メモ

個人の性格が「富の公平な分配」についての考えに影響しているとの研究結果


資源や財産を分配する時には公平性が重要ですが、関係者全員が公平だと感じる分配方法を見つけるのは困難であり、時には争いに発展することもあります。メルボルン大学の研究チームが行った研究では、「公平性の規範」をどれだけ重視するのかは、その人の性格によって左右される可能性があることが示されました。

How Do Basic Personality Traits Map Onto Moral Judgments of Fairness-Related Actions? - Milan Andrejević, Luke D. Smillie, Daniel Feuerriegel, William F. Turner, Simon M. Laham, Stefan Bode, 2021
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/19485506211038295

Personality traits may drive our ideas about fairness and sharing
https://theconversation.com/personality-traits-may-drive-our-ideas-about-fairness-and-sharing-168194

世の中には資源を共有するための単一の解決策は存在せず、代わりに広く受け入れられている「複数の道徳的スタンスや規範」が存在します。たとえば相続した遺産を兄弟で分配する場合、「その他の情報に関係なく遺産額を均等に分配する」という方法や、「個人の経済状況を考慮して遺産額を割り当てる」方法、さらに「病気の親の面倒を見た人物が最も多くの遺産を受け取る」方法など、さまざまな分配案が考えられます。このうちのどれが最も道徳的に公平なのかを明確に決めるのは難しく、人によって意見が異なる可能性があります。

過去の研究では、複数の道徳的な規範がある状況において、人々は「最も自分の利益になるもの」を支持したがることが示されています。しかし、自分に直接的な利害関係がない場合でも、人は特定の規範に対する好みを持っていると考えるのが自然です。そこでメルボルン大学の研究チームは、「個人の性格特性」が公平性の規範を重視する傾向に及ぼす影響について調査しました。


研究チームはまず、「10ドルを手にした意思決定者『A』が、受託者『B』に分け前を与える」というシナリオで、「A」が「B」に渡す分配金額をさまざまに設定し、「A」の分配が道徳的かどうかを被験者に判断してもらいました。

次に、前述の「A」と「B」のラウンドの前に「10ドル(約1100円)を手にした『B』が、受託者『C』に分け前を与えていた」というラウンドが実は存在し、「A」はこれを踏まえて前回の意思決定者「B」に分け前を与えたことを明かします。そして被験者に対し、改めて「A」の分配が道徳的かどうかを判断してもらい、各被験者が持っている公平性の規範と、それをどれほど重視するのかの程度を測定しました。


その結果、人々は「相手に分配する金額が多いほど道徳的である」と考えるという傾向が確認されました。その一方で、「受け取った金額に比べて分配する額が低いのは道徳的に悪だと考える人」「受け取った金額に比べて分配する額が低い人にも寛大な判断をする人」「均等に分配することが道徳的だと判断する人」など複数のタイプがみられた他、公平性の規範を重視する程度についてもさまざまな個人差が確認できたとのこと。

続いて研究チームは、被験者のビッグファイブ性格特性を調べ、各個人が持っている公平性の規範を重視する傾向と合わせて分析しました。ビッグファイブ性格特性とは、人間の性格と精神を記述するために一般的に用いられる5つの因子「外向性」「協調性」「誠実性」「神経症的傾向」「開放性」に基づいた分類法です。

分析の結果、「協調性」「誠実性」「外向性」「開放性」のスコアが高い人において、自身が持つ公平性の規範を重視する傾向が明らかになりました。これらの人々は他人が公平性の規範を守っているかどうかに敏感であり、規範の乱用には厳しい判断を下したと研究チームは述べています。


研究チームは事前の仮説として、「協調性」のスコアが高い人は他人と接する時の親切さや礼儀正しさ、思いやりの度合いが高いとされているため、不公平に敏感であり、より公平性の規範を重視するだろうと予想していました。その一方、「誠実性」「外向性」「開放性」のスコアも規範の重視と関係していた点は驚きだったとのことで、さらなる研究が必要だと述べています。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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