「.org」ドメインを売った中の人が売却した理由を説明

by duallogic

「.org」ドメインを売却したInternet Society(ISOC)の理事会のメンバーであるリチャード・バーンズ氏が、「なぜISOCは全会一致で『.org』ドメインの売却を決定したのか？」を説明しています。

Why I Voted to Sell .ORG
http://www.circleid.com/posts/20191127_why_i_voted_to_sell_org/

2019年11月に、主に非営利団体や学校などに使用されている「.org」ドメインを管理している非営利団体のPublic Interest Registry(PIR)が、設立からわずか数カ月の投資会社Ethos Capitalに売却されました。折しも、2019年6月にPIRがドメイン登録業者のレジストラに請求できる登録料金の上限が撤廃されてからわずか半年も経過していないこともあり、多くのインターネットユーザーがこの取引を問題視。ついにウィキメディア財団やクリエイティブコモンズなども参加する大規模な反対署名が展開される事態にまで発展しています。

「.org」ドメイン登録料の価格上限が撤廃されてから、投資会社に売却されるまでの経緯については、以下の記事に詳しくまとめられています。

「.org」ドメインの管理団体が設立からわずか数カ月の投資企業に売却された背景とは？ - GIGAZINE

by Capri23auto

バーンズ氏も、「『.org』が非営利団体のアイデンティティやブランドに大きな影響を与えていることは間違いありません」と認めています。その一方で、「インターネットは『.org』よりも大きく、ISOCの使命は単なるドメイン名のリースよりもはるかに大きなプロジェクトです」と述べて、「.org」の売却には大きな意義があることを強調。PIRの売却については「『.org』からの収入が安定していたのは事実ですが、収益のほとんどは単一のビジネスに投入せざるを得ず、この状況はPIRが大きな組織に成長するにつれてますます受け入れがたいものとなりました。PIRを投資会社に売却したことにより、より見通しが立ちやすい収益を得ることが可能になり、より長い目でミッションに臨むことができるようになります」と述べて、ISOCの収益の安定化と自由に使える収入源の確保がPIR売却の最も大きな決め手だったと説明しました。

また、「.org」ドメインを利用している団体が急激なドメイン登録料の値上げに直面するという懸念に対しては、「心配なのは理解できますが、料金の引き上げは最大でも年間10％に制限されています。10ドル(約1094円)の登録料が毎年10％引き上げられても、10年後はたった26ドル(2846円)にしかなりません」と指摘。「Ethos Capitalは『歴史的慣行の精神の中で生きる』と述べており、PIRがISOCの元にあったころと同じ価格設定をすると約束しています」と述べました。

しかし、Ethos Capital側の主張を受け売りするバーンズ氏の主張には、懐疑的な見方もあります。バーンズ氏の説明を取り上げたソーシャルニュースサイトHacker Newsの掲示板では、「インフレ率はおおむね1～4％で安定していますが、10％も値上がりすれば料金は7年で2倍に、20年で6倍になります」との指摘や、「現状の10ドルの料金でさえ、発展途上国の非営利団体には大きな負担です」と指摘するコメントが寄せられており、料金の値上げについて楽観的なバーンズ氏の見方を否定する声が相次いでいます。

また、ドメインデータベースの管理団体Internet Corporation for Assigned Names and Numbers(ICANN)の元職員であるJacob Malthouse氏は、「ISOCに『.org』を売却する権利はありません。ISOCはインターネットコミュニティの信任により、ドメインを管理する権利を与えられたので、ドメインをどうするかはコミュニティの同意を得る必要があります。しかし、13人のISOC理事会の面々は、コミュニティからの同意を得る代わりに、事前の協議もなく突然『.org』ドメインを売却しました。これは、どんなインターネットガバナンスのモデルにも即していません」と非難し、「.org」の売却に反対する「Save .ORG」の取り組みを支持しました。

・つづき
「.org」ドメインの売却価格が1200億円超だったと判明、専門家は「売却価格が安すぎる」と指摘

by Maklay62