4K・60fpsの超高画質で「もし小惑星が海に衝突したらどうなってしまうのか?」をシミュレーションするムービーが公開中
「アルマゲドン」や「ディープ・インパクト」など、映画の世界では小惑星や隕石が地球に衝突する瞬間がしばしば描かれてきました。そんな小惑星の衝突について、アメリカ大気研究センター(NCAR)が「実際に小惑星が海に落下した時に何が起こるのか」をシミュレーションしたムービーを、4K・60fpsの超高画質で公開しています。
Mesmerizing video shows what would happen if an asteroid crashed into Earth's oceans
https://mashable.com/article/asteroid-crashes-into-ocean-simulation-video/
NCARは、ロスアラモス国立研究所に勤めるGalen Gisler氏とJohn Patchett氏が作成した「(PDFファイル)Deep Water Impact Ensemble Data Set」と呼ばれるデータセットを利用して、小惑星が海に落下した時にどのような形と規模の波が発生するかをシミュレート。その結果は以下のムービーで見ることができます。
Visualization of the Deep Water Impact Ensemble Data Set - YouTube
シミュレーションは、直径250mという大きさの小惑星が45度の角度で海面にぶつかる状況を想定しています。小惑星や隕石は大気圏に突入する際、「エアバースト(空中爆発)」が発生することがあります。左側はエアバーストを想定していないモデルで、右側は上空5kmでのエアバーストを想定したモデルです。
以下の画像の上部に表示されているのが、大気圏を2万3000mに想定した場合での小惑星が海に落下して巻き上がる海水の様子。その高さは最大で標高8848mのエベレストを軽く超えています。また、その面積はおよそ1100平方kmで、これはニューヨーク・マンハッタン島のおよそ14倍にあたるそうです。
まずはエアバーストを想定していない場合の衝突シミュレーション。隕石が海面に落下し……
ものすごい量の海水が巻き上げられ、何重もの波が発生します。
落下地点の前方に海水の塊が小惑星の破片を包み込むようにしながら盛り上がり、同時に小惑星の軌跡にそって後方へ水が巻き上がります。
後方の海水はすぐに海面へ落下しますが、前方の海水はすさまじいエネルギーと共に前方に巻き上がり続けます。
次はエアバーストを想定した場合。海面に着水すると……
小惑星の破片が跳ね返るように広がります。
後方は小惑星の軌跡に沿って海水が巻き上がりますが、前方には水よりも小惑星の破片が多く飛び散る結果となっています。
エアバーストがなかった場合と、エアバーストを想定した場合で比較するとこんな感じ。
上の画像がエアバーストが起きなかった場合、下の画像がエアバーストを起こした場合における小惑星の着水の様子。近くで見ると、エアバーストを起こしているかいないかで着水の様子が全く違うことがよくわかります。
小惑星の破片の動きだけを捉えて比較したものが以下の画像。エアバーストを起こすと、小惑星は細かく分裂した状態で海面へ衝突するため、海中に沈んでしまわずに跳ね返ってしまう模様。
エアバーストを起こさなかった想定で、衝突角度を45度から60度に上げた場合。
キノコ雲のように海水がめくりあげられています。この場合は45度のものよりも波が大きくなり、小惑星落下に伴う津波の被害はより甚大なものになると予想されます。
エアバーストを起こしたと想定した場合は……
海面で小惑星がさらに細かく砕け散り、巻き上がる大量の海水に持ち上げられるように破片が巻き上がっています。
左がエアバーストを起こさなかった場合で、右がエアバーストを想定した場合。エアバーストを想定しない方が、巻き上がる海水の量は明らかに多く、被害の範囲も大きいことがよくわかります。
地球の表面のおよそ70%は海に覆われていて、小惑星が地球に衝突する場合、海に落下する可能性のほうが高いと考えられます。アリゾナ州に広がる直径およそ1.2kmのバリンジャー・クレーターは、直径30m~50mの隕石の落下によるもので、衝突時のエネルギーは1500万TNTトンで、1945年に広島に落とされた原子爆弾のおよそ1000倍の威力だったといわれています。今回のシミュレーションはバリンジャー・クレーターの隕石よりもさらに大きなサイズを想定しているため、衝突時の被害はより大きなものになると予想されます。
NASAは「直径1500メートルの小惑星が地球に衝突する頻度はおよそ100万年に1回だろう」という試算を発表していますが、今回のシミュレーションは万が一に備えるための重要な結果が得られるとのこと。NCARは「このシミュレーション結果は、過去20年にわたって起こった津波が、人口の多い海岸線にどのような影響を及ぼすかについて、深刻な議論を起こしています」とコメントしています。
なお、海に囲まれた島国である日本でも、同様の問題について研究が行われています。以下の論文によると、直径500mの天体が水深5000mの日本近海に衝突した場合、大陸棚がほぼ浅瀬になるまで水位が低下した後、80m級の津波が日本沿岸部に押し寄せることが予想されるそうです。
海洋への隕石落下に伴う津波リスク評価 - 日本惑星科学会
(PDFファイル)https://www.wakusei.jp/book/pp/2013/2013-4/2013-4-207.pdf
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