メモ

ターゲティング広告をやめることでウェブサイト側の収益がアップする可能性がある


インターネットユーザーの行動を追跡し、その個人情報をもとに広告を表示する行動ターゲティング広告は高い効果があるとしてデジタル広告の主流となっています。しかし、ターゲティング広告をやめて昔ながらの「コンテンツに関連した広告を表示する」というアプローチが取られたところ、前年比76%増という高い収益増加がみられた例が報告されました。

New data shows publisher revenue impact of cutting 3rd party trackers
https://brave.com/npo/

Dutch national broadcaster saw ad revenue rise when it stopped tracking users. It's meant to work like that, right? • The Register
https://www.theregister.com/2020/07/03/stop_tracking_increase_revenue_effectiveness/

インターネットユーザーの行動履歴をもとに興味・関心を推測し、ターゲットを絞って広告表示を行うターゲティング広告は、非常に効果が高いことで知られています。一方でターゲティング広告はユーザーの個人情報を収集することからプライバシーの観点で問題が指摘されています

近年はターゲティング広告を行うためのユーザー追跡に対する反感が大きくなっており、Appleは「Intelligent Tracking Prevention」(ITP)という反トラッキング機能を年々強化させてきました。

Appleの反トラッキング機能が広告の世界を揺さぶっている - GIGAZINE


また、大手新聞社のニューヨーク・タイムズも、ターゲティング広告のためにサードパーティー製データの利用をやめると発表しています。

ターゲティング広告のためのサードパーティー製データの利用をニューヨーク・タイムズがやめる予定 - GIGAZINE


オランダ公共放送もまた、2020年1月に自社のオンラインビデオサイトにおけるサードパーティー・トラッカーを停止しました。サードパーティー・トラッカーを停止するとウェブサイトの外におけるユーザーの行動が追跡できなくなり、従来のターゲティングが行えなくなります。このため一般的には「ターゲティング広告をやめると収益が下がる」と考えられていますが、オランダ公共放送の場合、収益の増加が確認されたとのこと。

以下がオランダ公共放送の広告収益の増減を表したグラフ。サードパーティー・トラッカーが停止された1月には前年同期よりも収益が61%増加、2月には前年同期で76%増加しています。新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で2月から3月にかけて収益が落ちていますが、それでも前年同期に比べて2月は18%、3月は8%、4月は19%増となっています。


オランダ公共放送はターゲティング広告の代わりに、コンテンツターゲット広告を実施しています。コンテンツターゲット広告は「旅行の記事を読んでいる時には旅行の広告を表示させる」といった昔から行われている「コンテンツに関連する広告を出す」アプローチです。

この調査・分析を行ったStichting Ether Reclame(STER)によると、コンテンツターゲット広告がターゲティング効果より高い収益を生み出した理由はいくつかあるとのこと。まず、パーソナライズされていない広告でもクリック数によって広告がどれだけユーザーにとって魅力的か測定されるため、同様の効果が見込まれること。


また、近年はユーザーが広告トラッカーの存在を気にしており、「サードパーティの追跡を拒否することをへ同意するアプローチ」が支持されたこと、Firefoxの広告ブロック機能は効果が高く広告主のトラッキング能力を制限していることのほか、リアルタイムビッディング(RTB)市場における透明性の欠如が要因として挙げられています。

RTBでは、広告が媒体から直接購入されるのではなく、媒体と広告主の間にアドエージェンシーが入ります。しかし、サプライチェーンには「行先不明のお金」があり、イギリスのマーケティング業界団体ISBAが調査したところ、ブランド側(広告主)が支払った広告費のうちウェブサイト(媒体)に届くのは約半分であることなどが明らかになっています。

デジタル広告のサプライチェーンは「よく言って不透明、悪く言って詐欺」、サイト運営側は約50%しかお金を受け取っていないことが明らかに - GIGAZINE


オランダ公共放送の例は、ターゲティング広告に効果がないというよりは、このようなアドテク産業の「がん」を取り除くことで収益がアップしたと考えられます。プライバシーの懸念が大きくなっている昨今において、この例は昔ながらのコンテンツターゲティング広告に戻るインセンティブを媒体側に示しているといえます。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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