サイエンス

恐竜を絶滅させた小惑星衝突で生じた津波は高さ1.5kmに達して48時間でほぼすべての海岸線に到達した


約6600万年前、メキシコのユカタン半島付近に直径約14kmの小惑星が衝突し、恐竜を含む動植物種の約4分の3が絶滅したとされています。この小惑星衝突で生じた津波をシミュレーションモデルで分析すると共に、世界中の100以上の地点で記録された地質学的データを調査した結果、この時に発生した津波が地球の約半分の海盆をかき乱すほど強力だったことがわかりました。

The Chicxulub Impact Produced a Powerful Global Tsunami - Range - 2022 - AGU Advances - Wiley Online Library
https://doi.org/10.1029/2021AV000627

Dinosaur-killing asteroid triggered global tsunami that scoured seafloor thousands of miles from impact site | University of Michigan News
https://news.umich.edu/dinosaur-killing-asteroid-triggered-global-tsunami-that-scoured-seafloor-thousands-of-miles-from-impact-site/

Tsunami from dinosaur-killing asteroid had mile-high waves and reached halfway across the world | Live Science
https://www.livescience.com/dinosaur-killing-asteroid-triggered-giant-tsunami

Asteroid that wiped out the dinosaurs also triggered a global tsunami | CNN
https://edition.cnn.com/2022/10/04/world/dinosaur-asteroid-tsunami-scn/index.html

約6600万年前の小惑星衝突は大規模な地震や火山噴火、信じられないほど巨大な津波、急激な気温上昇および日光の遮断による寒冷化といった事態を引き起こしました。この大量絶滅はK-Pg境界とも呼ばれ、記事作成時点でも小惑星衝突の痕跡が地球上に残されています。

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ミシガン大学の研究者が率いるチームは、この小惑星衝突で発生した津波についての研究結果を発表しました。まず研究チームは、ハイドロコードと呼ばれる大規模な衝突を分析するコンピューターモデルを用いて、小惑星衝突の最初の10分間で起きた出来事をモデル化しました。

このモデル分析では、既存の研究に基づいて「直径14kmの小惑星が時速4万3200kmで地球に衝突した」と仮定しました。小惑星は厚い堆積物と浅い海水に覆われた花こう岩の地殻に衝突し、幅約100kmのクレーターを形成してススとホコリを大気中に放出したとのこと。続いて、衝突地点から噴出した物体により水が押し出されて一時的に高さ4.5kmもの波が生じたほか、衝突から10分後には衝突地点から220km離れた地点で高さ1.5kmもの津波が形成され、海を横切ってあらゆる方向に広がり始めたとのこと。


次に、研究チームはこのハイドロコードシミュレーションの結果を、MOM6そしてMOSTという2つのグローバル海洋モデルに入力し、その後の津波がどのように波及したのかを分析しました。分析によると、衝突から1時間後には津波がメキシコ湾を離れ、北大西洋に突入したとのこと。


4時間後には以下の画像のように、当時の南北アメリカ大陸を隔てていた中央アメリカ海路を通って太平洋へ津波が到達しました。シミュレーションモデルによると、メキシコ湾外洋の津波の高さは100mを超え、北大西洋沿岸や南米の太平洋沿岸に到達した津波は10mを超えていたそうです。


24時間後には津波が太平洋と大西洋を横断し、両方向からインド洋へ津波が入りました。


そして、48時間後にはほぼすべての海岸線に津波が到達しました。この津波エネルギーは、2004年に発生して20万人以上の死者を出したスマトラ島沖地震の津波の約3万倍におよぶと研究チームは推定しています。


この津波による海流速度は、北大西洋や南太平洋では海底の堆積物を浸食するのに十分な秒速20cmを超え、地球における海盆の約半分が影響を受けたとのこと。一方、南大西洋・北太平洋・インド洋・地中海では海流速度が秒速20cmを超えなかった可能性が高く、海盆の堆積物は津波の影響を受けなかったとみられています。

研究チームはコンピューターモデルに加え、世界中の120の地点で採取された堆積物の地質学的データも分析しました。これらのデータは、ほとんどが科学的な海洋掘削プロジェクトで採取された地層コアであり、研究チームは約6600万年前の大量絶滅を示すK-Pg境界における堆積物の状態を調べました。

その結果、北大西洋と南太平洋では完全で途切れた地点のないK-Pg境界の堆積物を持つコアが少なく、南大西洋・北太平洋・インド洋・地中海のサイトではK-Pg境界が途切れずに残っていることが多かったとのこと。この発見についてミシガン大学地球環境科学科のBrian Arbic教授は、「私たちは外洋で最大の影響を受けると予測される地域について、地質学的な証拠を見つけました」と述べています。

論文の共著者であるミシガン大学のセオドア・ムーア名誉教授は、「この研究における大きな成果は、定式化の異なる2つのグローバル海洋モデルがほぼ同じ結果を出し、地質データがその結果と一致したことです。モデルと検証データが見事に一致したのです」とコメント。筆頭著者であるミシガン大学のモーリー・レンジ氏は、「この津波は地球半周分の海盆において堆積物をかき乱し、浸食するのに十分な強度を持っていました」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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