたすらやりました。ポリゴン数も四角ポリで200万ぐらいあったので、たぶんデジタル・フロンティア史上最多です。

G:
骨組みのところに女体を盛っていく訳ですが、期間的にはどれぐらいかかったのでしょうか。

池田:
僕はこれ以外にも妖怪全体を管轄していて、完全にこれに集中していた訳ではなく合間合間にやっていたので、期間自体はすごく長いんですが、正確な時間はちょっと分からないです。

川村:
一番最後まで引っ張ったのは女体ですよね。最初にやり始めてからどれぐらいでOKが出ましたっけ。

池田:
ちょっと覚えていないですけど、どのぐらいだろう。

G:
トラウマで思い出せないのでは……。

池田:
思い出したくないというのはあるかもしれません(笑)

G:
このときは厳しい方の監督だったんですね。

川村:
これは相当大変で、一番しつこくダメ出ししました。

G:
やっぱり、これは見せ場だからということでしょうか。

川村:
そうですね、「女体は出ないだろ」と皆さん思っている上で出ているので。

G:
僕も「これは無理だろう」と原作から思っていました。

川村:
実際に、漫画とも少し演出を変えているので、それを中途半端にはできないなと思っていたんです。

G:
なるほど。

池田:
最初はこの一体一体に陰毛が生えていたんですよ。

川村:
見たら妙に違う意味で気になりすぎるので、それはやめようという話になりました(笑)

G:
ここに至るまでいろいろなバージョンがあったんですね。

池田:
そうです。

G:
他のバージョンのダメになってしまったもので覚えているのは何かありますか。

池田:
最終的にはかなり気持ち悪い肌の質感、青ざめている感じだったり彩度が低かったりしているんですけど、もう少し健康的な肌色のバージョンがありました。


G:
その健康的なバージョンがダメだというのは何が理由だったんですか?

川村:
何かちょっとキン肉マン消しゴムみたいな感じになっていたので。

G:
あぁ、なるほど!(笑)

川村:
肌色のキン肉マン消しゴムが集っているみたいな。これは本当に僕も難しすぎると思いましたね。

G:
要するに、なかなかフィックスできない?

川村:
僕もイメージが結構ぶれて焦りました。

G:
実際に見てみるとイメージと違うという感じですか。

川村:
そうですね。より気持ち悪くしないと人形っぽく見えてしまうとか、大きさの加減が難しかったですね。

G:
劇中では動いているのしか見えませんでしたが、止まっているのを見るとすごくえげつないですね。

川村:
そうそう。

池田:
1体1体がキャラクター1体分のポリゴン数で、それがいっぱい積み重なって1体のキャラクターとして成立しているという感じです。大変でした……。

川村:
彼もGANTZが大好きで、配置も大体漫画を見て、漫画を見ると「ちゃんと見てるじゃん」という配置になっているんです。

池田:
こういうコマがちゃんとあるんですよ。

G:
おおー、掲載可でもモザイクだらけになりそうなすごい絵面ですね。

池田:
眼になっている部分もちゃんと人のパーツで構成されているという。

川村:
こういうデザインに関しては、ほとんど彼に注文しなかったですね。

池田:
好きにやりました。

G:
それでもこれはすごいですね……圧巻です。これは作りながらこういうイメージに一発で持って行けたものなんですか?

池田:
そうですね、原作にちゃんと描かれたコマがあるので、その配置にすれば大体イメージ通りのものができてきました。

G:
実際にこれを作ってみて、どの辺りが一番苦労したのでしょうか。

池田:
形状はわりとすぐにフィックスしたので、一番は質感の部分でしょうか。1人の人として見たらとんでもない色をしていて、部分的にはすごく捻挫したような色だったりするんですけど、そういうのが全体的に見た時に効いてくるというか。普通の人間の感じだと、引きの絵の場合どうしてもキン消しみたいな印象になってしまったんです。

G:
なるほど、その辺りの調整が大変で、典型的な寄りの絵と引きの絵で全然印象が変わってしまうんですね。

池田:
そうなんです。

G:
そのあたりが漫画とはちょっと違う部分だということですね。

川村:
表現手法が違うんです。

G:
表現するやり方が違うので全く違う問題が出てくると。

池田:
あと、ぬらりひょんの変形についても僕が担当しました。眼球がだんだんおっぱいになっていくという。


G:
あぁ、すごいシーンがありましたね。

川村:
これは本当にエフェクトとかじゃなくて、デフォームとテクスチャアニメーションでしょう?

