食べるだけでストレスが吹き飛ぶ「ストレス解消食」や「脂肪を燃焼させてくれる食事」は存在するのか?


新型コロナウイルス感染症により、多くの人がストレスの影響を感じたり、うつ病や不安障害に悩まされたりしている中、「ストレス解消食」がにわかに注目を集めています。食べるだけでストレスを解消させてくれる食事が本当にあるのかどうかや、ストレスでお腹に脂肪がついてしまうのを防ぐにはどうすればいいのかについて、栄養士のモニカ・レイナゲル氏が解説しています。

What Foods Relieve Stress and Prevent "Stress Belly"? | Nutrition Diva
https://www.quickanddirtytips.com/health-fitness/mental-health/can-your-diet-help-reduce-stress

レイナゲル氏によると、肉体的なストレス反応である「生理的ストレス」と、人々がストレスを訴えている時に感じている「心理的ストレス」はしばしば異なるとのこと。そのため、生理的ストレスに焦点を当てた研究で「ストレスに効果がある」と報告された食べ物でも、食べて気分が改善するとは限らないそうです。


生理的ストレスに注目した研究の一例としては、血糖値とホルモンの関係を調査した1999年の研究が挙げられます。この研究を主導した医師のDavid Ludwig氏は、肥満と診断された10代の少年12人にグリセミック指数(GI)を3段階に分けた食事を与えて、血糖値や血中のホルモンの変化を調べました。GIとは、食品を摂取した際に血糖値が上昇する度合を、ブドウ糖を100とした数字で表したもので、GIが高ければ高いほど血糖値が上昇しやすいことを示しています。

Ludwig氏の実験の結果、GIが高い食事をした子どもほど血糖値が乱高下したことが判明。また、ストレス反応と関係が深いアドレナリンというホルモンも、GIが高い食事をとった子どもほど多かったとのこと。

砂糖や精製された炭水化物などGIが高い食事を摂取することが、ストレスと関係があることが示唆されている一方で、逆の主張をする研究者もいます。ハーバード大学病院の減量施設の創設者であるジュディス・ワートマン氏は、自著「The Serotonin Power Diet」の中で、ストレスに対して効果がある神経伝達物質のセロトニンの産生を促すために、精製された炭水化物を大量に摂取すべきだと主張しました。

専門家が正反対なように見える主張を行っていることについて、レイナゲル氏は「2人の科学者が矛盾しているように見えるのは、両者が全く異なるものを測定しているからです」と述べています。


レイナゲル氏によると、上記の2つの研究で焦点となったアドレナリンとセロトニンのうち、心理的ストレスに直結する「気分の良さ」に関係が深いのは、どちらかといえばセロトニンの方だとのこと。Ludwig氏が明らかにしたように、精製された炭水化物を多量に摂取すると血糖値が上下して2型糖尿病のリスクが増加してしまいますが、セロトニンの分泌を促すのはなにも炭水化物だけではありません。臨床心理学者のエレン・ヘンドリクセン氏によると、数分間の有酸素運動や日光浴、さらには誰かにいいことをしたり笑顔になったりするだけでも、セロトニンは分泌されるとのことです。

こうした知見を踏まえて、レイナゲル氏は「残念ながら、『ストレス解消食』に関する記事の多くは科学的根拠が少ないか、根拠がないちょうちん記事です」と結論付けました。

その一方でレイナゲル氏は、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)がストレスホルモンと神経伝達物質の両方に影響を与える可能性があることを指摘。「人体に良い影響を与える微生物を含むプロバイオティクス食品や、人体にいい影響を与える微生物の増殖を促すプレバイオティクス食品は、不安や抑うつを軽減し、心理的な状況を改善するのに役立つかもしれません」と述べました。

プロバイオティクス食品の例としては、納豆、味噌、テンペといった発酵性大豆製品や、ピクルスなどの乳酸発酵した野菜類が挙げられます。


また、プレバイオティクス食品の例としては食物繊維が挙げられますが、サプリメントで単一の種類の食物繊維を摂取するより、食べ物からさまざまな種類の食物繊維を摂取した方が効果的とのこと。そのため、レイナゲル氏は穀物、豆類、ナッツ、果物、野菜などからバランス良く食物繊維を摂取することを勧めています。

さらに、レイナゲル氏は自身のポッドキャストのリスナーから寄せられた「ストレスと一緒にお腹にたまった脂肪をどうにかしてくれる食べ物はありますか?」との質問に対しては、「エネルギー源である食物が、蓄積されたエネルギーの一種である脂肪を燃焼させることを期待するのは、氷がコーヒーを温めてくれることを期待するようなものです」と述べて、腹部にたまった脂肪を燃焼させる食べ物は存在しないと回答しました。

その上でレイナゲル氏は、「ストレスが元で脂肪がつくことを防ぐ最善の方法は、ストレスレベルを下げることです」と述べて、以下の5つの方法でストレスを和らげることを推奨しています。

・ニュースを視聴するのを、最新情報が得られる必要最低限に抑えて、気がめいるようなニュースを消費しないようにする。
・インターネット漬けにならないよう、毎日外出をする。
・気分を高めてくれるような本、映画、音楽を楽しんだり、友人と会ったりして、気分が落ち込むのを避ける。
・楽しめるような方法で体を動かす。
・十分な睡眠をとる。

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in , Posted by log1l_ks

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