「犯罪者の巣窟」と呼ばれたヨハネスブルグの「ポンテタワー」の現状がわかるドキュメンタリー
南アフリカ共和国最大の都市ヨハネスブルグは外務省が危険情報を出している都市であり、中でもヨハネスブルグ中心部にあるヒルブロウ地区はギャングの本拠地にもなっている危険地帯のひとつ。そんなヒルブロウ地区にそびえ立つ南半球で最大級の超高層マンション「ポンテタワー」は繁栄の象徴と言われましたが、アパルトヘイト(人種隔離政策)以降にギャングが侵入したことで治安が急激に悪化し、犯罪の巣窟と化してしまいました。そんなポンテタワーの現状を撮影したドキュメンタリームービーが公開されています。
Ponte Tower on Vimeo
ポンテタワーは54階建てで高さは173メートルの超高層マンション。ヨハネスブルグを一望できる一等地にあるものの、アパルトヘイト後にギャングが侵入したことでほぼ全ての居住者が退去。一時期はギャング団・麻薬の密売人・売春婦が押し寄せ、「性的サービスからドラッグまでなんでも数分で手に入る」とまで言われていたポンテタワーですが、ある時期からセキュリティを改善して今では多くの住民が生活するようになっています。
空洞になっているマンションの中央は「コア」と呼ばれており、5階までゴミで埋まっていたこともあったそうです。このドキュメンタリームービーでは、そんなポンテタワーの現状を確かめるべく、住民たちにインタビューを行っています。
外から見たポンテタワーはこんな感じ。周辺の建物より飛び抜けて巨大であることがわかります。
金融ジャーナリストのマルコム・リー氏は、ポンテタワーに住居を持つ数少ない白人男性。リー氏によると、ポンテタワーは犯罪やドラッグがはびこり、自殺が相次ぐ危険な場所と言われていましたが、徐々に良い方向へ変化を見せているとのこと。
学生のKhanyisani君の一家は1990年ごろからヒルボウ地区に移り住み、ポンテタワーで生活を始めて5年が経っています。
Khanyisani君は5人兄弟の長男で、両親を合わせて7人家族です。カメラを向けられたKhanyisani君の母親は照れながらポーズをとっており、殺人や暴行がはびこる危険地区の中にある建物には見えません。
ポンテタワーには多くの家族が生活しており、その内の1人であるクライヴさんは「ポンテタワーは静かでクールなマンションさ。住人は礼儀正しいし、周りではなんでも手に入るんだ」と語っています。
ポンテタワーで暮らすダニエル君は「ここは良いところだけど、怖いところでもあります。でも僕はおびえません。もう慣れてしまったから」と現実味のあるコメント。
一時は荒廃の象徴と言われたポンテタワーですが、最上階の部屋にはジャグジーがあるという高級マンション。リー氏の部屋はヨハネスブルグが一望できる、最上級の立地です。
家賃は安くないそうですが、コアにゴミが積み重なっていることが話題になると、土地の価格がガタ落ちしたとのこと。今でもゴミの撤去は完了していません。
安全かどうか尋ねられたKhanyisani君は「窓の話をしましょう」と、ある出来事を話し始めました。
「ちょっと前に7歳の子どもが友達と話していたんです。こんな風に壁にもたれながら」
「すると窓が外れて落ちてしまったんです。子どもを道連れに」と、Khanyisani君は話しました。ポンテタワーは荒廃していた当時の建物の破損が修繕されておらず、痛ましい事故が起こる危険性が残されています。
それでもポンテタワーには多くの子どもたちが住んでいます。
ポンテタワーの所有者は2007年に一度変更されています。多額の資金が投入されて再開発計画が立ち上がりましたが、世界金融危機が起こったために実現していません。
クライヴさんは「ここはヨハネスブルグで最も魅力的なマンションなんだ。誰もがここに住みたいと思っているよ」と話します。
昨今では階下の商業層の改装が進められており、いくつかの店舗がオープンし始めており、クライヴさんの家族もポンテタワーをとても気に入っているとのこと。
1970年代まではアパルトヘイト政策によって白人居住区だったヒルブロウ地区ですが、リー氏によるとポンテタワーに住んでいる白人は知っている限り6人のみ。
その6人の白人はリー氏と同じような52階の部屋に住んでいるとのこと。リー氏が黒人住民に話しかけてもあまり良い雰囲気は生まれないそうで、白人と黒人の間に交流がなく、人種の壁がある様子。
ポンテタワーには24時間体制でセキュリティが配備されており、指紋認証が設けられたアクセスポイントもあるとのこと。そのため誰かが家に侵入したり、暴行を受けたりする心配はあまりないそうです。しかしながらリー氏は「夜に友人を自宅へ招待するのは危険があるため、セキュリティにいくらかお金を払う必要があります」と話しており「ここに長くとどまる秘策は、セキュリティと仲良くしておくことです」と述べています。
ポンテタワーで暮らす人々の多くは、最上階で暮らすことは経済的に不可能なぐらいの生活を送っています。ポンテタワーはヨハネスブルグ市都市圏内の危険地帯のひとつと言われるヒルブロウ地区では最も治安が良い場所であるとのこと。
一時は荒廃して刑務所にする計画まで挙がったポンテタワーですが、今や誰もが入居をあこがれる夢の一等地になりつつあるというわけです。
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