サイエンス

新型コロナウイルスを防ぐための渡航制限は見直す時期に来ている


新型コロナウイルス感染症は「パンデミックと呼べる段階ではない」と世界保健機関(WHO)は2020年2月25日に宣言しました。しかし、感染は世界中で広がっており、2020年2月26日付で(PDFファイル)世界での感染者数は8万1109人となっており、アジアだけでなくイランやイラク、イタリア、クロアチア、オーストラリアなどで症例が報告されるようになってきています。このような状況を受けて、専門家らが「世界で行われている公衆衛生対策は見直す時期に来ている」と指摘しています。

The coronavirus seems unstoppable. What should the world do now? | Science | AAAS
https://www.sciencemag.org/news/2020/02/coronavirus-seems-unstoppable-what-should-world-do-now

2020年2月27日時点で、世界で行われている公衆衛生対策は「封じ込め」に重点が置かれています。つまり、中国国内でのウイルスの感染ペースを落とすとともに、中国からの渡航を制限し、渡航者があれば追跡して検疫を行うことで、ウイルスが中国国外で流行することを防ぐという戦略です。しかし、ウイルスが世界中に拡散されてしまうと、このような対策の意味は小さくなります。


医師でありアメリカ国家安全保障会議でディレクターを務めていたLuciana Borio氏は「国境対策は効果が薄れ実現不可能になりつつあるので、大量のワクチンが利用可能になるまでは、コミュニティ緩和対策が行われるようになるでしょう」という見方を示しました。

しかし、感染拡大を防ぐために取られた渡航制限を、いつ緩和すべきかという議論について、専門家たちの意見はバラバラです。8万人以上の感染者と3000人近い死者を出している新型コロナウイルスですが、いまだ感染の97%は中国国内で起こっています。米国国立アレルギー感染症研究所の所長を務めるAnthony Fauci氏は「渡航制限がなければ、渡航に関連した感染者が増えていたでしょう」と述べ、渡航制限を評価していますが、一方で「渡航制限はわずかな時間稼ぎにすぎない」という疫学者からの指摘もあります。加えて、渡航制限により医療品が必要な場所に届かなくなり、国民の信頼を損ね、裏目に出る可能性すらあります。

そして、感染拡大が世界中に広がると、既に国内に感染者が多くいるのに渡航を制限することが、費用対効果を考えて有益ではなくなります。中国は医薬品から携帯電話までさまざまなものを輸出しているため、製造におけるサプライチェーンを大きく混乱させています。ハーバード大学の疫学者であるMarc Lipsitch氏は「明日渡航制限を緩和することは、政治的にはかなり難しいですし、賢明ではないかもしれません。しかし、過去数日のニュースのペースが今後1週間続けば、渡航制限は主要な対策でないと明白になるでしょう」とコメントしました。


中国国内で行われている封じ込め対策については、「有益だった」とWHOのBruce Aylward氏は述べています。中国のウイルス感染のピークは1月23日から2月2日となっており、湖北省に住む5000万人を封じ込めたことで、他の都市がウイルス対策に割く時間を作り、「おそらく数十万人」の感染を予防できたと考えられています。ただし、湖北省の封じ込めは住人の精神的・肉体的幸福を犠牲にしたものであり、「中国以外の国では考えられない方法」だと公衆衛生法を専門とする法律家のLawrence Gostin氏は述べています。

中国以外の国がとり得る対策としては、公共交通機関の停止、娯楽施設の閉鎖、公共集会の禁止が挙げられます。これらは中国で実施された対策のうち、最も効果があったものとのこと。これらの対策は環境制御下の実験ではないので、もちろん科学的に証明された方法とはいえませんが、効果が高いと専門家はみています。一方で、子どもが集まる学校を閉鎖すべきかどうかという問題については、感染拡大における子どもの役割が明らかではないため、結論がでていないそうです。また国によっては人の移動を制限せず、会社や学校を解放し、検疫を行わないところもあります。これについてオックスフォード大学の疫学者であるChristopher Dye氏は「公衆衛生に関して、これは非常に大きな決断です。ウイルスを自由に解放しているのと同じですから」とコメントしました。

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in サイエンス, Posted by logq_fa

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