ウェブサイトによる行動追跡に同意する人は実際にどの程度いるのか実験した結果
EU一般データ保護規則(GDPR)の施行によって、ウェブサイトがCookieを取得する際には事前にユーザーからの同意を得ることが必須となりました。しかし、オプトインで同意を取る方法では同意率が低くなり、行動ターゲティング広告のための十分なデータが得られなくなってしまうとして、多くのウェブサイトがユーザーをだますダークパターンを採用していることもわかっています。そこで、コンテンツマーケターのMarko Saric氏が、「GDPRに準拠したバナーの場合、実際のところ同意率はどれくらいになるか」という実験を行いました。
Only 9% of visitors give GDPR consent to be tracked
https://markosaric.com/gdpr-consent/
Saric氏は以下2つのウェブサイトでCookie利用への同意を求めるバナーを実装しました。
1:技術的なトピックを扱うウェブサイト
訪問者の多くはGoogleのオーガニック検索経由で、その割合は60%。また全体の60%はノートPCあるいはデスクトップPCからブラウジングしている。
2:ライフスタイルのトピックを扱うウェブサイト
訪問者の多くはソーシャルメディアのオーガニック経由で、その割合は70%。また全体の70%はモバイル端末でブラウジングしている。
上記2つのウェブサイトを使って約1万9000人を対象に実験を行ったところ、Cookieの利用許諾を求めるバナーに対して何らかのアクションを取ったのは全体の48%でした。そのうちCookieの使用に同意したのは19%だったため、全体としてCookieの使用に同意したユーザーの割合はわずか9%だったということになります。
以下が詳細な数字で、いずれのウェブサイトもオプトインでの同意率は約9%。オプトアウトの場合は技術系サイトが30%ほどで、ライフスタイルサイトが50%ほどとなっています。
ユニークビジター | オプトイン | オプトアウト | |
技術系サイト | 10,600 | 933 | 3,257 |
ライフスタイルサイト | 8,100 | 774 | 3,984 |
合計 | 18,700 | 1,707 | 7,241 |
またモバイル端末からのアクセスだとバナーに対してアクションを取る割合が多いものの、Cookie利用の同意自体は少なくなりました。これは、モバイル端末はPCに比べて画面サイズが小さく、邪魔なバナーを消したいと考える人が多いからだとSaric氏は分析しています。
さらに、ライフスタイルのトピックを扱うウェブサイトでは、ウェブアナリテクス(Googleアナリティクス)、パーソナライズされた広告(ダブルクリック広告)、ソーシャルメディア(Pinterst)とのCookieの共有について細かな許可を求めたところ、より詳細な部分まで選択した人は774人中わずか1人でした。この訪問者はGoogleアナリティクスについてのみ「いいえ」とし、残り2つを「はい」としたため、以下の画像では「Statistics v1.0.0」が773人で、ほか2つが774人となっています。
インターネットで主流のターゲティング広告を利用するには、Cookieを使ってユーザーの行動を追跡する必要があります。この調査結果からSaric氏は「Cookieの利用に同意したユーザーのプロファイリングは可能」としつつも、オプトインでCookieの利用に同意するユーザーの割合があまりに低いことから「広告主はターゲティング広告以外の、別の収益化方法を検討していくべき段階になっている」と指摘しています。Googleは「ターゲティング広告をやめるとウェブサイトの広告収益が半減する」と主張していますが、一方で、ターゲティング広告をやめて昔ながらのコンテンツターゲット広告を実施することで収益を増加させた企業も存在します。
なお、既存の広告により収益を上げるスタイルから脱却し、コンテンツ提供者やユーザーに利益を分配していく新しい仕組みについても検討されています。
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