「小惑星の軌道を変更して地球防衛の可能性を調査するミッション」に向けてESAが160億円規模の契約を締結
by ESA – Science Office
宇宙空間を移動する小惑星の中には地球のすぐそばを通り過ぎていくものもあり、研究者らは「地球にぶつかりそうな小惑星の軌道を変更する方法」を考えています。2020年9月15日、欧州宇宙機関(ESA)は小惑星の軌道を変える方法に関するプロジェクト「Hera」の実現に向け、ドイツの宇宙開発企業・OHBと1億2940万ユーロ(約160億円)の契約を締結したと発表しました。
ESA - Industry starts work on Europe’s Hera planetary defence mission
https://www.esa.int/Safety_Security/Hera/Industry_starts_work_on_Europe_s_Hera_planetary_defence_mission
ESA moves forward with Hera planetary defense mission
https://newatlas.com/space/esa-hera-planetary-defense-mission/
ESA awards €129.4 million contract to planetary defence mission Hera - SpaceWatch.Global
https://spacewatch.global/2020/09/esa-awards-e129-4-million-contract-to-planetary-defense-mission-hera/
1996年に発見された65803 Didymos(ディディモス)という小惑星は、直径約780メートルの本体の周囲を、直径約160メートルの「Dimorphos(ディモルフォス)」と呼ばれる小さな天体が周回する二重小惑星です。ディディモスは地球と衝突する危険がない天体だそうですが、ディディモスを使って小惑星の軌道を変更する方法を調査する「AIDA計画」が、アメリカ航空宇宙局(NASA)やESAを含む国際的なチームによって進められています。
AIDA計画の中で、NASAは2021年にDARTという宇宙機を打ち上げて、本体の周囲を回るディモルフォスにぶつける予定となっています。DARTはかなり強い勢いでディモルフォスに衝突するため、予想ではディモルフォスの表面に直径20メートルほどのクレーターが残り、周回軌道にも変化が現れるそうです。
その後、ESAは2024年に「Hera」という探査機を打ち上げて、ディモルフォスにDARTが衝突した後の影響について調査します。Heraは探査用のキューブサットである「Juventas」と共に打ち上げられ、2026年にディモルフォスに到達する予定となっています。
by ESA
Heraは小型レーザーレーダーシステム・熱赤外線装置・望遠鏡・小惑星フレーミングカメラ(AFC)を搭載し、クレーターの周囲を10センチメートル四方の解像度で画像化するとのこと。また、Juventasは低周波レーダー・3軸重力計・可視光カメラ・加速度計・ジャイロなどを備えており、重力場とディモルフォスの内部構造について調査するそうで、ディモルフォスの質量測定にも大きな注目が集まっています。
ドイツのダルムシュタットにある欧州宇宙運用センターでESAがOHBと結んだ総額160億円の契約には、高度なナビゲーションおよびコントロールシステムを含むHeraの設計・開発・統合・テストが含まれています。
また、ドイツのOHBが契約の元請けという立場にはなったものの、Heraのプロジェクトに貢献するのはドイツだけではありません。ドイツに加えてイタリア・ベルギー・ルクセンブルク・ポルトガル・ルーマニア・チェコ・スペイン・オーストリア・デンマーク・フランス・ハンガリー・オランダ・スイス・フィンランド・ポーランド・アイルランド・ラトビアの合計18カ国がプロジェクトに貢献しているとのことです。
by ESA – Science Office
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