ソフトウェア

広告をブロックしつつコンテンツ提供者やユーザーに利益を分配するブラウザ「Brave」が目指す新しい仕組みとは


旧来の広告ブロックアプリをはじめ、AppleがiOS 9で実装した広告ブロック機能を使ったアプリが登場するなど、インターネット広告の表示を取り巻く状況は広告主とユーザーの間で常にせめぎ合いが続いています。そんな中、かつてはFirefoxなどを開発するMozillaのCEOを務め、現在はソフトウェア系スタートアップ「Brave Software」を立ち上げたブレンダン・アイク氏は新しい機能を持つブラウザ「Brave」の開発を進めています。Braveは広告を非表示にするなどでページ描画を高速化するだけでなく、将来的には広告収入の新たな分配方法を実現することを狙っています。

Brave
https://brave.com/

This new ad-blocker has a plan to pay publishers | The Verge
http://www.theverge.com/2016/1/20/10802210/brave-ad-blocker-brendan-eich-tracking

Mozillaの元CEOで、JavaScriptの開発者でもあるアイク氏は2015年にBraveを設立し、2016年初頭に新たな仕組みを持つブラウザを公開すべく準備を進めてきました。なお、アイク氏は2014年3月にMozillaのCEOに就任したのですが、同性愛問題にまつわるゴタゴタを受け、就任から10日ほどでCEOを辞任しています。


Brave Softwareが開発するブラウザ「Brave」は、ウェブサイトを訪れるたびにページ内容と一緒に送信される広告を大幅に除外することで、データのトラフィックを軽減すると同時にページの表示を高速化させます。さらに、普通にネットを閲覧しているとバックグラウンドで行われる、Cookieなどを使ったネット上の行動のトラッキングをブロックする機能を搭載し、トータルで最大60%の高速表示を可能にするとのこと。

BraveはMac、Windows、Android、iOS向けに開発が進められており、その開発はGitHubを使ったオープンソース環境で進められています。記事作成時点ではバージョン0.7がベータ版としてリリースされています。ベータ版はBraveのサイトからダウンロードできるようになっていますが、登録が必要となっており、記事作成時点では順番待ちの状態となっていました。


「広告を除外する」とうたっていますが、全ての広告を除去するのではなく、広告の中でも「ユーザーにとって有害な広告」のみをブロックする機能を備えているところがBraveのポイントの1つといえそうです。ユーザーの端末にマルウェアを知らない間に忍び込ませ、広告を表示する「マルバタイジング」と呼ばれる手法など、悪質なネット広告を取り巻く状況は巧妙化が進んでいますが、Braveはこのような悪質な広告だけを排除し、ユーザーにとって「メリットのある」広告だけを表示すると同時に、問題のない広告を表示させることで、コンテンツプロバイダが本来得るべき広告収入を確保するという仕組みが取り入れられています。

実際にページ表示が高速化されている様子は以下のムービーで見てみることが可能です。

Brave Browser test iOS - YouTube


左側のiPhone 6 PlusはApple純正ブラウザのSafariが、そして右のiPhone 6 PlusにはBraveがインストールされており、同じページをロードさせて表示スピードの比較が行われます。


まずは最初のページを同時に読み込み開始。


数秒で右のBraveではページ描画が完了しましたが、左のSafariではページ表示が完了しておらず、なおかつ広告が表示されている状態。


さらに数秒が経過し、合計で4つの広告を表示させてようやくページの表示が完了しました。


別のサイトでも高速表示の様子は同じ。よーいドンで読み込みを初めても……


Braveは先に表示を完了。表示が速いばかりではなく、広告もブロックされていることがわかります。


いくつサイトを試してみても、総じてBraveを使った端末が先に表示を完了させることがわかりました。


なお、ここまでは通常の広告ブロック機能とさほど違いはありませんが、Braveが開発を進めているのが、既存の広告をブロックした場所に、コンテンツプロバイダ、ユーザー、ネットワークパートナー、そしてBraveの4者に利益を分配する仕組みを備えた別の広告で置き換えるというものです。

こう聞くと「コンテンツプロバイダが得るはずだった収入を、Braveが中間に入ることでかすめ取るのではないか」という疑問や非難の声が挙がるのも当然ですが、アイク氏はコンテンツプロバイダに利益を分配することを真剣に考えているとのこと。The Vergeの取材に対してアイク氏は「Braveは広告主よりも良い利益の源泉となるでしょう」と答えています。

Braveでは、ページに表示された広告から得られる収入のうち、55%をコンテンツプロバイダに分配し、残りの45%をBrave本体と、広告表示をマネジメントするパートナー企業、そしてページを閲覧するユーザーに15%ずつ分配するというシステムを考案しています。ユーザーに分配される15%の収益は、各ユーザーが持つことになる「パーソナルウォレット」へと入り、ビットコインと同様のプロトコルを持つシステムによって管理されることになるとのこと。

By FamZoo Staff

ユーザーは自分のウォレットに入った収益を現金化することも可能ですが、Braveでは、そのお金をユーザーのお気に入りサイトが提供する有償サービスへの支払いに充てたり、慈善団体などへの寄付を行う際などのマイクロペイメントのために使うことで、ネット上でのお金の流れを作り出す事を狙いとしている模様です。

この仕組みがうまく稼働するためには、1000万人から1500万人程度のユーザーがBraveを使う規模に達する必要があると見積もられています。実現の可能性はまだ未知数ですが、ユーザーにとってもメリットが期待できるという仕組みが実現し、新しい収益の循環が実現するのか、興味深い取り組みになりそうです。

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in ソフトウェア,   ネットサービス,   動画, Posted by darkhorse_log

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