「オーガニック認証済みでも重金属で汚染されている可能性アリ」など健康によさそうなうたい文句の実情とは?
化学合成された肥料や農薬が不使用の「オーガニック」や、食物アレルギーの原因物質であるグルテンが入っていない「グルテンフリー」などが食品のうたい文句に使用されていると、思わず健康にいい食べ物だというイメージを持ってしまいます。しかし、こうしたイメージについて、アメリカの著名な栄養士であるモニカ・レイナゲル氏は「まったく現実に即していません」と一蹴しています。
Organic, Gluten-Free, Vegan—Which One's Healthiest? | Nutrition Diva
https://www.quickanddirtytips.com/health-fitness/healthy-eating/organic-gluten-free-vegan
iTunesでポッドキャストの配信を行っているレイナゲル氏の元には、多くの視聴者から「オーガニック」「グルテンフリー」「ヴィーガン」と記載された食べ物についての質問や意見が寄せられるとのこと。
視聴者から寄せられた健康によさそうなうたい文句について、レイナゲル氏は「私たちはこうしたうたい文句が記載されたラベルが貼ってあると、優れた食べ物であるかのように考える傾向があります。しかし、そのイメージは実際にはまったく当てはまりません」と述べて、誤ったイメージを抱きやすい言葉について次のように解説しました。
by Dave Crosby
◆オーガニック
アメリカの農務省は、農産物に対してNational Organic Program(NOP)という法律に基づいた厳しい審査を行っており、NOPに基づき合成化学肥料や農薬を使用していないと認められた農産物だけがパッケージに「オーガニック認証」と記載することを許されます。
しかし、「オーガニック認証」はあくまでも「肥料や農薬として化学物質を使用していない」ということを示しているだけで、「化学物質が入っていない」という意味ではありません。当然、有害な化学物質が含まれているかどうかの検査が行われているわけではないので、土壌に含まれるカドミウム、鉛、ヒ素といった有害物質で汚染されている危険性は十分に考えられるとのこと。
レイナゲル氏は「オーガニックと書かれているからといって、健康にいいわけでも、化学物質が入っていないというわけでもありません。また、より栄養価が高いということもありません」と述べています。
◆ヴィーガン
レイナゲル氏が、上記のオーガニック食品以上に有害物質による汚染を危惧しているのが、ヴィーガン向けのプロテインです。ヴィーガンの立場をとる人は、タンパク質が豊富な動物性食品を口にしないため、タンパク質不足を補うために粉末状の植物性プロテインを飲むことがあります。レイナゲル氏によると、植物は土壌に含まれる重金属を吸収して育つため、乳製品から作られるホエイや卵をベースに作られたプロテインに比べて、重金属を多く含有してる可能性が高いそうです。
レイナゲル氏のポッドキャストの視聴者であるロヒット氏は、番組に寄せた意見の中で「私は最近、どの粉末プロテインを買うべきかいろいろと調べましたが、ショックなことに私が見つけたプロテインブランドの1つは『カドミウムと鉛で汚染されている』として汚染度の評価が最悪になっていました。こうした商品は重金属汚染の検査などを行っていないので、貼ってあるラベルには何の意味もありません」と話しました。
また、レイナゲル氏も「スーパーの棚にある『認定済みヴィーガンフード』の多くは、高度に加工されたジャンクフードです」と指摘しています。
◆グルテンフリー
グルテンフリー・ダイエット(食事療法)とは、小麦などの穀物に含まれるタンパク質の主成分であるグルテンを含まない食事法のことです。小麦アレルギーの人や、グルテンを含む食事で体調不良になる人でも安心して食べられる食事として注目を集めていますが、「減量にも効果がある」と思ってしまう人がいるとのこと。
こうした勘違いについて、レイナゲル氏は「小麦粉を中心とした食事を見直すことは悪いことではありませんが、食事をグルテンフリーに置き換えても、減量につながるわけではありません。それどころか、グルテンフリー製品は多くの場合、グルテンが含まれている製品より食物繊維が少なく、糖質やカロリーが多くなりがちです。実際、医学的な理由でやむをえずグルテンフリー療法を採用している人は、しばしば体重が増加します」と述べました。
レイナゲル氏は、なにも「オーガニック」「ヴィーガン」「グルテンフリー」などのうたい文句を否定しているわけではありません。レイナゲル氏が問題視しているのは、そうしたうたい文句によりつい健康によさそうなイメージを抱いてしまう「健康ハロー効果」です。
ハロー効果とは、1つの特徴につられて、まるで後光(ハロー)が差しているかのように、ある対象への評価がゆがめられてしまう心理的な現象のことです。例えば、「オーガニック」と記載されている食べ物に対して、化学肥料や合成農薬が使われていないという認識だけでなく、有害物質が少なく健康によさそうなイメージを持ってしまった場合は、レイナゲル氏が指摘する「健康ハロー効果」の影響を受けているといえます。
レイナゲル氏は「合成農薬を避けることを第一に考えている人にとっては、オーガニック認証は有用かもしれません。また、動物福祉を最優先と考える人は、ヴィーガン向けの食事を選ぶべきかもしれません。大事なのは、さまざまなうたい文句が何を意味していて、何を意味していないのかを知っておくことです」と述べて、正しい知識により巧妙なうたい文句に踊らされないようにすることが重要だと指摘しました。
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