サイエンス

同じカロリーでも食品によって太りやすさに違いが出る、一体なぜ?


人間は外界から食料という形でエネルギー源を摂取して生きています。食料で得られるエネルギーの量は「カロリー」という単位によって表わされており、「カロリーを摂取しすぎると太る」という社会通念が存在します。そんなカロリーに関する「同じカロリーを摂取するにしてもタンパク質だけで摂取する場合と炭水化物だけで摂取する場合で差が出るのか?」といった疑問について、アメリカ・ミシシッピ大学で食品科学や栄養学について教えるテレジー・トラール-パターソン氏が解説しています。

Not all calories are equal – a dietitian explains the different ways the kinds of foods you eat matter to your body
https://theconversation.com/not-all-calories-are-equal-a-dietitian-explains-the-different-ways-the-kinds-of-foods-you-eat-matter-to-your-body-156900

カロリーはエネルギーの単位で、1キロカロリー(kcal)は「1リットルの水の温度を標準大気圧下で1度上昇させるために必要なエネルギー」として定められています。この定義に従うとタンパク質由来だろうと炭水化物由来であろうと1kcalならば1リットルの水の温度を1度上昇させられるわけですが、トラール-パターソン氏によると「何由来のカロリーなのかによって、体に与える影響は異なる」とのこと。


その原因を理解するためには、カロリーという概念が誕生した経緯が重要です。カロリーという概念の生みの親で「近代栄養学の父」とも評される19世紀の科学者ウィルバー・オリン・アトウォーターは、食品に含まれるエネルギー量を把握するために「食品を燃やして放出された熱量(燃焼熱)を計測し、人体が吸収できずに糞便や尿として排出された分を除外する」という手法を考案しました。

食品のカロリー表記は「食べた人間のうんちから失われた熱量」を計算した実験がベースになっている - GIGAZINE


現代のアメリカや日本でもカロリーはアトウォーターのアイデアをベースにした「修正アトウォーター係数」に基づいて算出されており、「タンパク質は1gあたり4kcal、脂質は1gあたり9kcal、炭水化物は1gあたり4kcal」といった基準に従って総カロリーが計算されています。

しかし、トラール-パターソン氏によると、近年では研究によって「同じカロリーでも食事内容に応じて体のエネルギー消費量が変動する」ということが示されているとのこと。2012年の研究では同じ量のカロリー摂取を続けたにもかかわらず、低炭水化物の食事を続けていた人は低脂肪の食事を続けていた人に比べてエネルギー消費量が1日300kcalも上昇するすると報告されています。このほかにも、2004年の研究では1日に摂取するカロリーの量は変えずに30~35%をタンパク質由来にしたところ、エネルギー消費量が上昇したという結果が報告されています。一般的には、炭水化物や脂肪を豊富に含む食事はエネルギー消費量を4~8%増加させる効果があり、タンパク質を豊富に含む食事は安静時の代謝率を11~14%を上昇させるという効果があるとされるとのこと。

こうした研究から、「カロリーが同じであってもカロリー源によって体に与える影響が異なる」ことが示されました。そこで、カロリーに代わる指標として栄養士が注目しているのが、「グリセミック指数(GI値)」です。GI値は「血糖値をどれだけ上昇させるか」を間接的に表現する数値のことで、近年の研究では血糖値が上昇するとインスリンの分泌量が増加して代謝に影響が生じ、余剰エネルギーが脂肪として蓄えられやすいことが示されているため、GI値が重要とのこと。

白米やケーキ、クッキー、ポテトチップスなどの炭水化物は総じてGI値が高く、緑黄色野菜やキノコ、豆類などはGI値が低いとされています。トラール-パターソン氏によると、GI値が低い食品はカロリーとは無関係に血糖値の調整に役立つという研究結果も報告されているそうです。

血糖値とGIの関係性|大塚製薬
https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/glycemic-index/glucose-level/


ダイエットには食物繊維を摂取することや、エンプティカロリーを避けることも重要だとトラール-パターソン氏は指摘します。食物繊維については、人体が果物、野菜、全粒穀物、豆などの植物性食品に含まれる食物繊維をエネルギーに変換できないため、食物繊維の多い食品は満腹感が強く得られるものの実際のカロリーは低いという傾向があるとのこと。一方、エンプティカロリーは「栄養素をほとんど含んでないがカロリーだけは高い」とされる食品のことで、トラール-パターソン氏によると「有害」という評。エンプティカロリーが多いとされる食物は、ポテトチップス、ジャガイモ、砂糖入り飲料、肉類などで、少ないとされる食品は野菜、全粒粉、果物、ナッツ類、ヨーグルトなどが該当します。

なお、ダイエットを考えるにおいて最も重要な要素はカロリーで間違いないそうですが、トラール-パターソン氏は「体重だけが健康ではない」とも指摘します。高タンパク食は短期的にはダイエットに効果があるという結果が得られていますが、平均寿命が長いとされる地域は植物ベースの食事が中心で、動物ベースのタンパク質を摂取することはめったにないという研究結果が存在します。トラール-パターソン氏は友人などから「炭水化物のせいで太っちゃった」「糖質制限ダイエットをしなきゃ」という話をよく聞くそうですが、栄養士としての立場から「炭水化物は砂糖入り飲料だけでなくリンゴやほうれん草などにも含まれており、前者を制限するならば健康になると思いますが、後者を制限するのは逆効果です。野菜、果物、ナッツ、マメ科植物を使った植物ベースのタンパク質と炭水化物が中心の食事は心臓病、ガン、高血圧、その他多くの慢性疾患の予防に役立つ最も健康的な食事です」と述べ、カロリーだけではなく「カロリーの質」にも目を向けるべきだと語っています。

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in サイエンス,   , Posted by log1k_iy

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