池田:
そうですね。どう作ったかというと、この眼球がどろりとたるんでいくというのを、段階的にモデリングしていって、これを繋げてアニメーションさせると、眼がどろっと出てくる感じになるんです。普通は眼球って、キャラクターの顔とは別のモデルで球体をはめ込むんですけど、こいつの場合はどろりと出てくる必要があったので、身体と一緒に繋がっている形状としてモデリングして、そういう普段やらない様なことをしました。そうやって変形していくのを作っています。


G:
こいつは最後にアレになるんだから、眼球じゃないですもんね。

池田:
絵としてすごく寄りになるので、UVもおっぱい用に広めに取って、しっかりテクスチャが描ける様にしています。

G:
なるほど、後々のことを考えているんですね。

池田:
そう、専用の顔を作ったという感じです。

G:
これだけカスタマイズされた専用モデルだと、ボスキャラ感があります。

池田:
これが鱗のアニメーションのテクスチャなんですけど、鱗がだんだんボコボコと消えていくアニメーションがこのテクスチャによって再現されていて、この辺りが眼球のトップで乳首になる辺りなんですけど、ここからゾワゾワっとだんだん広がっていくというテクスチャのアニメーションが適用されています。これだけじゃなくてもっと細かい、眼球が沸騰するようなアニメーションも別のテクスチャで作っていて、そういう組み合わせでだんだん眼球が変形していくというのを作っています。

G:
こういうように眼球が変形していくというのは誰のアイデアなんですか?

池田:
これは監督のアイデアです。

川村:
何か言った記憶がある。

池田:
原作だと肉がめり込んで乳房がどろりと落ちる感じだったのですが、それだと映像化したときに物足りないということでディテールを加えようというオーダーでした。

G:
オーダーを受けてどうでしたか?

池田:
これは納得のリテイクでした。

G:
こうやってコマで見ると本当にすごいです。

舟橋:
かなり早い段階で、5月ぐらいに抜け出しましたよね。結構こういう変形物は後半戦でやるんですけど、キャラのところで一緒にやってもらったので。

川村:
モデラーに発注というかお願いした方が速いかなと僕が判断したのと、池田がすごくGANTZ好きなので「きっとできる」と思って頼みました。普通はやらないもんね。

池田:
そうですね。

川村:
普通はエフェクトチームかショットワークチームがやるんです。

G:
なるほど。

池田:
やっていて面白かったです。

G:
やっぱりこういうのは挑戦しがいがありますか。

池田:
はい。上手くいかないときは「エフェクトがやってくれよ、何で俺がやらないといけないんだ」と思っていたんですけどね(笑)今だから言えるんですけど、楽しかったです。

G:
なるほど、これは本当にお見せできないのが残念ですね。それにしてもすごい。

川村:
意外と分からないことがたくさんありますよね。

G:
これは言われて初めて「なるほど!」という感じです。

舟橋:
女体の首が吹き飛んで再生するところとかがあるじゃないですか。あれは演出上ベロから先が出てきているのですが、普通に映画を見ていると気づかないだろうと思います。

G:
なるほど、それにしてもこの細かいのはすごいです。

池田:
女体だけだと画像がまったく使えないかもしれないので、使えるお話も用意してきました。

G:
ありがたいです。

池田:
妖怪は大体着物を着ているキャラクターばかりなので、着物のモデリングについてです。業界では定番の「Marvelous Designer」という服を作る専用のシミュレーションソフトがあるんですけど、こういう型紙を用意してくっつけてあげるともう着物になるという。


川村:
すごい時代ですね。

G:
このソフトを見たときは「すごいな!」と思いました。こんな服飾デザイナーみたいなソフトがあるのかと。

池田:
こうして作ることによってシミュレーションが自然になるんです。前向きにしたときにちゃんと着物が動いていますよね。着物系は大体シミュレーションをベースに作っていて、序盤で殺されるこいつも型紙というか、開いた状態でシミュレーションをかけて、この皺をちゃんと作っています。そうすることで、ショットで動いたときに自然な動きになります。

G:
これすごくキモかったですね。今回はあんなにたくさんの妖怪がいましたが、ぬらりひょんの女体は論外として置いておいて、その次ぐらいに大変だったのは何でしたか?

池田:
そうですね……僕が担当した訳ではないんですが、社内では「悪魔ぬらりひょん」と呼んでいるドクロのあいつが大変でしたね。ダメージも込みで、破壊も多いし大変でした。ラスボスということで豪華に作らないといけないというのと、終盤でバンバン撃たれまくって破壊の差分が大量に必要だったんです。撃たれる度に別のアセットに切り替えというのを何個も仕込まないといけなくて。


舟橋:
これもポリゴン数がやばそうですね。

池田:
やばかったです。

G:
コレの場合、何がどのようにやばくなっていくんですか?

