SNSで流行している「新型コロナウイルスを予防する食品やサプリ」の多くはデマとの指摘、正しい情報を見抜く方法とは?
新型コロナウイルスをめぐって、SNS上では「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するデマが多数出回っている」ことが問題視されており、無数のボットがデマの拡散に暗躍しているとの指摘も相次いでいます。そこで、イギリスの栄養士で栄養学の学位も取得しているTaibat Ibitoye氏が、SNS上で「COVID-19の予防や治療ができる」とされている食品やサプリのデマについての具体例を示しつつ、正しい情報を取捨選択するための方法をアドバイスしています。
Coronavirus: there are no miracle foods or diets that can prevent or cure COVID-19
https://theconversation.com/coronavirus-there-are-no-miracle-foods-or-diets-that-can-prevent-or-cure-covid-19-136666
Ibitoye氏によると、特定の食品やサプリがCOVID-19に効果を示すという証拠はないにもかかわらず、SNS上ではそうした食品やサプリを宣伝するデマが大量に出回っているとのこと。その例として、Ibitoye氏は以下の5つを挙げています。
◆1:ニンニク
ニンニクに豊富に含まれるアリシン、アリルアルコール、二硫化アリルには抗菌作用があり、サルモネラ菌や黄色ブドウ球菌などといった食中毒の原因菌に対して効果があることが分かっています。
しかし、Ibitoye氏は「ニンニクの抗ウイルス特性を調査する研究は限定的です。ニンニクは健康食品であると考えられていますが、ニンニクでCOVID-19を予防または治療できることを示す証拠はありません」と述べて、抗菌作用があることと新型コロナウイルスに効果があることは別だと指摘しました。
◆2:レモンスライスの入ったぬるま湯
Ibitoye氏によると、Facebookを中心にレモンが新型コロナウイルスの予防に効果を示すという投稿が数多く共有され、流行しているとのこと。
その一例が以下。2020年3月8日に行われたこの投稿では、北京にある軍病院の院長だというChen Horin教授の「レモンスライスを入れたぬるま湯はあなたの命を救います」というメッセージが紹介されています。
しかし、ファクトチェックサイトAltNewsによると、北京のChen Horin教授なる人物は架空の存在だとのこと。
Ibitoye氏も「レモンが病気を治すという科学的証拠はありません。確かに、レモンはビタミンCの優れた供給源として、免疫細胞が適切に機能するのを助けるため、注目に値します。しかし、他の多くのかんきつ系の果物や野菜にもビタミンCは含まれています」と述べています。
◆3:ビタミンC
前述のとおり、ビタミンCが免疫を補助してくれる栄養素なのは事実ですが、人体の免疫機能を支えているのはなにもビタミンCだけではありません。また、ビタミンCがCOVID-19に効果的だとする主張の多くは、「ビタミンCと風邪」に関する研究や実験を論拠としているため、COVID-19にはあてはまらないとのこと。
Ibitoye氏は「風邪とCOVID-19の間には大きな違いがあります。これまでのところ、ビタミンCを補給することでCOVID-19が予防できたり、治癒したりすることを示す強力な証拠は存在しません」と述べています。
◆4:アルカリ性食品
Ibitoye氏によると、SNS上では「レモン・ライム・オレンジ・ウコン茶・アボカドなど、新型コロナウイルスよりもpHが高いアルカリ性食品が効果的」というデマが流れているとのこと。pHは7が中性で、これより低いと酸性、高いとアルカリ性ですが、こうしたデマでは「レモンはpH9.9で弱アルカリ性なのでCOVID-19に効果がある」と主張されています。
しかし、実際のレモンのpHは2でアルカリ性どころか酸性です。また、「酸性の食品は体内で代謝されるとアルカリ性になる」という主張に対してIbitoye氏は、「そもそも、食品が血液や体細胞などのpHレベルに影響を与えることを示す証拠はありません。人体は摂取している食べ物の種類にかかわらず、一定の酸度に保たれています」と述べて否定しました。
◆5:ケトンダイエット
ケトンダイエット(ケトン食)とは、可能な限り炭水化物をとらずエネルギーを脂肪から摂取するという食事法のこと。この食事法により、ガンマデルタT細胞という免疫細胞が体中に広がって、体の代謝が向上するとされています。
ケトンダイエットについては以下の記事を読むとよく分かります。
高脂肪・低炭水化物食の「ケトンダイエット」は1週間以上行うと逆効果であることがマウス研究で示される - GIGAZINE
Ibitoye氏によると、こうした研究はマウスに関するものなので人間での効果は不明とのことです。
◆デマを見抜く方法とは?
こうしたデマは枚挙に暇がない上に、実際に免疫機能を向上させる可能性を示しているものもあるため、判断が難しいケースも多く存在します。そこでIbitoye氏は「一般的に、次のような主張は『フェイク』である可能性が高いといえます」と述べて、以下のとおりデマの特徴を列挙しました。
・COVID-19の予防や治療に効果があることをうたって、特定の食べ物や飲み物、サプリメントなどを推奨するもの
・特に、「クレンジング」「キュア」「トリートメント」「ブースト」「デトックス」「スーパーフード」といった流行語を多用したもの
・上記とは逆に、なんらかの食品グループの制限を推奨するもの
・信頼できる保健機関が発表した情報ではないもの
Ibitoye氏は、「イギリス栄養士会(BDA)は特定の食品やサプリがCOVID-19を予防することはないので、免疫機能をサポートするためには、健康的でバランスのとれた食事を摂ることが大事だとの立場をとっています。私たちが通常の食事から得ている銅、葉酸、鉄、亜鉛、セレン、ビタミンA、B6、B12、C、Dなどを含む栄養素はすべて、正常な免疫機能の維持に関与しています」と述べました。
なお、BDAは例外的に、1日10マイクログラム相当のビタミンDサプリを摂取したり、ビタミンDを豊富に含む食品、例えば魚、卵黄、ビタミンDが添加された朝食用シリアルなどを食べたりして、十分な量のビタミンDを確保するよう助言しています。これは、都市封鎖や外出制限により日光を浴びる機会が減ったため、十分なビタミンDを得られないことが懸念されているからです。
また、COVID-19とビタミンDの関係を示唆する研究結果も複数報告されています。
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