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1日の売上を500万円から7億8000万円に1年たらずで成長させた独立系オンライン書店サービス「Bookshop」とは?


Amazonの台頭により実店舗の書店が存続の危機に追いやられる中で、アメリカではコミュニティの場を兼ねた独立系書店が復活を遂げているといわれています。この流れを受け、独立系書店が独自のオンラインショップを開設できる「Bookshop」が人気を集めており、2020年3月時点で1日の売上が500万円ほどだったところを、1日の売上げを7億8000万円にまで成長させています。

'This is revolutionary’: new online bookshop unites indies to rival Amazon | Booksellers | The Guardian
https://www.theguardian.com/books/2020/nov/02/this-is-revolutionary-new-online-bookshop-unites-indies-to-rival-amazon

Amazonがオンライン書店を拡大させ月額1000円での電子書籍読み放題サービスなどを展開していくにつれ、現実世界に存在する実店舗は需要が低下し、2014年頃には次々に閉店を余儀なくされていきました。その一方で、「独立系書店にはAmazonにはない魅力がある」として注目を浴びるようになり、2017年頃には独立系書店が復活を遂げていると報告されています。実店舗としての独立系書店はただ本を買う場所ではなく、コミュニティとしても機能し、多くの人を集めるようになりました。

アメリカ・ロサンゼルスにある「The Last Bookstore」もその1つで、反Amazonを掲げています。The Last Bookstore(最後の書店)という名前もAmazonなどの影響で絶滅の危機に瀕する本屋を皮肉って名付けられたとのこと。

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そしてこの流れをくみ、アンディ・ハンター氏は2020年1月に独立系書店が自分自身のオンライショップを立ち上げることが可能なサービス「Bookshop」をスタートさせました。BookshopはAmazonに代わるオンラインでの書籍購入手段となり、書店側は売上の全利益(カバー価格の30%)を得ることが可能であるため、地元の独立系書店への支援にもつながるとのこと。カスタマーサービスと配送は書店とその販売代理店パートナーによって処理され、配送に2~3日の余裕を持たせる場合はディスカウントが行われる仕組みです。

Bookshop: Buy books online. Support local bookstores.
https://bookshop.org/


ハンター氏によると、アメリカでのサービス展開は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で大きく拡大したとのこと。当初は250書店のみがサービスに登録していましたが、11月の時点ではこの数が900店舗にまで増加しています。ハンター氏は「2月の総売上は5万ドル(約520万円)でしたが、3月には1日で5万ドルを売り上げるようになり、4月には1日の売上額が15万ドル(約1600万円)にまで増加しました」と述べており、11月時点では1日に750万ドル(約7億8000万円)相当の本を売り上げるようになったことを明かしています。

この1年の出来事についてハンター氏は「会社には私の他に4人の従業員がいるだけで、仕事は自宅で行っています。朝はできるだけ早くに起きて、夜は可能な限り遅くまで作業しており、全てを仕事に捧げています。手に汗を握るような経験ですが、常に書店から『あなたのおかげで家賃や今年の健康保険を払うことできました。本当にありがとう』というメッセージを受け取っているので、信じられないほどに満足しています。ストレスの多い気が狂うような状況で働いていている人は、自分が満足できることを行うといいですよ」と述べています。


なお、Bookshopは社会や公益のために事業を行っている「Bコーポレーション」の認証を受けており、規則によりAmazonを含むアメリカの大手小売業者に買収されることが禁じられています。

Amazonの成功は、メーカーやブランドから個性を奪い、全てにAmazonブランドを冠する「アグリゲーター」の手法によるものだとかねてから指摘されていました。物を売るときに売り手がAmazonを使わざるを得ない状況があるにもかかわらず、全ての個性が奪われるため、売り手は「価格による競争」を行わざるをえません。このような状況を打ち破るのは、売り手の個性を重視した「プラットフォーム」型のサービスであると考えられてきましたが、Bookshopはまさにこのプラットフォーム型サービスであるといえます。

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ハンター氏は、Bookshopの成功が「地元の書店に対する人々の愛情」によるものだと考えています。「Amazonはどんどん強力になり、100年続いてきた書店たちが存続の危機に陥っていました。私たちの成功は、多くの人々がこのような状況を懸念し、愛する書店を復活させたいと考えたことによるものです。パンデミックによりこの懸念はいっそう増しましたから」とハンター氏はコメントしています。

もともとハンター氏は2021年~2022年の間にイギリスでのサービス展開をする予定でしたが、アメリカでの成功を受けてイギリスの作家・出版社・書店から立ち上げの要望が強まったため、2020年10月にイギリスでのサービスを開始。既にイギリスの130書店がBookshopに登録しており、この数は2020年末までに200にまで増加するとみられています。なお、イギリスのBookshopは、オンラインショップサービス「Etsy」の元国際担当ヴァイスプレジデントを務めたニコール・ヴァンダービルト氏が運営を行う予定となっています。

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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