サイエンス

「ステルス型」と呼ばれるオミクロン株亜型「BA.2」に関する質問に専門家が回答


新型コロナウイルスのオミクロン株からさらに派生した亜型の「BA.2」は、世界各地で患者数が増加し急速に優勢な変異株となりつつあります。「ステルス型」と呼ばれることもある「BA.2」について、免疫学者が解説しました。

What is the new COVID-19 variant BA.2, and will it cause another wave of infections in the US?
https://theconversation.com/what-is-the-new-covid-19-variant-ba-2-and-will-it-cause-another-wave-of-infections-in-the-us-179619

◆オミクロン株の3つの亜型
サウスカロライナ大学の学長付上級研究顧問を務めるPrakash Nagarkatti氏と、同学の免疫学教授であるMitzi Nagarkatti氏によると、新型コロナウイルスのオミクロン株にはこれまで「BA.1」「BA.2」「BA.3」の3つの主要な亜型が見つかっているとのこと。

このうち最も早く見つかったオミクロン株の「BA.1」は、中国の武漢で見つかった新型コロナウイルス野生株からの変異が多いのが特徴で、特に細胞への侵入に使われるスパイクタンパク質には30以上もの変異があります。そして、「BA.2」はさらに「BA.1」にはない8つの変異を持っている一方、「BA.1」にある13の変異が欠損しています。総合的に見ると、「BA.2」は「BA.1」と約30の変異を共有しているため、その遺伝的類似性から新しい変異株ではなくオミクロン株の亜型だと認定されました。

◆「ステルス型」と呼ばれるのはなぜ?
一部の研究者は「BA.2」を「ステルス型」と呼んでいます。これは、デルタ株と区別する上で重要な遺伝的特徴がないため、オミクロン株だと特定するのが難しいからだとのこと。この性質のため、標準的なPCR検査で「BA.2」を検出すること自体は可能ですが、デルタ株なのかオミクロン株なのか判別できない可能性があります。


◆他の変異株より感染力が高く致命的だというのは本当?
Nagarkatti氏らによると、「BA.2」は最初に見つかったオミクロン株の「BA.1」より感染力が強いと考えられているものの、毒性は強くないとのこと。つまり、「BA.2」は「BA.1」より急速に広がる可能性がありますが、人を病気にする可能性は低いかもしれません。

ただし、(PDFファイル)イギリスデンマークで最近報告された研究では、「BA.2」が「BA.1」と同程度の入院リスクをもたらす可能性があることが示されています。

また、「BA.2」はオミクロン株の感染力と抗ワクチン性に加えてデルタ株の重症化率を兼ね備えているとの研究結果も報告されています。

オミクロン株の派生株「BA.2」はデルタ株の重症化率とオミクロン株の感染力&抗ワクチン性を兼ね備えているという研究結果 - GIGAZINE


◆過去にオミクロン株にかかっていた場合は?
これまでの研究により、「BA.1」の感染歴がある人は「BA.2」に対して強固な防御を持つことが示唆されているとのこと。「BA.1」のオミクロン株は世界中で猛威を振るったため、その分多くの人が「BA.2」に対する免疫を持っていると考えられます。これを理由に、「BA.2」が新たな大流行を招く可能性は低いと予測している科学者もいます。

しかし、Nagarkatti氏らは「過去に感染したことにより得られる自然免疫は、初期の変異株の再感染に対しては高い効果を示すものの、オミクロン株に対する効果は弱くなります」と述べて、楽観視はできないとの慎重な姿勢を示しました。

◆ワクチンの効果は?
カタールで100万人以上を対象に実施された予備研究では、ファイザーとモデルナのワクチンの2回接種は、BA.1とBA.2の症候性感染に対して約3カ月間の保護を提供するものの、保護率は4~6カ月に約10%まで低下してしまったとのこと。しかし、3回目を投与する追加接種により、保護率は再び元のレベルまで高まりました。


この知見について、Nagarkatti氏らは「重要なことはワクチン接種により入院や死亡が70%から80%防がれ、さらに追加接種後には90%以上にまで上昇したことです」と述べて、ワクチンによる感染予防効果は比較的早期に低下するものの、重症化や死亡のリスクが大きく軽減される点は依然として重要だと指摘しました。

◆「BA.2」に対してどの程度心配する必要がある?
アメリカ疾病予防管理センターのデータによると、「BA.2」の感染者数は着実に増加しており、3月中旬の時点ではアメリカの感染者の約30%が「BA.2」とのこと。「BA.2」が流行した背景には、感染力の高さ、人々の免疫力の低下、感染症対策の規制緩和といった要因が組み合わさったことがあると考えられます。


「BA.2」の感染拡大に対する今後の見通しについて、Nagarkatti氏らは「再び壊滅的な大流行が発生するかどうかは、どれだけ多くの人がワクチンを接種しているかと、過去に『BA.1』に感染したかにかかっています。特に、ワクチンで免疫を作る方が安全性が高いので、ワクチンの2回接種と追加接種をしっかりと受け、N95マスクの着用や距離を開けるなどの予防策をとっていくのが最善の策となります」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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