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不平等があると人は「何もしていない人」をも罰しだすと実験で判明


人が誰かを罰する時、その理由には主に「社会適応の平準化」と「抑止」という2つの目的があるといわれています。前者は法令や道徳を基準にして全員が社会に正しく適応するため、後者は罰によって他人が同じことを繰り返さないようにするためですが、「所有している富が不平等な状況は、他人を罰する動機になり得る」という第3の目的の存在を示唆する心理学実験が報告されています。

Punishment is strongly motivated by revenge and weakly motivated by inequity aversion - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1090513820300696?via%3Dihub


The urge to punish is not only about revenge – unfairness can unleash it, too
https://theconversation.com/the-urge-to-punish-is-not-only-about-revenge-unfairness-can-unleash-it-too-145990


ボストン大学心理学科博士課程のポール・ドゥッチマン氏は、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン進化・行動学科のニコラ・ライハニ教授と共同で、Amazon Mechanical Turkに参加するアメリカ人2426人を対象に、2人参加型の心理学実験を行いました。

研究チームは、まったく面識がない2人にある程度のまとまったお金を持たされた状態でペアを組ませ、一方を「レスポンダー」、もう一方を「パートナー」と設定しました。そして、ペアを無作為に2群に分類し、それぞれ別の条件で実験を行いました。

第1群には、パートナーに「ペアになっているレスポンダーからお金を盗むか、何もしないかを選ぶ」ように、第2群のパートナーには「自分のお金を無条件で増やすか、相手のお金を増やすかを選ぶ」ように伝えました。また、被験者に渡す初期所持金額も平等ではなく、同じペアでもあえて差を付けたそうです。そして、レスポンダーにはパートナーのとった行動に対して、罰金を科すことを許可したとのこと。


研究チームは、第1群ではお金を盗んだことが罰金の動機になると考えていました。しかし、初期の所持金額が特に不平等だった場合、たとえパートナーがお金を盗んでいなくても、レスポンダーがパートナーに罰金を科す場合も見られたとのこと。

また、第2群でパートナーが相手のお金を増やさずに自分のお金を増やし、ペア内で所持金に大きな差が出ると、盗難が発生していないにもかかわらず、レスポンダーがパートナーに罰金を科すケースが確認できたそうです。

この結果から研究チームは、「人は盗難などの具体的なルール違反がなくても、不公平さだけで罰の動機付けができると示された」と論じ、復讐心だけが懲罰の動機になるとは限らないとしています。


ドゥッチマン氏は、「刑罰が公平性を維持するという役目を果たしうるということは、抑止と資源の平等化の両方が祖先の遺伝的適応度を高めた可能性があることを意味しています。言い換えれば、他人を思いとどまらせたり、競争の場を平等にしたりするために他人を罰した人は、罰しなかった人よりも多くの遺伝子を残してきたのです」と述べました。

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in メモ, Posted by log1i_yk

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