舟橋:
重くてレンダリングが……とか。

川村:
後ろの工程が悲鳴を上げていますね。

池田:
ディテールが多いので、その分データ量は多くなってしまいます。なので、キャラチェックの段階で作っているときは別に問題なくても、実際にアニメーションを入れたりシミュレーションをかけたりするときにレンダリング時間が増大したりとか。

川村:
後は、そのシーンを開くのに20分~30分ぐらいかかったりします。

G:
うわぁ……。

舟橋:
妖怪の話をしてもらいましたけど、物量自体が多くて、当然原作よりはキャラの数が減っていたりするのですが、妖怪含めてキャラだけで100体以上いるので、そういう物量というところではキャラチームがすごく苦しんだと思います。

池田:
キャラ数も多かったですし、殺される数も多くて、ダメージを受けた差分を一体一体作らないといけなくて。

舟橋:
殺されセット。

G:
あはは(笑)

池田:
これも過去のプロジェクトではあまりなかった感じですね。こんなにキャラが死ぬプロジェクトは過去にありませんでした。

G:
そもそもこんなにバンバンぶっ殺す原作がありませんからね。いやぁ、これは見応えがあって面白いです。

舟橋:
映画で見ている分にはパーンと死んで一瞬ではけていくやつですけれども。

G:
モデルとしてはこんなにキッチリ作るんですね、すごいです。実際、こんなにたくさんこういうものを作っていて、精神状態は大丈夫なものなんですか?

池田:
慣れちゃいますね。会社としても「バイオハザード」だったり、そういうグロいものを作ることが多くあるので。

G:
逆に言うと今までのノウハウみたいなものが活きているところはあるんですね。

池田:
活きています。かなり過去のプロジェクトのノウハウのストックで今回を乗り切れたというのはあります。

G:
なるほど。特にノウハウが役に立ったというか、ノウハウが適用できたのはどういう様な部分ですか?

池田:
こういうグロいぐちゃぐちゃのモデルライブラリみたいなのがあるんですよ。過去に作ったいろいろな映画だったりとかCGの案件だったりとか、そういうものがどんどん溜まっているので。


G:
それはすごいですね。

池田:
それをリファレンスとして作るのはそんなに時間がかからないし、新規で作るよりはかなり工数短縮に繋がりました。

G:
過去の財産をしっかり活用している感じですね。

池田:
そうです。殺された妖怪は一瞬で見えなくなってしまうんですけど、脳みそのモデルが作ってあったりするんですよ。

G:
その辺りはやはり監督が「ちゃんと作れ」という指示を出されたんですか。

川村:
そんなには言っていないです(笑) ちょっと作り込みすぎたかな?まぁ実際そんなに時間をかけていないよね。

池田:
そうなんです。大変だったんですけど、先ほども言った様にライブラリが充実していたので、それを適用すれば短時間で物量がこなせました。

G:
そのライブラリがあるのはすごいですよね。初めて作るとしたらそんなものはないですし。逆に「ライブラリがあるから、この辺りはそんなに時間をかけなくてもできるんじゃないか」というのも考えるものなんですか。

川村:
ちょっとは思いましたけど、思ったよりちゃんと作ってしまったなという感じです。

舟橋:
ダメージ系も当初想定していたよりも工数を食っていますからね。サッとできるとはいえ、ちゃんと作り込むので。

G:
なるほど、そんな感じなんですね、本当にすさまじいです、ありがとうございます。

・つづき
デジタル・フロンティアに「GANTZ:O」をどう作ったのか徹底的に聞いてきた その2・背景編 - GIGAZINE

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「すこしふしぎ」なジュブナイルを目指して作品を作っている「GANTZ:O」原作者・奥浩哉さんにインタビュー - GIGAZINE

初監督で「GANTZ:O」を絶妙なフルCGアニメ映画として完成させた川村泰監督インタビュー - GIGAZINE

「GANTZ:O」をGANTZを知らない人でもわかる映画に作り上げたさとうけいいち総監督にインタビュー - GIGAZINE

デジタル・フロンティアに「GANTZ:O」をどう作ったのか徹底的に聞いてきた その2・背景編 - GIGAZINE

デジタル・フロンティアに「GANTZ:O」をどう作ったのか徹底的に聞いてきた その3・モーションキャプチャー編 - GIGAZINE

デジタル・フロンティアに「GANTZ:O」をどう作ったのか徹底的に聞いてきた その4・アニメーション編 - GIGAZINE

デジタル・フロンティアに「GANTZ:O」をどう作ったのか徹底的に聞いてきた その5・フェイシャル編 - GIGAZINE

デジタル・フロンティアに「GANTZ:O」をどう作ったのか徹底的に聞いてきた その6・セットアップ編 - GIGAZINE

デジタル・フロンティアに「GANTZ:O」をどう作ったのか徹底的に聞いてきた その7・エフェクト編 - GIGAZINE

デジタル・フロンティアに「GANTZ:O」をどう作ったのか徹底的に聞いてきた その8・コンポジット編 - GIGAZINE

in インタビュー,   映画,   アニメ, Posted by logc_nt

You can read the machine translated English article here.