サイエンス

減量の前にまず理解すべき3種類の脂肪の役割


脂肪はダイエットの敵と考えられていますが、一口に脂肪といっても、その種類は複数あり、中にはカロリーを燃焼させるものもあります。減量を行う前に理解すべき脂肪の種類と役割についてスタッフォードシア大学の生物科学講師であるトラスト・ディア氏が解説しています。

Brown, white and beige: understanding your body's different fat cells could help with weight loss
https://theconversation.com/brown-white-and-beige-understanding-your-bodys-different-fat-cells-could-help-with-weight-loss-138141

脂肪には蓄積しすぎると体に不調をもたらすものもありますが、一方でカロリーを燃焼させて熱を作り出す役目を持つものも存在します。近年の研究では「よい脂肪」の割合が多い人は、寒冷な環境に置かれた時にカロリーを燃焼しやすいことが示されているとのこと

脂肪には「白色」「褐色」「ベージュ」の3つのタイプがあり、減量を行う前に3つの脂肪の科学的背景と、3つの脂肪がどうすれば別のタイプの脂肪に変わるかを理解することは、非常に役立つとディア氏は述べています。


まず、脂肪は大きく「褐色脂肪組織」と「白色脂肪組織」にわけられます。

白色脂肪組織は主に体の結合組織、つまり皮下脂肪や内臓脂肪に含まれます。人が物を食べると、白色脂肪組織はグルコースという過剰なエネルギーを「脂肪滴」というものに変換します。脂肪滴は通常、トリアシルグリセロールという分子です。このプロセスにより食欲やエネルギーバランスが制御されることになります。


一方、褐色脂肪組織は、これまで新生児にしかみられず、成長と共に消えていくと考えられてきました。しかし、2016年の研究により大人になっても褐色脂肪細胞は存在し続けると示されています。

白色脂肪組織は肥満などに関連付けられる、いわゆる「一般的にイメージする脂肪」ですが、褐色脂肪組織は減量に役立ち、肥満など、過体重と関連する疾患リスクを減らしてくれます。褐色脂肪組織は主に肩甲骨・首・背骨・鎖骨の間に存在しますが、生命維持に必要な器官の周りにも存在するとのこと。

2013年の研究からは、上記2つに加え、「ベージュ」の脂肪の存在も報告されています。ベージュの脂肪組織は褐色脂肪組織のような働きをしながら、白色脂肪組織と同じ場所に存在するのが特徴です。

ベージュの脂肪組織は、人が寒冷な環境に置かれるなどした時に、白色脂肪組織から「褐変」というプロセスを経て派生するもの。この「寒冷な環境」とは、男性においては9度、女性においては11度だといわれています。


◆それぞれの脂肪の見た目
白色脂肪細胞は通常、1つの大きな滴である丸い細胞であり、この滴は飢餓になったりエネルギーの需要が増加したときに脂肪酸に変換されます。脂肪酸は脂肪が連なったもので、血液に吸収されます。

一方、褐色脂肪組織は白色脂肪組織よりも小さく、1つの細胞には複数の滴がたくさん存在します。また褐色脂肪組織はエネルギーを生成するミトコンドリアを多く含みますが、ミトコンドリアは鉄が豊富であるため、酸素にさらされた時に茶色くなるとのこと。

ベージュの脂肪組織は、もともとは白色脂肪組織ですが、「体温が下がった時にエネルギーを燃やして熱を生み出す」という機能は褐色脂肪組織なので、白色脂肪組織と褐色脂肪組織の間の見た目とのこと。

◆脂肪の種類を変えるには?
寒冷環境、あるいは特定のタンパク質の存在によって白色脂肪組織が褐色脂肪組織に変わることは上記の通りですが、2015年の研究からは、「脂肪の存在する場所」と「トリガー」という条件がそろえば白色脂肪組織に限らず脂肪は別の種類の脂肪に変わることが示されています。

脂肪が別の種類の脂肪に変わる方法は「分化転換」と呼ばれる遺伝子を介したプロセスを経るものと、細胞がそれを構成している組織の特徴を失い(脱分化)、遺伝子が再プログラミングされる(細胞分化)というものがあります。後者は人為的に起こすこともできますが、自然発生することもあるとのこと。

2つ目のプロセスを自然に起こすためには、野菜や果物に含まれるフラボノイドレスベラトロールクェルセチンといった栄養素が助けになるほか、運動も褐変の速度を上げるといわれています。低温下に身を置くことも役立ちますが、これには定期的に繰り返すことが必要だそうです。


褐色脂肪組織は低体温のリスクを減らして、インスリンの感受性を上げて糖尿病のリスクを減らしてくれることも研究で示されています。運動を行うことのほか、野菜や果物を食べることで白色脂肪組織を褐変させ、ベージュの脂肪組織に変えることで、健康状態を改善させる可能性があると考えられています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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