新型コロナウイルス感染リスクの高い高齢者ほど感染対策を行っているのか?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は高齢者や慢性疾患を抱える人で重症化しやすいため、リスクの高い高齢者の感染対策が重要になります。しかし、実際に高齢者ほど感染対策に気をつけているのかが調査されたところ、予想外の事実が明らかになりました。
Elderly people and responses to COVID-19 in 27 Countries
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0235590
COVID-19 safety: Around the world, many of the elderly can’t be bothered | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2020/07/global-survey-shows-the-elderly-arent-protecting-themselves-from-covid-19/
イギリスのエジンバラ大学に在籍する社会学者であるJean-François Daoust氏は、インペリアル・カレッジ・ロンドンとデータ分析会社・YouGovが行った調査データを分析。Daoust氏は世界72カ国の7万2000人を対象としたアンケートのデータを分析し、対象者が公衆衛生の専門家によるアドバイスにどれくらい従っていたか、年齢によってアドバイスに従う程度に変化があるかを調べました。
アンケートの設問には「もし症状が現れたら自己隔離を望みますか」「公衆衛生の専門家や政府に自己隔離をアドバイスされたら従いますか」といったものや、「マスクを着用しますか」「来客を迎えますか」といった具体的な感染対策について尋ねるものが含まれました。
高齢者はCOVID-19が重症化しやすいことがこれまでの調査から判明しており、理想をいえば、高齢になるにつれ危機意識が高まり防衛を行うことが求められます。しかし、 Daoust氏が実際に調査を分析してみたところ、症状が出た時に自己隔離を希望する人は20歳から60歳になるにつれて徐々に増加していきますが、75歳になるとグラフが急激に下降しています。
また「専門家から自己隔離のアドバイスを受けた時には従う」という人は若年層でも多く、60歳までは徐々に数が増加し、その後グラフが横ばいになっています。
そして、マスクの着用など感染予防を目的とする行動を取るかどうかは、年齢によって大きな差がありませんでした。
個々の予防策を見てみると、「マスクを着用する」という予防策を取る人は20代が最も多く、年齢と共にグラフが下降。
一方で「公共交通機関を避ける(右上)」「小規模な集まりを避ける(左下)」「来訪者を避ける(右下)」という3つは年齢が上がると共に従う人が増加していることが示されています。
Daoust氏は80歳以上のデータが少ないことを認めつつも、自己隔離を求められた高齢者が専門家に従う割合が予想よりも少なかったという点を指摘しています。また社会的距離戦略が緩和された際にはマスク着用が重要になるため、高齢者がマスク着用に積極的でないことに懸念を示しており、政府による高齢者に対するアプローチを再検討する必要があると述べています。
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