Googleの「Cookieをターゲティング広告に使わないとサイトの収益が半減する」という理論は正しいのか?
by geralt
サードパーティーCookieを使ったターゲティング広告はユーザーの行動を追跡し、プライバシーを侵害するとして問題視されることも増えています。このためサードパーティーCookieをブロックすることが推奨されたり、Cookieを制限するブラウザが登場したりしています。しかし、そんな中で、Googleは「サードパーティーCookieを使用しないとパブリッシャーの収益が52%も失われる」という調査報告を発表。「広告をサポートしつつも透明性を強める」という姿勢を明らかにしています。
disabling_third-party_cookies_publisher_revenue.pdf
(PDFファイル)https://services.google.com/fh/files/misc/disabling_third-party_cookies_publisher_revenue.pdf
'The math is wrong': Publishers grumble about Google's ad targeting research - Digiday
https://digiday.com/media/math-wrong-publishers-grumble-googles-ad-targeting-research/
2019年8月27日付で発表されたGoogleの調査結果によると、Googleアドマネージャーを使っている500のパブリッシャーに対してランダム化比較試験を行ったところ、ターゲティング広告にCookieを使っていないパブリッシャーはプログラマティック広告の収益を平均して52%を失っていることが判明したとのこと。またパブリッシャーをニュースカテゴリに限定すると、この数字は62%にまで上がることがわかりました。
収益源の割合はパブリッシャーによって異なり、そのばらつきは以下のグラフで確認可能。中央値は64%減となっています。
これを受けてGoogleはブログで「デジタル広告で透明性と選択肢、そしてコントロールを保障するための次なるステップ」という記事を発表しました。ブログの中でGoogleのシニアプロダクトマネージャーであるチェトナ・ビンドラ氏は「Cookieをブロックするとパブリッシャーの収益が大幅に減少します」「Cookieを制限することでフィンガープリントといった別の方法が用いられることになり、これはユーザーのプライバシーを後退させます」と述べ、「広告へのアクセスをサポートしつつもユーザーが『プライバシーが守られている』と感じる仕組みを作っていく」とつづりました。
Next steps to ensure transparency, choice and control in digital advertising
https://www.blog.google/products/ads/next-steps-transparency-choice-control/
Cookieを使っていないブラウザではパブリッシャーへの収益が減る、という現象は実際に確認されています。Appleはトラッキングツールに対抗すべく、2017年にIntelligent Tracking Prevention(ITP)と呼ばれるトラッキングの取り締まりを開始しました。パブリッシャーの多くがITPの開始とともにみられた収益減少と、上記のグラフが一致していると感じている、と取材を行ったDigidayは述べています。
一方で、「グラフや数字は正しくなく、Googleが自社の活動を促進するための道具として使っている」という見方もあります。
by rawpixel
あるパブリッシャーの役員を務める匿名の情報源によると「合計10億ドル(約1100億円)の広告収入があって、うち20%がCookieのない環境で支払われたものだと仮定したとき、全てのCookieを取り除いた時であっても、10億ドルは全てのブラウザで等しく支払われるべきなんです。Googleが『4億ドル(約440億円)しか収益がなくなる』と示すようにではなく」とのこと。
他のパブリッシャーの中にも「SafariのCookieからの推定収益は減っても、単純にパブリッシャーの財源が減るわけではない」と上記の意見に賛同する人はいます。例えSafariからの収益が減ってもGoogle Chromeなどでマネタイズする方法は残されている、というのが賛同する人の意見です。
また、Googleの示す調査結果は「Cookieを使ったターゲティング広告がある状態」と「ない状態」の両方が存在する世界での「Cookieを使ったターゲティング広告」の価値であり、「ChromeがITPを実装した場合」についてはあてはまらない、とGoogleの姿勢に反対する意思を示す人も存在します。
EU一般データ保護規則(GDPR)やカリフォルニア州消費者プライバシー法の制定とともに、Apple、Firefox、BraveといったブラウザではサードパーティーCookieによらない効果的なターゲティング広告の方法を模索し始めています。パブリッシャーやマスコミもブラウザの変更によってうっかりと法律に抵触してしまうことがないよう、個人情報に依存しない次世代のターゲティング手法を作り出していく必要があります。一方で、実際に世界規模で利用されるこのような製品は、2019年9月時点でいまだに存在しません。
by TheDigitalArtist
Chromeがユーザーに対してCookieのブロックを行うことを懸念するパブリッシャーもいますが、Googleの出した調査結果や公開したブログは、GoogleがAppleに追従せず、引き続きサードパーティーCookieを使っていく意向であることを示しています。ただし、Googleは法遵守やデータ保護について保守的なアプローチを続けており、出版社に不利な機能を今後の変更で追加していく可能性も考えられるとのこと。パブリッシャーの1人は「私たちはGoogleのなすがままなので、発表があるまでは、推測するしかありません」と語っています。
・関連記事
「Don’t be Evil」から「Do the Right Thing」へ、Googleの新しい行動規範が公開されたことが判明 - GIGAZINE
「転職のためにFacebookの広告を使ってRedditのCEOを狙い撃ちした」という告白 - GIGAZINE
GoogleのGDPRへの対応遅れで広告主&広告代理店に混乱が発生 - GIGAZINE
ポップアップ広告の開発者が謝罪を表明、気になる開発経緯や理由とは? - GIGAZINE
「若者にターゲットを絞った求人広告を表示している」としてFacebookを活用した求人広告を問題視する見方が広がる - GIGAZINE
「Googleが収集した個人情報で検索結果をゆがめている」問題について大手検索エンジンDuckDuckGoのCEOが強く批判 - GIGAZINE
・関連コンテンツ