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厳しい都市封鎖では新型コロナウイルス感染症の拡大を防げなかったという南アフリカのデータ


南アフリカ共和国では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を受けて2020年3月27日に都市封鎖(ロックダウン)が始まりましたが、生活必需品の購入や医療を受けること以外の外出が禁止された厳しいロックダウンでは、感染拡大を防げなかったというデータが示されました。一方で、ロックダウンを実施することで逆に感染が広がり、意図せず「集団免疫を獲得したのでは」ともいわれています。

COVID-19 in South Africa - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2590113320300183?via%3Dihub

Lockdown didn't work in South Africa: why it shouldn't happen again
https://theconversation.com/lockdown-didnt-work-in-south-africa-why-it-shouldnt-happen-again-147682

南アフリカで実施された「レベル5」のロックダウンは世界で最も厳しい封鎖の1つとされ、食料品の買い物や医療などの重要な目的以外のために外出することが禁じられました。日常に必須ではないお店は全て閉店となり、タバコとお酒の販売も禁止されたとのこと。


研究者によると、レベル5のロックダウンが効果を発揮したとすれば、ロックダウンが開始されてから7~14日後に感染率が大幅に減少したはずとのことですが、実際にはこのような減少は起こりませんでした。

加えて、レベル5のロックダウンがレベル4・レベル3となって移動制限が緩和されて経済活動が再開した時に、感染率の増加はみられていません。

以下が時間の経過ととともに、南アフリカでCOVID-19がどのように広がっていったのかを示すグラフ。縦軸は新規感染数、横軸が時間の経過を示し、矢印の数字はロックダウンのレベルを意味します。レベル5、レベル4のロックダウンを実施している最中もじわじわと感染数は増加し、レベル3のロックダウン実施中にピークを迎え、レベル2に入る時にはグラフが減少傾向に転じています。レベルの高いロックダウンが効果を発揮している場合、レベルを下げることで感染率が上昇するはずですが、そのような変化は見られていません。


このような分析から、南アフリカにおいてロックダウンは感染拡大の防止に効果を発揮しなかったと、研究者は結論づけています。

研究者は、南アフリカにおいてロックダウンが効果的ではないことは最初からわかっていたことだったと指摘。南アフリカは人口過密であり、入浴場を共有しており、困窮した人々が社会的保障金や食料の配給のため列を作らなければならないためです。また、南アフリカはヨーロッパやアメリカに比べて高齢者が少なく、COVID-19の影響を受ける人がそもそも少ないという違いがあったことについても言及しています。

ロックダウンが開始される前、研究者はこれらの点について政府に警告したとのことでしたが、ヨーロッパ側の圧力に屈したのだと述べられています。

厳しいロックダウンにより、南アフリカでは2020年の第2四半期における労働人口が520万人も減少。最も貧しい労働者の50%は富裕層よりも10倍もロックダウンの影響を受けることになりました。加えて、4月の国勢調査では月末までに食べ物を買うお金がなくなると答えた人は全体の47%だったと示されています。

またロックダウンによりお店が営業を続けられなくなったところも多く、第1四半期と第2四半期でGDPは16.4%減少し、年単位のGDP成長率は-51%になるものとみられています。

そして、南アフリカではHIVを含む感染症の検査拡大を推進していますが、移動制限が課されることにより、3月時点では160万人だった検査人数が4月には59万人と大幅に減少。検査の中断や薬が入手しづらくなったことにより、今後5年間でHIVや結核による死亡数は10~20%増加するものと予測されています。

研究者は、COVID-19について情報がわかっていなかった3月時点でロックダウンを行ったことについては理解できるものの、実際にロックダウンが効果を発揮しなかったというデータが判明している以上、これ以上のロックダウンをすべきではないと主張しています。

by Martyn Smith

一方で、南アフリカのいくつかの州で実施された研究では、多くの人がCOVID-19の抗体を保有していることが示されており、「南アフリカは集団免疫を獲得した可能性がある」とも報じられています。ウイルス学者のMarvin Hsiao氏は、ロックダウンによって人々が多くの人が食料品や社会保障を受け取りに行かざるをえないようになり、人口過密の南アフリカにおいて行列を作る上で社会的距離を取ることが不可能だったことから、逆に新たな「新型コロナウイルスの感染ネットワーク」が作り出され、そこで集団免疫が獲得されたのではないかとみています。

免疫がいつまで持続するのかという疑問は残るものの、他のコロナウイルスの傾向から、2~3年は続くのではないかとみられています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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