元ICANN事務総長が「.org」ドメイン買収を企てた投資会社の共同CEOに就任

公共性が高い「.org」ドメインが民間の新興投資企業のEthos Capitalに売却された問題で、ドメインデータベースの管理団体ICANNの元事務総長であるFadi Chehadé氏がEthos Capitalの共同CEOに就任していたことが判明しました。Chehad氏は、かねてから「.org」ドメインの買収を裏で手引きしていたと指摘されている人物です。

Fadi Chehadé is now co-CEO of Ethos Capital - Domain Name Wire | Domain Name News
https://domainnamewire.com/2020/07/16/fadi-chehade-is-now-co-ceo-of-ethos-capital/

2019年11月に「.org」ドメインを管理する非営利団体のPublic Interest Registry(PIR)が、投資会社Ethos Capitalに売却された問題をめぐっては、パブリックコメントで反対の声が圧倒的多数だったにもかかわらず売却が強行された経緯や、売却額が異様なほどに安いこと、さらに「.org」ドメインの登録料がつり上げられるとの懸念など、さまざまな問題が取り沙汰されています。

そのため、売却に反対する署名運動「Save .ORG」が設立されたほか、Firefoxを開発している非営利団体Mozillaや、アメリカ・カリフォルニア州の司法当局などが相次いで公開質問状を発表するなど、「.org」ドメインの売却を問題視する動きが高まりを見せています。

「.org」ドメイン売却問題でついに司法が動く - GIGAZINE

by WilliamCho

一連の問題の続報として、ドメイン関連ニュース専門サイトDomain Name Wireは、ICANNの元事務総長であるFadi Chehadé氏がEthos Capitalの共同CEOに就任した事実を報じました。

記事作成時点で、Ethos Capitalの役員が掲載されているページにアクセスすると、確かにChehadé氏が共同CEO(Co-CEO)となっていることが確認できます。

ハーバード大学のサイバースペース研究機関に所属する専門家によると、Chehadé氏は「.org」ドメインの買収劇の裏で暗躍していた人物とのこと。なお、Chehadé氏が事務総長の職を辞した後のICANNは、PIR売却を差し止めた上で最終的に拒否するなど、「.org」ドメイン売却に否定的な姿勢を明確に打ち出しています。

Chehadé氏がEthos Capitalの共同CEOに就任した時期は不明ですが、過去のウェブサイトを閲覧できるWayback MachineでEthos Capitalの公式サイトを確認すると、2020年6月時点で掲載されていたのはエリック・ブルックス氏とノラ・アブシッタ・ウリ氏の2名のみであることから、2020年6月以降であるとみられます。

Domain Name Wireは「2人から8人に増えたEthos Capitalの役員のうち、元ICANNの役員はChehadé氏を含めて3人います。最高目的責任者(CPO)のアブシッタ・ウリ氏はICANNでChehadé氏の片腕だったほか、エグゼクティブ・パートナーであるアレン・グロガン氏もICANNの元最高契約・コンプライアンス責任者(CCCO)でした。彼の関与は、Ethos Capitalに関わっている元ICANNの役員をはっきりさせるようICANNが要求した直後に公にされました」と指摘。

さらに「共同CEOの1人であるブルックス氏も、Chehadé氏のLinkedInのページで、かつて所属していたプライベートエクイティでのパートナーとして紹介されています」と述べて、Chehadé氏やChehadé氏にまつわる人物の関与が表面化してきたことを指摘しました。